「ただいま」
玄関からの廊下を通りバッグをテーブルの上に置くと習慣化している
紅茶を飲もうと台所に行きお湯を沸かす。
「さーてと、お湯が沸く前に」
コートの中のポケットの中に入っているダイレクトメールや封筒を取り出し
その中身を確認していく。
「テニスコートの会員料の引き落としと、この間買ったショップの案内表
と後はダイレクトメールばっかか・・・うんっ?」
ダイレクトメールの中に混じって一枚だけ茶少し厚みのある封筒が彼女の
視界に入る。
「なんだろう?」
ダイレクトメールの中に混じった一通の茶色い封筒の存在が気になって
手を取ろうとした瞬間
ピーっという音が鳴り響く。
封筒を持ったまま、キッチンに入り沸かしたお湯のコンロを止め
お茶を淹れる準備を始めようとする。
手に持っている封筒の存在が邪魔になりそうな事に気付いたのか
封筒を置きお茶を入れる作業に入ろうとした時に電話のコール音が
室内に鳴り響く。
「携帯じゃない?誰だろう」
携帯を使うようになってから使用することが少なくなった家付きの
電話が鳴ることに焦った瑞希はバタバタと慌てながら電話の元に駆け寄り
受話器を取った。
「もしもし」
『・・・・・・高瀬瑞希さんのご自宅でしょうか?』
「はい、そうですが・・・」
『はじめまして、ワタクシ・・・・・・・』
受話器越しの声を聞いていた瑞希は相手の声がおかしいことに気づく。
(もしかして、声を変えているの?!なんで)
アニメやドラマでしか使われている変声機という名前が一瞬頭の中によぎる
(なんで、変声機を使うような人が私の名前を知っているの・・・私に一体
何の用が)