最後に死んだのは、秋子さんだった。
それで名雪が心を閉ざした。
そして、この終わってしまった世界に、最後の鍵をかけたのは、オレ自身だった。

その行為を思い出すたび、オレは心の奥底が薄ら寒くなるのを感じた。
あゆの中は、ひどく乾いていて、おまけに冷たかった。
人ではなく、ゾンビィと交わっている気がした。

あゆの中で果てた瞬間、オレの視界の中で、天使の首がぽろりと取れた。
そしてオレは、絶対に踏み越えてはならない一線を越えてしまったことを知った。
違う世界に足を踏み入れたことを知った。

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まるで、雪が降っているみたいな気がした。

それは、オレの心象風景であり、原風景だった。
酷く寒々しい場所に、独り立っている。
そして、その向こうに、誰かがいることに、最近のオレは気づきつつある。
「―いえ―――るよ―――」
それは、酷く甘美な声だった。
幼い日々に聞いた、あゆの声だったような気もするし、そうでないような気もする。
ただ、それが日々オレの心の中で成長し、侵蝕していくのは判った。

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オレは暫くあゆの姿を見つめていた。
そして、
「また、来るよ」
そう言って病室を後にする。
何か、あゆが答えてくれた気もしたけれど、多分、空耳だろうと思った。