お〜い、誰かyet11の行方を知らんか? Part3
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 141 名前:3話[sage] 投稿日:2005/11/23(水) 01:48:27 ID:plN1TW2X0 
 「女連中は、あれはあれでたくましいから心配していない」 
  
 「あいつは、まあ前の会社でも修羅場潜ってたみてーだからな。 
 タフだしゴキブリのように死なないだろ」 
  
 「あいつは……まあ、馬鹿だからな。ハードル走に例えれば、 
 ハードル全部薙ぎ倒したり、 
 スタート直後から逆走したり、 
 何故かストライキ起こしたり、 
 周りの走者に喧嘩売って逆にリンチ食らう事くらいしそうな感じがする。 
 とても心配だ」 
  
 「だがな」 
  
 「なんだかんだ言っても、あいつは最後までゴールするだろう。 
 転んでも、逆走しても、リンチされても、自分の足でゴールするだろう」 
  
 「本当に心配なのは、お前だよ」 
  
 「俺にはハードルで転倒しても、自力で立ち上がるお前の姿が想像出来ない」 
  
 「なあ、本当にお前の事が心配だよ。新しいとこでも、やっていけるのか?」 
  
 「久弥?」  142 名前:3話[sage] 投稿日:2005/11/23(水) 01:49:30 ID:plN1TW2X0 
 目が覚めた。 
 嫌な夢だった。 
 せめて寝ている時くらいは、幸せでいさせてほしい。 
  
 時計を見る。午前7時ジャスト。 
 いつもより10分早く起きてしまった。 
 とても中途半端な時間だ。 
 寝るのにも微妙だし、早く会社に行きたいわけじゃない。 
 わざわざ好き好んで、早く行きたいものか。 
  
 7時15分。髪セット完了。 
 会社ではどうせ誰も気にしないと思うが、20後半の大人が寝癖ボサボサで出勤するわけにもいかない。 
 近所の人にでも見られたら、一気に危険人物の烙印を押されてしまう。 
 もうちょっと、独り者の多いアパートに引っ越したかった。 
 僕は孤独主義者なのに。 
  
 7時20分。朝食完了。 
 カロリーメイト、チーズ味を1分で食って朝食終了とする。 
 別に忙しいサラリーマンの真似しているわけじゃない。 
 ただ、面倒臭いから。 
  
 7時25分。朝のいつもの奴が来る。 
 やれやれと座り。対処する。 
  
 僕のせいじゃない。僕のせいじゃない。 
 SNOWの発売遅れたのは僕のせいじゃない。 
 MOON CHILDeの発売がずれ込んでるのは僕のせいじゃない。 
 limit offがなかなか進まないのは僕のせいじゃない。 
 僕は立ち上がれる。僕は立ち上がれる。 
  
 7時35分。出勤。  143 名前:3話[sage] 投稿日:2005/11/23(水) 01:50:36 ID:plN1TW2X0 
 玄関のドアを閉めて、鍵をかけた時に子供を連れた隣の奥さんに声をかけられた。 
 「林さん。おはようございます」 
 「あ、おはようございます」 
 隣の部屋に住む一家は、夫婦と幼稚園児の男の子一人の三人暮らし。 
 端から見てても、とても幸せそうな家族というのが良くわかる。 
 「今からご出勤ですか?」 
 「ええ、まあ。そちらは幼稚園へのおでかけですか」 
 ふと子供の方を見てみる。 
 嫌悪丸出しで見ていた。 
 僕だって嫌いだよ。 
 「ええ、でも、もう6歳ですから来年から小学校ですよ。月日の経つのは早いですね」 
  
 6年。 
 kanonが発売されてから6年。 
 僕、その間、何してた? 
  
 「あ、大丈夫ですか?」 
 「ええ、ちょっと目眩が……薬は朝処方してきたんですがね」 
 僕は顔全体を押さえた。 
 「気をつけて下さいね。今年のインフルエンザはしつこいそうですから」 
 「はい。では、また。」 
  
 「ママ」 
 「な〜に」 
 「いまのおにいちゃん。目がうるうるしてた」 
 「今年の風邪は目にも来るらしいのよ」 
  
  
 久弥直樹。彼は人生の迷子になっていた。 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています