お〜い、誰かyet11の行方を知らんか? Part3
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160 名前:5話[sage] 投稿日:2005/11/26(土) 00:21:37 ID:QwOW7+rv0
ぐつぐつぐつ。
お鍋が煮える。
冬にはお鍋。
みんなで囲み。
みんなでつつく。
何故に吉沢。
何故に二人。
何故にお鍋。
何故に食う。
何故にスナフキン。
本当はスナフキンはハーモニカ。
NOT GUITTER。
スペルがあってるかわからない。
逃げたい。
午前二時踏切で望遠鏡を持って彼女を待っていたい。
ベルトに結んだラジオ、雨は降らないらしい。
彼女がやれらた。
チコタンやられた。
俺ゆるさない。 161 名前:5話[sage] 投稿日:2005/11/26(土) 00:22:29 ID:QwOW7+rv0
「おい」
「って!」
妄想の彼方へ逃げようとしてる僕を、吉沢さんのデコピンが妨げた。
そうだ。僕はアパートでスナフキンと鍋を囲むという、メトロン星人真っ青の危機に直面していたのだった。
「すぐ自分の世界に入るのはシナリオライターの悪い癖だぞ。
食え。せっかくのすき焼きだからな」
これ以上、デコピンを食らうのが嫌なのと、確かに醤油と砂糖に彩られた肉が良い雰囲気を出してきたので、
食べる事にする。
食べ頃の肉を見繕い、溶き卵にサッとつけ、少量のしらたきと一緒に頬張る。
「……おいしい」
「だろ? 肉どころか卵まで奮発したからな」
いや、冗談抜きでおいしい。焼けてる時の色からして、僕が普段食べている肉とは輝きが違ったが、
卵の黄色が肉と絡みつく事によって金色となり、口当たりを絶妙なものへと昇華している。
「あの、吉沢さん。お金は……」
「気にすんな」
黙々と鍋の味付けをしながら、吉沢さんはなんともなしに返した。
「麻枝の豚足鍋よりは旨いだろう」
「あれに負ける物を探す方が難しいですよ」
当時の惨劇を思い出して、二人揃って苦笑する。
“豚足鍋”
あれはMOON.の打ち上げ時に鍋パーティーをする事になったのだが、
その買い出し当番を任された麻枝がスープのベースを豚足にすると言い張った。
あとでわかった事だが、当時豚骨ラーメンに凝っていたのが原因だったらしい。
途中経過を思い出すと気持ち悪くなるので詳しくは言わない。
結果だけ述べておく。
全員次の日休んだ。 162 名前:5話[sage] 投稿日:2005/11/26(土) 00:25:26 ID:QwOW7+rv0
「なあ、元気だったか」
唐突に吉沢さんが聞いてきた。
困った質問だ。
「ええ、まあ」
とお得意の曖昧な返事で返すしかなかった。
「そうか」
僕の問いに満足してないのかしてるのか、吉沢さんは短く頷く。
また肉が食べ頃になってきた。
今度は豆腐と一緒に肉を卵の中を入れ、すするように食べ、ご飯を食べる。
おいしい。ごはんと合わせてもおいしい。
「お前が元気ならいいんだ。なあ、少しわがままさせてもらっていいか」
「え…ええ。お肉奢って貰いましたし」
スナフキンは帽子を取った。
あの頃のYET11がいた。
「ごめんな」 163 名前:5話[sage] 投稿日:2005/11/26(土) 00:26:03 ID:QwOW7+rv0
「お前や麻枝の気持ちわかってやれなくて、ごめんな」
「俺は根性無しだから、スナフキンの格好して鍋でもつつかないと、
ここに来る勇気も、言い出す勇気も出なかったんだ」
「俺はお前らと、すっと仕事がしたかったよ」
初めての謝罪だった。
「そ、そんな! もう7年前の出来事じゃないですか。頭を上げてくださいよ!」
鍋とかスナフキンとか、そんな事が頭から抜けていた。
吉沢さんの近くに駆け寄った。
「俺がもっとしっかりしてれば……」
一瞬の間があった。
「ただ“元気か”という問いに涙を流すほど、お前を追い詰めなかったんだ!!」
頬を触る。
ラインができ、流れは今も続いていたのに気づいた。 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています