お〜い、誰かyet11の行方を知らんか? Part3
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0030名無しさんだよもん2009/05/07(木) 01:18:52ID:shVn5yk70
175 名前:6話[sage] 投稿日:2005/12/01(木) 02:20:08 ID:SB5+o4y40
ひとしきり泣いた。
目が潤む事はあっても、泣いた事などここ数年は記憶になかったが、
子供のように泣きじゃくった。
目から涙が溢れ、口から嗚咽が止まらない。
20後半の男が泣くな、と心の中の残った理性が忠告するが、
それでも止まらない。
鼻水まで出てきた。
汚い。拭かなくては。
ちゃぷ台の上のティッシュで間に合わせよう。
吉沢さんにきったねえ泣き顔見られるのは恥ずかしいが、仕方ない。
ティッシュを何枚か重ねて取った。

ティッシュではなく、ハンカチだった。
ああ、相変わらずセンス悪いハンカチだなあ。
「思いっきり、泣いちまえ」
ああ、ずりいなあ。
また、涙が止まらなくなっちまった。
0031名無しさんだよもん2009/05/07(木) 01:19:13ID:shVn5yk70
176 名前:6話[sage] 投稿日:2005/12/01(木) 02:20:31 ID:SB5+o4y40
「お前が俺の前で泣くのは二回目だな」
ようやく僕が落ち着いたところで、吉沢さんが話しかけてきた。
「……いつでしたっけ」
「おいおい。お前らが俺を置いて退社した日だよ」
その一言で記憶が甦った。
最後のお別れの挨拶をした時だった。
麻枝以外の全員はTactics最終日に吉沢さんに個別に挨拶をしにいったが、
最後に挨拶した僕が感情を爆発させて泣いたのだった。
「あの日さ、俺も夜中泣いたんだぜ」
「え、本当ですか!」
Tactics時代の吉沢さんからは考えられない行為だ。
「お前なあ。スタッフの内、自分以外の6人全員が他社に引き抜かれる上司の身になってみ?
しかも原因は吉沢とか言われてよ。そりゃあ泣きたくもなる」
にこやかに吉沢さんは語る。
昔のこの人だったら本当だろうと冗談だろうと、こんな自分の弱点を曝け出すような話はしなかっただろう。
時間が経った事を感じてしまった。
「もし、当時のお前らが知っていれば、“吉沢が泣いた”なんて気分が良かったんじゃないか?」
「…いえ。女連中が嫌っていたのは闇将軍です。吉沢さんを特別嫌ってたわけじゃなかったですし、
むしろ聞けば罪悪感に悩まされたのでは」
この人は特に仕事上で男女差別をしてはいなかったが、どうも女には好かれる傾向があった。
「ふむ。それは知らなかったな。折戸の野郎はどうだ?」
「折戸さんは……冗談で馬鹿にするかもしれませんが、本心では痛んでいるじゃないでしょうか」
心底以外そうな顔をする吉沢さん。
驚きの余り、ギターを軽く鳴らす。
「アイツが一番喜びそうな気がするけどな……」
「いや、だって、お二人は友達だったじゃないですか」
「友達、か」
初めて聞く、切なくて苦しそうな声に気づき、思わずこっちの方が押し黙ってしまった。
0032名無しさんだよもん2009/05/07(木) 01:19:34ID:shVn5yk70
177 名前:6話[sage] 投稿日:2005/12/01(木) 02:20:53 ID:SB5+o4y40
「ところで、だな」
話は方向転換されてしまった。
僕と麻枝について聞かなかったのは、聞くのが怖かったのか、
僕を気遣っての事なのか。
だぶん後者だと思う。今の吉沢さんの様子からだと、なんとなくそんな気がする。
「最初の質問に戻るぞ。久弥、今つらいか?」
今度は泣きはしなかったが、即答も出来なかった。
「つらかったら、俺んとこくるか? エロゲーどころかオタクとは何の関わりも無い仕事だが、
お前一人くらいなら食わしてやれるぞ」
嬉しかった。
そんな申し出をしてくれる人が自分にいたなんて、それだけで心に染みた。
「まあ、俺はすき焼き雑炊作るから、考えてくれ」
そう言いながら、冷蔵庫で冷やしていたご飯を、鍋の中にぶち込む。

答えを探す。
自分のために、吉沢さんのために。

気づけば僕は、keyをやめた後に起こった、ある出来事を思い出していた。
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