お〜い、誰かyet11の行方を知らんか? Part3
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200 名前:最終話[sage] 投稿日:2005/12/10(土) 02:38:39 ID:IaLxiVH60
「吉沢さん。今日はもう遅いから泊まっていけば……」
食事が終わり、後片付けが終わった後、吉沢さんは急に帰ると言い始めた。
「あ〜こう見えても俺はバイト君達に尊敬される店長さんだ。
明日の朝には何食わぬ顔して戻らなければいけないんでな」
その返答に“もう吉沢さんはYET11では無い”事を感じてしまい、
胸の奥が微かに締め付けられたような気がした。
「機会があったら、また来る。その時は今日のお礼として、フレンチ奢れよ」
「いや〜フレンチは無理ですよ。豚足鍋で我慢して下さい」
「お前、俺を殺す気か!」
二人で声に出して笑った。
「うん、俺の突っ込みを切り返せるなら安心だな。じゃ、またな」
吉沢さんは笑いながら、アパートを出て行った。
その行動が唐突だったので、僕は思わず背中向かって声をかけてしまった。
「吉沢さん! 今日はありがとうございました!」
吉沢さんは振り返らず、手だけを上に揚げて振った。
その手と背中が“気にすんな”と答えていた。
ああ、畜生。
俺はこんなに自分を心配してくれた人を裏切ったんだな。
遠ざかる吉沢さんを、僕はずっと見ていた。 201 名前:最終話[sage] 投稿日:2005/12/10(土) 02:39:37 ID:IaLxiVH60
━━━MOON CHILDeが発売された。
「売り上げはどうなんですか、雨音さん?」
休憩室の同じベンチに座っている雨音さんに、さりげなく話題を振る。
「う〜ん。ボーダーは超えたが、期待値に届くかどうかってとこだねぇ」
言い終えると、飲み終えたファンタの缶をゴミ箱に投げ込んだ。
ゴール。
見事なスリーポイントシュート。
「深夜発売まで決行したTH2や、発売日に売り切れたぱすちゃC++が羨ましいなあ」
悲しげな顔でそんな事言われると、開発の遅れの第一要因だった僕も、
申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまう。
「だがね、ひさやん。収穫はあったよ」
「え、何ですか?」
ビシ!!
得意満々な顔して、雨音さんが僕を指差した。
「え、僕?」
「そう! ひさやん担当部分は好評で“久弥死なず”の印象を与える事は成功したからね」
あ、評判良かったのか。
安心して、胸を撫で下ろす。
「そこで、次回作はひさやんメインで行きたい!!」
「わかりました。任せてください」 202 名前:最終話[sage] 投稿日:2005/12/10(土) 02:40:02 ID:IaLxiVH60
「……へ? そんなあっさり引き受けてくれるの?」
「チャンスですからね。6年間溜め込んだネタを発表する、いい機会です」
あっけに取られる雨音さんを尻目に、僕は手に持っていたコーヒーを一気に飲み干して、
「さあ、プレーンストーミング始めましょう。会議室の申請をしてきます」
「お。おい、ひさやん! 薬か!? それともシャブかシンナーかバイアグラ!? 何があったぁ!!!」
吉沢さん。麻枝。折戸さん。いたる。しのり〜。みきぽん。そして“友達”。
彼らと出会い、素晴らしい時間を共有し、別れてきた。
悲しい事の方が多かった気がする。
相変わらず生活は不安定だし、親兄弟も心配している。
でも、僕はエロゲーが好きなんだ。
もう逃げないって決めたんだ。 203 名前:最終話[sage] 投稿日:2005/12/10(土) 02:41:11 ID:IaLxiVH60
「店長」
「なんでしょう」
「スナフキンの格好して店に出てくるのやめてください」
む。こいつはロックを理解していない。
ロックに全てを開放した結果、俺はスナフキンになっているのであって、
音楽全般に対して全身でリスペクトを表明しているわけだ。
そいつを理解していないとは、こいつのメジャーデビューは遠ざかったと言わざるを得ない。
「つれねえなあ」
しかたない。昨日注文した部品について、確認の電話をとろう。
「私、吉沢と申しますが……」
「……ス」
「いつもお世話になっております。昨日、注文した商品なんですが……」
「……ワイス」
「昨日の夜に発送。明日の午前に着……」
「エ〜デルワイス」
「あ、少々お待ちください」
保留ボタンを押し、俺自慢の高価なギターをガキのように掻き鳴らしながら、
オーストリアの名曲を歌う女性に目を向ける。
「何時まで居るんですか、いたるさん」
「失われたやる気が出るまでです、吉沢さん」
「ほお」
「今回、背中押して上げたのは私」
デコピンした。
最近慣れてきた悲鳴が聞こえた。 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています