「……有島を連れて行くのは無理か」
夕焼け。それもうざいくらいのオレンジ。
そのオレンジが窓から許可も得ないで入り込み、部屋中を勝手に照らしやがる。
オレンジ部屋の中には二人の人間がいた。
俺とあいつ。
「おいおい。有島まで持って行ったら、この会社からシナリオが一人もいなくなっちまう。
死人に鞭打つような真似はできねーよ」
今日のあいつは口調こそ変わらないが、たった一つ違う部分があった。
俺の目を見ない。
喧嘩する時も、笑いあう時も、あいつは必ず話す人の目を見ていたのに。
「有島は麻枝と久弥に憧れて、この会社……いや、この業界に入ったんだぞ。
それを入社半月で“僕たち引き抜かれるんでさようなら”なんて酷すぎる」
返答はすぐに帰ってこなかった。
あいつは相変わらず目を下に向ける。
ただ、顔がさっきより歪んでいるのがわかる。
「……最終面接をしたのはお前だろ。責任持てよ」
「書類審査と一次面接をしたのはお前だ。はっきり言えよ、邪魔だって」
沈黙。沈黙。沈黙。沈黙。
お互い、言いたい事は山ほどあるのに、何も言葉が出なかった。
結局、この後、あいつが退出するまでの間に、お互いにしゃべった言葉は以下の一言だけだった。
「……そんなに麻枝と久弥を利用して成り上がりたいのか」
「……悪いかよ」
その日を境に、友達が一人減った。