お〜い、誰かyet11の行方を知らんか? Part3
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302 名前:8話[sage] 投稿日:2006/05/08(月) 00:39:19 ID:tE9gVjzA0
夜。
準急は停まるが快速は停まらない微妙な駅のロータリーに俺はいた。
きったねえ地図に書かれてあった指定どおりにギター持参で。
「つか、さむっ!」
もう暦の上では完全に春になったと思ったのに、夜になると急激に冷え込みやがった。
やってらんないとばかりに自販機で缶コーヒーを購入する。
うーむ。やっぱり男はポッカコーヒーだ。
この缶のワイルドな男のイラストに頬ずりするだけで、俺の心は安らいでしまう。
「何してんねん」
横から総会帰りのヤクザ……ではなくて下川がいた。
しかも何故かベース持参。
「お前こそ。社長業に疲れて夜逃げか?」
心底疲れたという顔で、下川はポケットからきったねえ地図を出す。
「なんかようわからんけどな。変な姉ちゃんにここに来いと言われたわ」
「……それ貸して貰ってもいいか」
「ほれ」
下川から投げられた地図を受け取ると、破くかの勢いの如く地図を広げる。
ふむ。このお日様に顔を書く手法はあいつしかいない。
「お前、他に何か知らないか?」
首を振る下川。
だぶん、本当に何も知らされてはいないのだろう。
……あいつ、何するつもりだ?
二人して途方にくれ、しょうがないので世間話でも始める。
「……これって昔にゲーセンでバイトして買ったベースか」
「ん。まだ生きとってくれたみたいやな」
「生きてるって言えば、あのゲーセンはまだやってんのか?」
「もう死んだみたいや。当時から主な客層がくたびれたリーマンやったからな」
「へー。高校の時にこれ買ったって事は、だいぶ苦労したでしょうに」 303 名前:8話[sage] 投稿日:2006/05/08(月) 00:40:25 ID:tE9gVjzA0
あまりにも自然だったので、気付くのに時間がかかったが、第三者の声が混じった事に気付いた。
「吉沢さん?」
「あ、お久しぶりです」
「いえ! こちらこそ」
俺より先に標準弁モードに戻った下川が返事をしてしまった。
「え、お前ら知り合い?」
その答えに二人は顔を見合わせて
「ははは」
と言うだけだった。
なんだこいつら……
天を仰いだその時だった。
「お久しぶりでしゅ」
聞いてはいけない声を聞いてしまったような気がする。
これは夢だ。間違いない。そんな事あるわけない。
「お久しぶりでしゅ」
逃げよう。ここでは無いどこかへ。
そうだ。終点近くの温泉へ静養だ。
しかし進まない。何故だ。神は俺に死ねと言っているのか。
そうか。手を握られているから進まないのだ。
「ぐへへへへへへ」
俺。こいつ苦手。 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています