お〜い、誰かyet11の行方を知らんか? Part3
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422 名前:2話[sage] 投稿日:2006/09/10(日) 03:04:39 ID:M5aWuIG70
「あんたは無礼な人やな、吉沢さん。社会人としては失格やで」
「失格結構だ、下川さん。あなたみたいな人間失格に対しては礼儀など必要ない」
いつ頃からこんな空気になったのだろう。
最初はお互いにアメリカンコーヒーを頼んで和やかな雰囲気だったはずなのに。
「あんたが奴使うのは勝手や。そやけどな、あんなチンクシャ使ったところで絶対失敗するで」
「私もあなたもあいつも同じ“音屋”だ。実力を認められないわけないだろうに……」
冷房が寒いのを通りこして、何も感じなくなってきた。
リアル喧嘩をしたくは無いので、なんとか回避しなければならない。
「下川さん。私は何も喧嘩しにきたわけじゃない。ただ、うちの折戸が昔世話になっていた会社の上司に挨拶に来ただけだ。
なのに、何故最初から喧嘩越しに構えるのですか」
「構えてなんかないわ、ボケ。ただ“下”でせこせこやってる雑魚には興味ないだけや」
もう回避は不可能な事を確信した。
「……まあ、好きにやったらええわ。せいぜい“下”であがいとき」
「……ええ。好きにやりますよ。せいぜい“上”で裏切られなさい」
喫茶店の机が揺れた。
そんな時代でした。 423 名前:2話[sage] 投稿日:2006/09/10(日) 03:06:42 ID:M5aWuIG70
全国各地にある居酒屋チェーンの一店舗。
その中のトイレと煙草の自動販売機から一番近い席。
そこで、俺はある人と酒を暴飲していた。
「やりやがった! やりやがった! あの野郎本当に裏切りやがった!!」
「言ったやろ!? 奴はただの糖尿予備軍やって!」
自分の体型を棚に上げて言い放つ下川さん。
酒が入ったせいか、関西弁がいつもより濃くなっている。
だが、いまの俺には心を癒してくれる優しい一言だった。
「今日はありがとうございます、下川さん。なんかどうしようもなくなってしまって……」
「何言うとりますのや。うちらはあの糖尿に裏切られた、いわば穴兄弟ですやん」
品性を疑う下劣なギャグだが、今日ばかりは心地よい。
上手くも不味くも無い、微妙な軟骨な唐揚げを口に運び、ふと天井を仰ぎ見る。
「あーあんな裏切りはひでえよなあ……何がいけなかったのかなあ」
「これから、どうしまんねん? 良かったらうちに来まへんか?」
――これにYESと言っていたら、面白かったんじゃないかなあ。と5年後のYETは振り返る事になる。
「いえ。もう補強の新人取ってしまってまして……熱血だけが取り柄な奴とか、変な曲ばっか作る奴とか……」
「そんなのましでっせ。うちの“貴族”なんか……」
「?」
「今日は飲みまひょ! 上司のつらさをぶつけ合いまひょや!」
その日はただ飲みまくった。
そして、最後の2年間が始まった。 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています