お〜い、誰かyet11の行方を知らんか? Part3
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550 名前:6話[sage] 投稿日:2007/09/17(月) 06:09:22 ID:FX/oVqIZ0
「遠慮しないでね、有島君。“後輩”なんだから、バンバン食べて飲まないとね」
すみません久弥さん。
僕が注文をするたびに財布をテーブルの下に持っていって、
真剣な表情で『あと2000円か……』と残金確認する、あなたの姿を見てしまうと、これ以上頼めません……
きっかけは“件名:先輩になる予定だった久弥(本名は林です)という者です”という一通のメールだった。
「僕とアホ麻枝に憧れて、入社した事を知りました。土壇場で逃げ出す事になってしまった事。
君にTacticsを背負わせてしまった事。これらについて偽善と思われるかも知れませんが、後悔しています。
今から僕達がTacticsに戻るとか、君をKeyに引き抜くといった事は現実問題出来ませんし、
してはならない事ですが、せめて先輩としてあなたの支えにはなってあげたいと……」
まあ、内容についてはこんな物だったと思う。
正直、実際に久弥さんにこうして居酒屋でご馳走になっている今でも、僕は困惑していた。
久弥さんは……まあ良い人なんだと思う。
ただ…なんというか…平謝りの連続で、そこまで謝られても困るくらいの展開が困惑の原因の一つ。 551 名前:6話[sage] 投稿日:2007/09/17(月) 06:10:20 ID:FX/oVqIZ0
もう一つの原因は━━━
「Tacticsの様子はどう? また、社長はマスターアップ間際に啓発セミナーに連れていこうとしてる?」
「は、はい」
「あいつ、目立ちたがり屋だから、恥ずかしい思い沢山したんじゃない?」
「そうですね。ただ、この前座禅で3分で足が痺れて救急車呼ばれて、主催者に逆ギレしていました」
「ははは!」
平謝りモードが終って、僕達は普通の雑談をしていた。
僕の話にも楽しそうに笑ってくれる。吉沢さんとは違ったタイプの先輩なので、新鮮味があったし、
久弥さん自身も会話が上手かったので、楽しかった。
ただ。
「そこで社長が喧嘩している間、吉沢さんの指示で便所の窓から脱走したんですよ。
その時、『セミナーのパンプでは“このセミナーに来た人は何にも負けない勇気を得ます”とぶっこいている。それを検証しよう』
とか言って、本社で生け捕ったゴキブリを数匹解き放ってから逃げて……」
こんな事を話していいのかなと若干不安気味に顔を窺うと、なんと表現したらいいのかわからない顔をしていた。
辛いような。
面白いような。
懐かしいような。 552 名前:6話[sage] 投稿日:2007/09/17(月) 06:11:12 ID:FX/oVqIZ0
「僕はちょっとトイレに行くけど、何でも注文していいからね。遠慮しちゃ駄目だよ」
小声で“銀行あったよな……”と呟きながら、久弥さんはトイレとは反対方向の自動ドアへ向かっていった。
もちろん、こんな状況で頼めるわけもないので、ちびりちびりとモスコミュールを飲み続ける。
憧れの人と会ってはいけない。なんて言ったのは、どこの哲学者だったか。
僕らの共通の業務であるシナリオどころか、エロゲー製作に関しての話題は、今まで何も出てきてはいない。
なんというか、“良い人”というのが印象だった。
だからこそ、僕は久弥さんに幻滅なんてしていないし、会えて良かったとも感じている。
552 名前:6話[sage] 投稿日:2007/09/17(月) 06:11:12 ID:FX/oVqIZ0
「よ」
唐突に思考が断ち切られ、気付けは目の前の席に久弥さんではない男がいた。
「友達、いるか」
顔は美形で、僕や久弥さんが入る業界では中々いない種類の男だ。
「い、います」
「そうか、俺にもいた」
「信頼出来る上司はいるか」
なんなんだ、この変質者は。酒も入っていた事もあり、力ずくで追い出そうかと考える。
「は、はい」
「そうか、俺にもいた」
「仕事は楽しいか」
だけど、僕は受け答えをするしか出来なかった。
「え、ええ」
「そうか、俺は……やっぱいわねえ」
「野球好きか」
そうか、あの人に似ているんだ。
「ま、まあ」
「そうか! 俺も大好きなんだ! 球団どこファンよ、俺は巨人だぜ」
吉沢さんに。
「巨人以外です」
「死ね」 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています