「私には私のマニフェストがある。党のマニフェストと違う部分もあるが、皆さんと共によりよい政策を実現したい」
東京14区で立候補した葉鍵連合の坂上智代(21)の演説は、必ずこのような話が入る。
 坂上陣営が用意した「独自マニフェスト」は三万部。「党のマニフェストを否定するわけではない」ことを条件に、
同時頒布を認められた。公示前に二万世帯に配布し、街頭での反応も悪くないという。

 「私は国籍法改正には反対だ」
 会議場には、にわかに緊張感が走った。
 二〇〇八年十一月。党国会議員協議会での、坂上の発言だった。久寿川ささら(22)らも坂上に賛同した。
結果として衆参共に賛成に回ったが、葉鍵はすんなり賛成と見られていた、事前予想を覆す展開となった。
 坂上は衆院選マニフェスト作成でも、難民申請者の受け入れ緩和や、外国人地方参政権などに反対を表明。
排外主義という坂上への批判も挙がり、協議は紛糾。参政権は明記せず、今後も協議を続けることでまとまった。
坂上のマニフェストは、「よりよりマニフェストへのたたき台」(陣営)という。
 葉鍵は党の成り立ちから、外国人労働者の受け入れや地方参政権などに、好意的な意見が多い。
「ロボットや宇宙人も党員にいるのに、たかが国籍の違いで」というのが大勢の雰囲気だ。
だが、「日本人の生活を立て直すのが先決」というのが坂上の持論だ。

 東京14区は墨田、荒川区と下町の雰囲気を残す地域が多い選挙区。保守地盤でもあったが、都議選では
墨田区は民主現職、荒川区は民主新人がトップ当選しており、ここでも民主に風が吹いている。
 一方で、日雇い労働者の街として知られる山谷地区では、失業した非正規雇用者らが職を求めて集まり、
路上生活者が増えている。仕事をあっせんする「城北・労働福祉センター」によると、08年6月に3983件あった
求職希望などの相談件数は今年の6月は5094件で約3割増えた。しかし、6月の求人件数は1929件で、
昨年6月の半分以下に減った。住所不定のため、選挙権さえ行使できない路上生活者などもいる。

 坂上は記者に力を込めて言った。「まず、みんなをスタートラインに戻さなければ」。
(続く)