「あれ、思ったよりお若いのね!」主婦の竹島雅恵(47)は、埼玉1区から立候補した葉鍵の
森川由綺(29)を見て言った。またか、と選対員は思った。『あのアニメがここまで響くとは…』

 今年1〜3月、森川の私生活も描いた上でアレンジした内容のアニメ『WHITE ALBUM』が放映された。
深夜放送とはいえ、タレント候補としての相乗効果は見込めるはずだった。
 最大の誤算は、ストーリー内容ではなく、アレンジの部分だった。
一九八六年の出来事。アニメの作中では、そうなっている。「本当はもう十年ほど新しい話なんです」(関係者)。
今となっては、話の題材は過去のものだ。スキャンダルや怪文書の類いには、既に出尽くした内容でもある。
だが、「これでは、ロートルのタレント候補にしか見えない」と陣営では頭を抱える。

 タレント候補。それは森川に、常につきまとう称号だった。
 昨年の9月。森川の所属する芸能プロダクションの緒方英二社長(37)は、葉鍵連合幹部と面会して言った。
「由綺と(緒方)理奈(28)を立候補させるなら、比例上位でお願いしたい。」これ以上の小選挙区での活動は、
女優にはそぐわないというのがその理由だった。だが、「特別扱いはできない」とする党側との交渉は決裂。
緒方社長は「選挙には、一切協力しない」と宣言した。
 それでも二人の立候補を認めたのは、来栖川グループへの配慮などがあったといわれている。
立候補期間中は、タレント活動は自粛を余儀なくされる。そのリスクは決して小さくはない。
葉鍵としても、二人のタレントとしての知名度を重視して、重点候補として支援する配慮を見せる。
「特に、葉派には党内にもファンは多いですから」(党関係者)。
 さいたま市南東部を選挙区とする埼玉1区。「埼玉都民」も少なからず存在し、首都県全体への波及効果にも期待が掛かる。

 だが、森川が候補者として政策を訴えても、公開討論会で他党の候補者と議論しても、そこには「所詮タレント候補」
のレッテルがつきまとう。候補者を演じているだけではないか、という批判もある。
記者がそう水を向けると、森川はいつになく語気を強めていった。「私は、政治家としてのタレント(talent)、才能で
評価して欲しいのです」。
(続く)