「ひゃあ、凄いことになったな」と諸角勇(22)はつぶやいた。
東京10区から立候補した4人のうち、男性は葉鍵連合の諸角一人。自民党前職の小池百合子(57)と
民主党新人の江端貴子(49)の新旧「姫刺客対決」。これに共産党の山本敏江(60)が加わる。
前回、新党日本から立候補し敗れた小林興起(65)は、民主党比例に回り江端を支援。幸福実現党から
立候補の予定だった泉聡彦(38)が小池支援に回る。一方、諸角は向坂環委員長(23)を始め、大庭詠美(27)、
前回公認で、参院選への転出が内定している河野貴明(22)などが応援に入る。
女性候補の多い葉鍵では、珍しいシチュエーションだ。さらに自民党は小泉純一郎元首相(67)、
民主党は岡田克也幹事長(56)、菅直人代表代行といった大物が、次々と応援に入る。
「俺が、ここにいていいんだろうか?」場違いという感覚が、いまだに抜けない。
趣味はオンラインゲーム。容姿も学力も運動神経も、ついでに麻雀の腕も「そこそこ」。そんな、
ネットの外では平凡な日々。
「葉鍵連合から、衆院選に出ないか?」その誘いを受けたのは、去年9月。就職活動の途中からだった。
衆院選。リトルバスターズ(暴風野球団)が勢いづいている鍵派とは裏腹に、葉派からの初挑戦組は少ない。
被選挙権のない党員が少なくない事情もある。
まさか、と思った。だが、就職内定した企業からは、意外にもOKが出た。運命の歯車は回り始めていた。
池袋のサンシャイン60通りに面する、通称「乙女ロード」。諸角は立候補が決まってから、三日に一度は辻立ちと
ビラ配りをここで行っている。訴える内容は、児童ポルノ法改正案などの、表現規制反対が中心だ。
だが、反応はいいとは言えない。「間に合ってます」「言うことはありません」という感じで、差しだしたビラを
突き返されることもしばしばだ。諸角はいう。「無理もない、俺も選挙に出るまでは、よく知らないでいたから…」。
葉鍵連合の選挙戦をここまで見てきた。自公と民社国という二大勢力のうねりの中で、どこまで葉鍵が
力を伸ばすことができたのか。
その答えは、まもなく出る。
(敬称略)