「イルファさんイルファさん」
 「はい、どうかなさいましたか?たかあきさん」
 「スケート行こうよ」

10月になっても納まらない暑さにたかあきは辟易していた。
そんなたかあきの唐突な提案によりスケートリンクへと赴いた二人を待ち受けていたのは、
真っ白で広大なリンクではなく、人で埋め尽くされたひんやりしたドームであった!!!!
 「人でいっぱいですね。平日なのでもう少しすいていると思ったのですが…」
 「そうだね。人にあたらないように気をつけないと――はいこれ。スケートシューズ」
 「ありがとうございます」
 「そういやイルファさんってスケートできるの」
 「やり方はわかりますがこの筐体で滑ったことはないので、
たかあきさんにはぜひ手取り足取り、手取り足取り、教えていただきたいと思う次第です」
 「俺もあんまりできないけど、
後ろに転ばないようにだけ気をつけてればあとは気合で何とかなると思うよ」
淡々と準備を終え、リンクへ立つ二人。
 「立ちました」
 「立ったね」
 「はい。立ちました」
 「とりあえず手すりから手を離してみようか」
貴明は日本の足で立っているが、イルファはへっぴり腰で手すりにしがみついていた。
 「たかあきさん」
真面目な顔で見つめるイルファ。
 「べ、別に下心があっていうわけではないのですが手すりを放したらたかあきさんに抱きついても良いでしょうか」
普段の挙動を考えると演技の線が濃厚ではあるが放置するわけにもいかず。
 「わかった。大丈夫だよ。あんまり引っ張られると俺も倒れちゃうけど……」
 「非常時はどうぞ私を抱きしめてクッションにしてください」

――組んず解れつをスケート場で楽しんだ二人。涼しさを求めていたはずであったが帰宅後――
 「あ、あっ、んあっ、たかあきさんっ!もっと、強く抱きしめてくれないとっ転んでしまいますっ」
 「イルファさん!イルファさん」
仲良きことは美しきかな  おしまい。