春希「麻理さん。一人で勝手に話を進めないで俺の話も聞いて下さい!」
麻理「お前の話?どうせ言い訳だし。まあ、後腐れを残さない為に聞いてやるよ」
春希「確かに取材対象としてコンサートでウィーンから帰国した冬馬に会っていました」
麻理「取材対象だって?それだけじゃないだろ」
春希「少し黙って聞いてくれませんか」
麻理「あぁ悪かったな。それでどうしたんだ?」
春希「冬馬の奴、最初のうちは俺に気の無い素振りを見てていましたけど…」
麻理「けど、違っていたと」
春希「そ、そうなんです…。俺の事を片時も忘れられなかった様で…」
麻理「北原。お前、男冥利に尽きるじゃないか」
春希「ま、麻理さん…。からかわないで下さいよ」
麻理「別にからかった訳じゃないが。まあ、話を続けろ」
春希「と、冬馬が俺のマンションの隣部屋に住む羽目に…」
麻理「な、何だとっ!」
春希「お、落ち着いて下さい!彼女の母親に嵌められただけですって」
麻理「彼女の母親って、冬馬曜子の事か」
春希「そうです」
麻理「それにしても本当なのか?お前が彼女を囲うために隣部屋を用意したんじゃないのか」
春希「本当ですって!受け入れたのは取材の為ですから。少しは俺を信用して下さい」
麻理「それにしても娘の為とは言え、彼女にはいつも驚かされるな」
春希「あの人だけは敵にしたくないです…」
麻理「それで半同棲な生活が始まったと」
春希「あの子を受け入れるか、きっちり振ってあげるか、どちらかにしてと言われました」
麻理「随分と虫のいい話だな」
春希「彼女からすれば、それだけ可愛い娘なんでしょうね」
麻理「それでお前は喜んで面倒を見たということか」
春希「喜んでいませんって!あくまで仕事です」
麻理「それで焼け木杭に火が付いたという訳だ」
春希「違います!」
麻理「そうは言っても一回ぐらいは良い雰囲気になったんじゃないのか?」