最古の記憶は。
日付さえおぼろげな、遠い霞のなか。
貴族的な気品を抱く、豪華な私室。
そこには天蓋つきの寝台も欧羅巴製の椅子もあった。
けど床に座るのが一番好きだった。
こんな日は特に。
窓から見える黒の帳は星月夜。
枠に切り取られた散在する瞬きに目を奪われる。
外界と室内を隔てる窓ガラスに、己の姿が映る。
深窓の令嬢―――
洋風のドレスに身を包む、楚々とした少女。
きみはいったい、だれですか?