【WHITE ALBUM2】和泉千晶スレ ネコ2匹目
0001名無しオンライン2012/06/05(火) 02:01:49.17ID:8hPlc8Ss0
和泉 千晶(いずみ ちあき)

峰城大学文学部3年。
誕生日は8月6日

窓際の席どころか、ゼミ室に寝袋を持ち込んで熟睡している、
怠惰、無気力、依存症を絵に描いたような典型的な大学生。
要領がよく甘え上手なため、今までなんとか進級してきたが、
最近はさすがにゼミのレポートが増えてきたため進級が危ぶまれている。
実は興味を持ったことには寝食を忘れ熱中する性格らしいが、
誰もその姿を見たことがないため真偽のほどは定かではない。

千変万化する彼女の魅力について語ろう

中身は彩世ゆうが有力

★前スレ
【WHITE ALBUM2】和泉千晶スレ ねこ一匹目
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0160名無しさんだよもん2013/03/11(月) 22:25:30.42ID:TEnqWxrg0
**********「シアターモーラス」『届かない恋』閉幕後、場外のベンチにて

「…かずささん! …大丈夫ですか? しっかりして下さい!」
「………ううぅ…うう…」
 板倉は困り果てた。閉幕後、板倉が何度呼びかけてもかずさはベンチにうずくまり、立ち上がろうとしない。
 
 そこへ現れたのは千晶だった。
「いやぁ、そんなに泣かれるほど感動されると役者冥利に尽きるねぇ…」
「…っ!」
 かずさが顔を上げ、涙も拭かず、憤怒の視線を千晶に向ける。
 千晶は鋭い睨みにもひるむことなく、手にしたボストンバッグを床に置くと、飄々と芝居じみた語り口を始めた。
 その口調は雪菜のものを模していた。いや、意図的に慇懃無礼な言葉を選んでおり、彼女を知るものなら怒り出すように意図されたバッドコピーだった。
「いやいや…『本日は脚本、私、瀬ノ内晶。本名、和泉千晶の劇『届かない恋』ご覧いただき誠にありがとうございました。
 甚く嘆称いただけ何よりです。この度はご感想を頂戴したく参りました』」
 それが、かずさの逆鱗に触れた。

 …わたしの前でその女のマネをするな…
 ゆらりとかずさが立ち上がった。そして、

 バシンッ! …どさっ

 平手打ち一閃。千晶は豆が弾かれたように床に吹き飛んだ。
「かずささん! やめてください! 手を出すなんて!」
 板倉が止めに入る。

 が、その背後で背筋が凍るような冷たい声がした。
「これか…これが足りなかった…」
「!?」
 驚く板倉が目を向けると、千晶がすくりと立ち上がった。
0161名無しさんだよもん2013/03/11(月) 22:27:07.36ID:TEnqWxrg0
「ピアニストだから本能的に手をかばう、なんて都市伝説だね。フルパワーじゃん。
 それに、昨日も触って思ったけど鍛えられた硬い手指。鉤爪みたいだね。弱々しい音ばかりの平手打ちとは月とスッポンだ」
「まさか…あなた…」
 板倉は悟った。さっきの吹き飛び方はいくらなんでもおかしかった。手も予想していたように素早く顔を完全にガードしていた。それに、吹き飛んだ先には本人が事前に置いた大きなボストンバッグ。
「…わざと、冬馬かずささんを怒らせて…手を出させた?」
「ご名答」
「…なんで?」
「『恋敵に対してするように手を出して下さい』ってお願いしたらちゃんとやってくれた?」
「?? …なんで冬馬さんに…っ!? まさか…」
 板倉は勘付いた。かずさも気づいた。
「そう、演技指導は本人にお願いするのが一番だしね」
 この女、和泉千晶は自分の脚本のために、演技のために、実在の人物を糧とする怪物であることに。

「そうか…そうやって春希たちにも近づいたんだな…なぜだよ…」
 砂でも飲み込んだかのようなかすれた声でかずさは聞いた。
「だって、あたしファンだも〜ん。あなたたちの…そう、付属時代のステージから」
「…っ!」
「あんたたちの三角関係、歌からダダ漏れだったもん。もうはまっちゃってさぁ。
 絶対これは脚本にしてやろうって。で、大学の三年間、二人を調べさせていただきました〜」
 それから千晶は、かずさたちが聞きに入ったのを見計らい、ぺらぺらと何の罪悪感もなく、どうやって3人の関係を調べ上げたか喋り出した。
 『女を感じさせない女性』を装って春希に近づいた事。
 『商学部の長瀬晶子』に化けて雪菜に近づいた事。
 春希からより多くの情報を得るために母との不仲を装い、夜明けまで語りあったことまで…
 かずさは魂を抜かれたように聞き続けた。
0162名無しさんだよもん2013/03/11(月) 22:28:36.05ID:TEnqWxrg0
 全て話し終えた後で、千晶はそれまでのうすら笑いではなく、にこやかな微笑みを浮かべて言った。
「まぁ、でも、ケリついたみたいだね。あんたたちの関係」
「!? っ! 何を!?」
「アンサンブル増刊号、付属CD『White Album』ボーナストラック」
「!?」
「3人の和解の産物。あなたから声掛けないとあり得ないよね。あんな曲売られるの」
「………」
「春希とおめでとう、とだけ言わせてもらうわ。これだけは心から言える。」
「何…を…?」
 
「わたしが2年前最後に2人に合った時も雪菜ちゃんとの仲冷えてたしさ。特級スーパーかずさとして凱旋してきたあなたなら春希くんも鎧袖一触一発撃沈〜。そりゃあ雪菜ちゃんも笑ってあんたに譲るしかないさ」
「………違うんだ…」
 かずさは弱々しい声で訂正しようとするが、千晶は聞こえないふりをして続ける。かずさの口調を真似て。
「トドメに『過去の事は忘れたさ。3人であの日に戻ってみるか。さぁ、わたしのピアノについて…』」
「違うんだってば!」
 いつの間にかかずさの目から滂沱と涙があふれている。千晶は驚きの表情を見せて聞き返した。
「え? 何が?」

「………」
「まさか?」
 千晶が不安げな表情をつくり、かずさを見返す。
「……うぅっ」
 かずさは答えられず。ただ眼から涙を流し続ける。
 その様子を念入りに伺って、千晶は言った。
「あ〜。誰かに話したほうが楽になれるよ? …例え相手が最低のクソ女でも」
0163名無しさんだよもん2013/03/11(月) 22:34:04.62ID:TEnqWxrg0
 かずさは訥訥と語り始めた。
「もう、春希は…」
 ストラスブールでの再会。日本での公演を決めたわけ。日本での再会。イラついて板倉にあたり、春希に助けを求める羽目になったこと。
 母親の悪だくみ、いや、計らいで春希の隣室で過ごした日々。
 しかし…
 コンサートの時に来なかった春希とズタボロの演奏。
 旧冬馬宅まで逃げた自分を追ってきた春希。自分を支えようとする春希。
 だが…

「わたしは………春希を信じることができなかった………自分の親も………」
 そして、知るべきでなかった真実を知ってしまう。母と春希が隠していた、母を蝕んでいた病魔…
 世界を失い、部屋に籠る自分を助けに来たのは…
 
「雪菜…だったんだ…」
 雪菜を拒絶した。
 しかし、かずさを恐れず、春希を失うことも恐れず、自分の持てる力の限りの世界を巻き込んで、ただ自分を救おうとしてくれた雪菜に…
「完敗…だった」
 元より周回遅れだった自分は身を退くしかなかったのだと。
 言い終わったかずさの手足から力が抜け、かずさはその場に崩れ落ちた。

 千晶はその結果に唖然としているかのように口を開けていたが、すぐに涙を流して見せた。
「ごめんなさいっ! そんな事になっていたなんて…知らなかった…全然想像もつかなかった!」
 慌てて駆け寄り、慰めようとかずさの肩を抱く千晶。
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