【WHITE ALBUM2】和泉千晶スレ ネコ2匹目
和泉 千晶(いずみ ちあき)
峰城大学文学部3年。
誕生日は8月6日
窓際の席どころか、ゼミ室に寝袋を持ち込んで熟睡している、
怠惰、無気力、依存症を絵に描いたような典型的な大学生。
要領がよく甘え上手なため、今までなんとか進級してきたが、
最近はさすがにゼミのレポートが増えてきたため進級が危ぶまれている。
実は興味を持ったことには寝食を忘れ熱中する性格らしいが、
誰もその姿を見たことがないため真偽のほどは定かではない。
千変万化する彼女の魅力について語ろう
中身は彩世ゆうが有力
★前スレ
【WHITE ALBUM2】和泉千晶スレ ねこ一匹目
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1325586230/ ミイラ化してもエロい千晶のあそこはちゃんと湿ってそうだ ちょうど巡回してきたら誕生日とか運命だな
千晶おめでとう結婚してくれ ぬな!? なんと千晶の誕生日だったのか
一日遅れだけど千晶おめ! 千昌と誤字ってるのを見て以来、千昌夫が俺の妄想の邪魔をする・・・ なんで雪菜の持ち上げ役になってしまったのか?
お前なら単独特攻しても楽々春希の一番を勝ち取れる人材だろうに・・・
CS版に期待 というかそれ言い出した奴誰だよ・・・
昔から言われてたみたいだが予告ムービーの時点で全然違うだろ 千晶含め三人娘達はもったいないよなあ
雪菜かずさ含めてお互いもっと絡んだかしましい展開を時々妄想するよ
イオタケ相手じゃどうしても辛気臭いパートになっちゃうんだよね 付属で千晶と春希のクラスがもしも一緒だったら…
天才演劇部員だが性格異常者な授業サボり魔を春樹はほっとけなかっただろうから、三人の輪の中に千晶も加わってたかも知れんね 千晶その他ヒロインズの3人の√はもっと広げられる戸思うんだよ
状況から選ばれる既定路線的選択ではなく、主人公が改めて積極的選択を迫られるCodaという決着もいいけど、
CCで雪菜を捨てた上でヒロインズの誰かを選ぶという積極的選択を選んだ主人公が、
どのようにしてかずさとの間に決着をつけるのか、とかさ cs版は12.20発売か
千晶√に社会人編あたりのイチャラブもっと追加してもいいのよ
まあ、でもそういうのはPCの方でFDに期待かな?…きっとFD出るよね? 所帯じみてるというか、あの少し爛れた感じのある意味大学生らしい
半同棲チックな生活の描写がなんか良かった。 ピロートーク案外真面目でギャップが良かったな
演技も無理もしてないとか、救うでも救われるでもない云々とか、将来に関しても案外真面目に語ってたり…勿論エロも重要だが!
ゲーム中との会話の実直さのギャップからして、ピロートークは千晶ENDの2,3年後くらい?みたいに自分は思ってるわ 千晶は何だかんだで春希に1番お似合いのヒロインだと思うわ
凹凸的な感じで 中の人今日のラジオ出てたね
千晶はネタバレが厳しいせいか、あんまりキャラ語りは聞けなかったなあ
発売後にもまた出て欲しいわ 保守
…なんてする必要はないのかもしれないけど。
他キャラのすれも過疎化しているのかな?
メイン二人は別として。 本スレとかずさスレくらいじゃないかな書き込み多いの。次点で雪菜。
たまに麻理さん春希スレ。あとは過疎
一応全部巡回はしてる ようやくかずさ√の精神リハビリが終わって、各ルートやり直しているけど、
春希がリセットするにはこの人しかないかなと。
かずさ以上にわがままでまっすぐで、雪菜以上に腹黒くてでも、優しくて。
春になったらすべて終わるから女の切り札出すあたりの流れをもうちょっと追ってみたいと思います 千晶は今作の裏ヒロイン的な感じがする
作中で確か雪菜も言ってたけど、設定的には主人公のかずさと雪菜からの卒業って意味では一番しっくりくる相手かもね
まあなんにしろ各ルートアフターのファンディスク気長に待ってます 葉ってのは、そういうイチャラブのファンサービスディスクをだすところなの? 出すよ!3Dで出してくれるよ!
ファンディスクは不思議と気合が入ってるよ!
…まぁ、出るかどうかは、PS3版の売れ行きとか商品展開(アニメ化・コミカライズ)の具合によるけれども 今月の壁紙
ttp://minus-k.com/nejitsu/loader/up210136.jpg お、これはいい千晶
FDは単体より追加要素のあるCS版に更に18禁要素追加してPCへ逆移植とか、一番有り得そうだw
仮にFD単体でも、まあ結局は今後の売れ行き次第だろうけど コンシューマ版特に買うつもりなかったけど、公式通販の千晶テレカ見てポチっちゃった 今、PS3版の千晶の一周目だが、絵が出てこない以外は完全にCEROZだろw。
一周目ENDってこうだったのかと思い出した。そのまま終われば事情通のいい娘だったのにねw。
一周目は春希への優しさで去り、二周目は自分の我儘で残ったと理解したわ。だから二周目はあんなに悪女だったんだと。
個人的には雪菜を抜いて2位に浮上しましたw。 意外と忘れてること多いよね
自分もなんか急に気分盛り上がってきてICやり直してみたけど
意外と忘れてたこと多かったらしくて、かなり新鮮な気持ちになったわ >>101
悪女の役を演じきれなかった が正解
春希の為に悪女になりきるつもりが愛しすぎてしまた自分に舞台の上で気づいちゃった
あのセリフは春希に向かって発せられたセリフでもあり
奥底にしまっていた自分自身へのセリフでもある
という妄想で千晶かわいいよ千晶 ttp://www15.wind.ne.jp/~jekyll-and-hyde/121207.jpg
冬コミで同人出るんだね というか、この同人の人、有名よ
杉浦小春のビッチな週末
風岡麻理の制服と有休
和泉千晶の演技する夕暮れ 新規の人にも千晶√好評なようだ
もしかしたら年齢層的に拒否反応出て叩かれるかもとか心配してたけど
CCの中じゃ一番よかったって意見が多いみたいでよかった
ただ、それはあくまで√の評価で
千晶の人気に必ずしも繋がってないようなのがちと残念ではある >>112
PS3の千晶ルートって、エロシーンは全スキップ? 千晶√に限らずエロシーンはNGでしょ
ただ前後のシーンが結構エロいらしいけど まぁ千晶好きは特殊な一面はあると思うよ
スレの数こそ少ないけど中身みれば争いなんてまずないし
千晶好きを煽る他キャラ信者はいても千晶好きにそういう事する奴見たことないし
宗教みたいにかずさや雪菜を信仰するのと違って
どこにでもある恋愛感情みたいな移入の仕方してる人も多そう
という事で
千晶かわいいよ千晶 千晶おめーかわえーずら
今年も一年お前ぇさんに萌えるずらよ 千秋かわいいよ千秋
ってちがうわぼけぇぇぇぇ
千晶かわいいよ千晶 うれしはずかし SS初投下〜♪
Coda 雪菜True End後
千晶登場はちょっとまって下さい。 **********5/10(月)冬馬宅地下練習スタジオにて
フランツ・リスト作曲、詩的で宗教的な調べより第10曲…Cantique d'amour『愛の賛歌』
かずさはそれを奏でたつもりだった。しかし…
奏で終わった途端に押しつぶされそうな罪悪感が彼女を襲った。罪悪感に重みがあったなら彼女の身体
は鍵盤に叩きつけられて二度と起き上がることはなかっただろう。
ぱん、ぱん、ぱん…
練習スタジオ入口から曜子が拍手をしつつ入ってくる。その表情は笑顔に満ちていた。
「素晴らしい出来じゃない、かずさ。こんな演奏、わたしには逆立ちしてもできっこないわよ」
母親の言葉には痛烈な皮肉が混じっていた。
「わかっているよ、母さん。今の演奏は…」
弱々しい娘の口応えを遮るように曜子は追撃を続ける。
「ええ、出来は素晴らしいわよ。賛否両論あるだろうけど、今の演奏は全盛期のわたしでも敵いっこない
。たぶん、ウィーンで値段をつけさせたら倍の値段がつくわよ。フランツ・リスト作曲ザイン・ヴィゲン
シュタイン侯爵夫人に献呈された詩的で宗教的な調べより第10曲…」
「もうやめてくれ。母さん…」
娘の懇願に耳を傾けることなく、母親はとどめの言葉を撃ちこむ。
「『愛の《怨嗟》』ってね」
「っ…!」 やはり、母親には全部見抜かれていた。
「もぉ、すっごいわたし好み。オンナの秘めておきたい部分がもぉ『これでもかっ』ってぐらい伝わってきて、同じオンナ
に生まれてきたこと懺悔したくなるぐらい。フランツに聞かせたら墓から飛び出してきて、あなたの首を絞めにかかる
か、頭を垂れるかのどちらかね。まぁ、カレも身に覚えが二つ三つあるコだから後者の方が若干確率高いかな」
200年前の偉大な先人を元愛人の一人のように看做す発言の方こそ祟られても文句言えないほど不敬極まりな
い。しかし、かずさは罰を受ける罪人のようにうなだれて口をつぐむ。
そう、被告人かずさが全く弁明できないほど、今の演奏はどす黒い感情に満ちていた。
春希を奪った雪菜への嫉妬、自分を捨てて雪菜をとった春希への妄執
そして…春希を振り向かせる事が出来なかった自分への自己嫌悪
「熱心なのは結構だけど、あまり入れ込みすぎるんじゃないわよ」
曜子はそう言って練習スタジオから出て行った。
残されたかずさの口から嘆息とともに男の名が漏れる。
春希ぃ…
5年間付き合ってきた慕情を振り切ろうと決意したのが2ヶ月前。しかし、心身の隅々まで根を張った感情から容易く
免れることなどできるはずもなかった。
冬の終わりにはかずさ、春希、雪菜の3人が心重ねた一瞬があったが、春が来て夏が近づくにつれ、かずさ心の隙
間から抑えきれない感情が滲み出てきた。忘れるためにピアノを弾けば逆に、自分は今まで春希の事ばかり考えてピアノを弾いてきたのだと思い知らされた。かずさのピアノはあたかも鏡のように容赦なく彼女の内面を映し出していた。彼女自身でどうにもならないほどに。
「やっぱり私、母親失格かも」
曜子は、閉じた練習スタジオのドアの向こうでため息交じりにつぶやいた。
「娘がつらい経験を重ねるたびにピアニストとしての艶を増していくのを見て…喜ばずにはいられないなんて」 ちょ、まさか今頃SS投下とかワロタ
この内容ならかずさスレでも良かったんじゃないの **********5/12(水)複合文化施設「Kaikomura」1階レストラン「コクーン」にて
からり、から… からり、から…
コーヒーシュガーが空しい音を立て、黒褐色の液体の中に埋没していく。
その数が5杯目にさしかかったが、同席している誰も彼女―売り出し中の若手女性ピアニスト、冬馬かずさ―の糖分過剰摂取に気付きすらしなかった。
目の前では、彼女のマネージャーがクライアントとの打ち合わせのまとめにかかっている。かずさはそれを他人事のように眺めていた。
同じ建物の3階にあるコンサートホールの下見が済んだ時点でかずさの本日の仕事は終わったようなものであった。
あとのこまごまとした打ち合わせ事項はいつもどおり全てマネージャー任せであり、かずさ本人にはそういった仕事上のすり合わせを行う能力も意思も全くなかった。
そんな事情を察するや、クライアントの男性もマネージャーとの用談に集中した。だから、下見後のフレンチレストランでの会食はかずさにとって、クライアントとマネージャーが話をまとめるまでの時間つぶしにすぎなかった。
マネージャーが「では、そういうことでいいですね。かずささん」と確認を求めた際も、かずさはほとんど内容を理解することなく「うん、いいよ」と、答えた。
かずさが理解していたのは「3階のホールで秋にピアノを弾く」、それだけであった。食事の間かずさが聞いていたのは打ち合わせの内容ではなく、レストランの外の喧噪の声であった。
パリのカフェと同じようにポットで出されたコーヒーを砂糖で流し込み終わるころには外の喧噪も打ち合わせも止み、かずさは本日最後の仕事を実行することにした。
何度も練習させられた、ぎこちない営業スマイルと共に
「では、本日はどうもありがとうございました。これからよろしくお願いします」
これが、かずさの5月12日最後の仕事であった。 「では、かずささん。また明日お願いします」
「ああ・・・。いつもありがとう。美代子さん」
レストランの外でかずさはマネージャーと別れた。マネージャーはこれから冬馬曜子―稀代の世界的ピアニストにしてかずさの母、そして、冬馬曜子オフィス社長―の所に報告に向かうことになっている。
行先は峰城大学病院…公表はされていないが、曜子は白血病を患い定期的に検査入院を繰り返している。娘の売り出しのためには病床を抜け出し駆け回ることを厭わない曜子であったが、今日のような簡単な打ち合わせは報告受けで済ましている。
だから、かずさは今日はひとりで帰ることになっていた。
帰る、か…
かずさの足取りは重たかった。今日は形ばかりの仕事であったが、それでも仕事のあるうちはそれで気を紛らすことができた。母親から押しつけられた忙しいスケジュールも却ってありがたかった。
しかし、仕事が終わってひとりになった時に襲う寂寞感をやり過ごす術までは、まだかずさは見出せてはいなかった。
そうしてふらふらと出口に向かうかずさの横をひとりの女性が通り過ぎた。
ぴく…
かずさは足を止める。
「?…誰だっけ…」
振り返るが、後ろ姿ではわからない。最近会ったような気がしたが、どこで会ったかも思い出せない。
しかし気になる。5年間ウィーンで暮らし5ヶ月前に帰国した彼女がこの国で「知り合い」と感じることのできる人は少ない。同年代くらいの女性だったが…
かずさは追いかけて確かめることにした。たとえ人違いだったとしても気乗りのしない帰宅よりはマシと感じていたからだった。
その女性はエスカレーターで2Fに上がり、「シアターモーラス」スタッフ出入り口の付近で立ち止まった。かずさはもう一度その女性の顔を見て、やっと彼女が誰であったか思い出した。
帰国して間もないころ、ピアニストかずさに「ファッションについて」というインタビューを求めてきた不躾な女性記者…確か板倉とかいう名前だった。
「なぁんだ…」
どちらかと言うとあまり会いたくない人物である。かずさは軽く肩を落とした。すぐ立ち去ろうかとも考えたが… 彼女と会った時の記憶がよみがえる。いろいろと神経質になっていた時期にわけのわからない取材を求められ怒りを覚えたかずさは手にあったバッグを投げつけて逃げ出した。財布や携帯まで全て入ったバッグを…
何も考えず駆け出し、気がつくと迷子になってしまったかずさであったが、春希に助けられ事無きを得た。なお、投げつけたバッグはこの女性記者が律義に冬馬曜子オフィスまで届けてくれていた。
今から思い起こせば赤面ものである。しかも、その後この板倉とかいう女性記者にお礼もお詫びもしていない。当時の自分自身はそれどころではなかったし、今からお礼なりお詫びをするとしても完全に時期を逸しているが…
「『ごめん』、くらい言っておくか」
このまま知らんふりをして帰っても同じくらい気まずい思いが残る。ならば、また少々無遠慮な取材を食らうことになったとしても、謝意を伝えてすっきりした方がいいとかずさは考えた。
「すいません。記者の板倉さん…ですよね」
「え、…ええっ!」
話しかけられた女性記者板倉は驚き、当惑した。なにせ目の前にいるのは冬馬かずさ。数か月前には取りつくしまもなかった人物の方から話しかけられれば面くらうのも当然だった。
かずさはかまわず、たどたどしく謝罪の言葉を口にする。
「この前はごめんなさい。いや、あの時はちょっと気が立ってたっていうか…その…」
板倉記者は困った。相手は今をときめく話題の美人女性ピアニスト。ここは謝罪を受けつつ、うまくすり寄って取材に持ち込めたら僥倖である。しかし今日は別の取材相手の出待ち中で、タイミングが悪かった。
『なんでこんなタイミングでこんなチャンスが…』
しかし、二兎を追う者一兎を得ず。ここは当面の取材を優先すべき。少し待ってと板倉記者が言いかけたその時だった。
「あれ? 冬馬かずささんじゃないですか?」
そう言ってスタッフ出入り口のドアを開けて出てきたのは、板倉記者の本日の取材のターゲット。劇団コーネックス二百三十度の新人女優、瀬ノ内晶、本名和泉千晶であった。 >>136
ワロて頂き何より
かずさスレへの投稿も考えましたが、書き込み多いスレに長文投稿は
まずかろう&雪菜True後ですし
とりあえず、千晶登場まで かずさはやっぱ糖分過剰摂取じゃないとなw
千晶がとういう格好してるのか気になる 「あ、瀬ノ内さん。今日は…」
板倉記者が口を開いたところを、すかさず千晶は自分のセリフを重ねてつぶす。
千晶はいつもこの手でこの小うるさい雑誌記者をはぐらかしていた。舞台の間の取り方を逆用したワザである。
「ああ、冬馬さん。わたし。クラス別だったけど学年同じだったよ。でも覚えてないよね。瀬能千晶っていうんだけど」
突然見知らぬ学友に話しかけられ、今度は冬馬が泡を食う。
「え、ええ?」
かまわず千晶は続ける。
「ひょっとして、今の舞台見ていた? ごめんごめん、全然気付かなかった」
そういう千晶の顔は悪戯を見つけられた少年のものだった。だが、その目はひそかにかずさの反応を注意深く見ている。
「あ、いや、今日は別件で…」
その答えを聞き、千晶は軽い舌うちとともにぼやいた。
「やっぱりか…、ちぇ。春希も雪菜もチケット渡したのに見に来なかったし…」
そのつぶやきは誰にも聞きとれないほど小さかった。しかし、ピアニストであるかずさの耳にははっきりと聞こえた。
「…春希たちの知り合い?」
かずさの声のトーンが微妙に変わったのを千晶は聞き逃さない。
「うん、春希とは何度か寝たよ」
「…っ!」
「わたしはベッドで春希は床で」
「………」
からかわれたことに気付いたかずさは凶悪な目つきで千晶を睨む。しかし千晶は気押されることなく、飄逸な口調をやめない。
「ごめんごめん、ゆるしてちょんまげぇ〜…って」
かずさから、けして許すまじとばかりの怒りのオーラが立ち上る。千晶はその様子をひととおり観察し終わるや、カバンから何かを取り出し、両手を前で組んで言った。
「まぁ、おわびといっちゃあなんだけど…『かずさぁ、明日ヒマ?』」 その言葉に、かずさは不意をうたれる。急になれなれしく名前で呼ばれたことに対してではない。
その口調、しぐさがまるで…かずさの不倶戴天の親友のまさにそれであったから。
「???っ…あ、ああ…」
かずさは思わず肯定の返事を返してしまった。
「『よかったぁ。じゃ、絶対絶対来てよね。…来てくれないとちょっとだけ傷ついちゃうかもなぁ…』」
そう言って、千晶はかずさの手に強引にチケットを2枚握らせる。
その際の演技も完璧に『小木曽雪菜』のそれであった。かずさは混乱のあまり何も反抗できずにチケットを受け取る。
「『じゃあ、見終わったらまたこの場所で会おうね』」
「………、あ、うん…」
かずさは呆気にとられ、こくりとうなずくばかりであった。
その後の事はかずさはよく覚えていない。
たしか、瀬能千晶と名乗るあの新人女優は板倉記者にもチケットを渡して去っていった。
板倉記者からはいろいろと質問されたが、何も答えられなかった。ただ、一緒に翌日の舞台を見に行く約束だけして別れた。
自分と峰城大付の同学年ということだが、もちろん覚えはない。『春希』と『雪菜』を名前で呼ぶあの人物は何者?
ただの大学とかの同窓生? あの時見せた演技は何? ただのモノマネ上手?
いろいろ考えたけど埒があくはずもない。
かずさは考えるのをやめた。明日、あの瀬能千晶という女に直接聞けばわかることだ。
寝床に転がりながら眺めた、シーリングライトに透けるそのチケットには「5/13(木) シアターモーラス 劇団コーネックス二百三十度『届かない恋』」と印刷されていた。 **********5/13(木)「シアターモーラス」『届かない恋』開演前
「明日の講演後このコ連れて来て。そしたら取材でも何でも応じるよ」
瀬之内晶はそう言って板倉記者にチケットを握らせると、あっという間に雑踏へ消え失せてしまった。
あとに残されたかずさと板倉記者だが、かずさのほうは呆気にとられたようすで、板倉記者が何を話しかけても生返事しか返ってこなかった。
仕方なく、明日会う約束だけしてその場は別れた板倉記者だったが、かずさが来るかは半信半疑だった。久しぶりに会った学友?にしては様子がおかしかったが…
翌日の講演開始10分前。待ち合わせは20分前だったから、もう10分の遅刻だ。
「…また騙されたかも?」
シアターモーラスの入口で待ちつつ、そうぼやいた板倉であったが、程なく彼女は現れた。
「…やあ、板倉さん」
「はいはい、かずささんこんにちは〜。今日はお付き合いありがとうございます。いやいや、本日は僭越ながら御同席させていただきますので…」
かずさが現れた嬉しさのあまり、忽ちテンションを上げる板倉であったが、かずさはそんな板倉がまるで視界に入っていないように、
「…行くか…」
と言うと、すたすた劇場に脚を進めた。
訝しげな表情のまま付いていく板倉であったが、彼女の記者のカンは、
『ここは機会を待て、じきに大ネタが来る』
と告げていた。
「これ、どんな劇なの?」
開演を待つかずさにそう問われ、板倉は答えた。
「ええ、一人の男性をめぐる二人の女性の恋と友情の物語ですね。バンドを組んで友情を深めた三人が三角関係に苦しみつつ成長する、という話です…かずささんは演劇はよく御覧になるのですか?」
「…いや……それで、瀬能さんは?」
「瀬之内さんはヒロインの一人、冬木榛名役です。脚本も瀬之内さんが大学時代に所属していた劇団で書いたもので、なんとその時はもう一人のヒロイン、初芝雪音も瀬之内さんが演じました。つまり、一人二役ですね」
「…へぇ…」
自分で聞いておきながら、かずさの目はまだ開かぬ舞台に、正確にはその向こうにいるであろう瀬能千晶という女に釘付けになっていた。
彼女は…何者? 春希たちとの関係は?
この時既に、かずさは千晶という役者の罠に心の奥まで完全に絡めとられていた。 間もなく舞台が始まった。オープニングニングに流れたのは「White Album」。かずさにとっても懐かしい曲だ。
メジャーデビューを夢見る高校生、西村和希が二人のヒロインをバンドに引き込もうとするシーン…前半はラブコメディ色が強い
「俺と合わせられるのはお前しかいない!」
「だから質問に答えろ」
「俺みたいなヘタクソをフォローするには、お前くらいの腕がないと不可能なんだよ!」
開演後、しばらくして…2人目のヒロイン『冬木榛名』登場のあたりから…板倉はかずさの異変に気づいた。
最初はギャグシーンで他の観客と同じようにクスクス笑っていたかずさが、やがてクスリとも笑わなくなったばかりか、だんだんと表情を強ばらせている。
「…あの…かずささん?」
「…まさ…か……っ」
かずさは、気付きつつあった。
この劇は…彼女と春希、そして雪菜の関係をモデルにしている。いや、三人の性格から関係、あの日々までを調べ尽くし、えぐり出している。
なぜ? なぜこんなことまであの女は知っている? どうやって知った? 誰から聞いた?
…そして、なぜ、自分にこの劇を見せようとした?
かずさは舞台の上の『冬木榛名』から、もはや目を逸らすことができなかった。
榛名の演技は、かずさにとってあたかも呪いの鏡であり、かずさは自分の虚像たる榛名に存在を突き崩されつつあった。 舞台はコンテストの直前、控え室での和希と雪音。雪音が和希にキスをねだるシーンだ。
「じゃ、もう一度目をつぶるので考えてみてください。制限時間は30秒!」
「え? え? え?」
「ん〜っ!」
「目をつぶったのはわかったけどさ…その背延びは何?」
「残り20秒〜」
「ゆ、雪音…?」
「残り10秒〜」
「10秒はやっ!?」
「………」
「………」
「残り15秒〜」
「増えてる!?」
「…っ!」
観客がどっと笑ったその時、かずさの口から漏れたのは笑いではなく驚きの絡んだ呻き声であった。
気付いたのは板倉だけであった。彼女がかずさの視線の先を追うと、その先には舞台袖に控える千晶がいた。
千晶はそんなかずさの様子を観察して悦に入っていた。
「いやいや、あの席は特等席だねぇ…」
前列端のその席は舞台を見るための特等席ではなかった。舞台袖に控える役者がその観客を観察するための特等席だったのだ。
「3人の1人しか引っ掛からなかったのは残念だけど…さあ、見せてちょうだい。冬馬かずさの怒り、嫉妬、嘆き、叫び、涙。全部を…」
千晶はそう呟くと『榛名』に戻り、舞台へ踏み出した。 終わってなかったのかよw
気持ちはわかるがあまり一気に投下すると何だから焦らず日を跨いだ方がいいんじゃない?
どうせ過疎ってるんだし
あまりに長文すぎると読むこと自体拒絶したくなるわ
何より連投規制で引っ掛かる可能性が高くなる(まして書き込みの少なくなる深夜) こんばんは
昨日は長文連投失礼。
もうラスト以外できているけど、ペース配分して投稿します。
今日は、『届かない恋』の終幕まで。
ちなみに、雪菜True後の後日談ですので、千晶Trueの『届かない恋』とは内容異なる
(千晶入れ込んでない、雪音に千晶入ってない等)ってことでご了承ください。 「イチャイチャしたりジタバタしたり忙しいな」
「うぇっ!? ふ、冬木?」
ガタンッ!
「えっ!? かずささん!?」
突然立ち上がったかずさに驚いたのは板倉だった。かずさの顔からは血の気が失せていた。
「ごめんな… それから、今日まで本当にありがとう」
「…まだ終わってないだろ。最後の、一番めんどくさい本番が残ってる」
「そうだな…これが最後だ」
「………っ」
「行こうか、冬木。雪音が待ってる」
「………西村」
「ん…?」
『冬木榛名』が『西村和希』に歩みを進める。
「…やめ…ろ…」
かずさには次の『榛名』の行動がわかっていたから、抗議の声を漏らさざるを得なかった。
しかし、かずさの弱々しい声は聞き入れられず、『榛名』は『和希』に唇をよせる。
舞台上のキスにどよめきの声を上げる観客の中で、かずさ一人だけが軋むような声を上げていた。
そして流れる『3人』の「届かない恋」
かずさの心の悲鳴は止まらなかった。 **********幕間
「…かずささん?」
板倉に話しかけられてかずさは我に返った。
『榛名』のキスシーンから第一幕の終わりまで、結局かずさはずっと立ちっぱなしだった。
「…行く…」
そうつぶやいたかずさに板倉は聞き返した。
「?…おトイレですか?」
「あの女のとこだよ!」
「えっ? かずささん?」
板倉を押しのけて出ようとするかずさであったが、座っていたのは端が詰まった席であったため、板倉や他の観客が邪魔になりすぐに出られない。
無理に出ようとしてつんのめったかずさを板倉は止めた。
「かずささん! まだ一幕目が終わっただけで、すぐ次が始まりますよ! まだ瀬之内さんには会えませんってば!」
そう諭されて、我に返り腰を下ろすかずさ。
しかし、体は座しつつもその目は怒りと苛立ちに満ちており、今にも舞台に飛び上がりそうであった。
何で? 何を怒っているの?
板倉は不安を隠せなかった。
やがて、第2幕が始まった。
ここからは物語が大きく現実から逸れ始めた。板倉がかずさの方を見ると、射抜かんばかりの視線で舞台を見ていた。板倉はホッとした。とりあえずは大人しく鑑賞しているようだ…
榛名の想いを知りつつ、和希に猛烈アタックを仕掛ける雪音。やがて、二人は恋人として付き合いを始める。
しかし、新進気鋭のポップス歌手として一人メジャーデビューを果たした雪音は和希とすれ違いの生活を続け、やがて、和希は雪音に隔意と嫉妬を抱き苦しむ。
一方、ピアノより和希のそばにいることを、雪音の身代わりであり続けることを選んだ榛名。しかし、やがて二人は過ちを犯してしまう。
『お前のことなんか別に何とも思っていなかった』榛名の、本当の、そして真摯で深い思いの発露。
そして… 「後悔…するぞ…」
「後悔なんて…し飽きた…」
暗転する舞台
「いつもの約束…守れよ?」
「榛名…」
「雪音には…内緒だぞ」
雪音は、ふたりの逢瀬に気付きつつも、カタチだけの「遠距離恋愛の彼氏と彼女」の関係にすがりつく。
いや、カタチだけの廃墟同然の関係にすがり、崩壊だけ先延ばしにするような日々を送る。
「『もぉ〜、ひどいよねぇ〜。誕生日にまで仕事入れられて〜』」
「『てなわけで、和希くんゴメン! 電話してくれてうれしかったよ! じゃあ…』」
場面が明転し、雪音の自室。電話の切れる音ともに枕に伏し、独り涙をこらえる雪音。
くすんだ色の空虚な部屋から「会えない二人」のハリボテのような関係がにじみ出ていた。
枕元に置かれた写真立ての中にだけ、3人の色褪せない姿がある。
…優しさ故、会えない日々の中で一人待ち続ける雪音
…臆病さ故、和希の想いから逃げ続ける榛名
…立ちどまる和希
かずさは血色を失いつつも舞台を凝視し続ける。板倉が時折小声で心配そうに話しかけたが、全く反応しない。
ピアノを捨てた榛名には、和希が側に残り、捨てなかった雪音には、歌だけが残される。
そうして、第2幕が終わったが、かずさは手足が震えてもはや立ち上がることすら出来きなかった。
ただ、張り付けられたように幕の閉じられた舞台を見つめ続けるのみであった。 そして、最終幕。
そんな嘘に塗り固められた日々に疲れた和希がふと、榛名のピアノを聞きたいと漏らしたところから話は終盤に向かう。
ブランクとスランプに喘ぎ、自暴自棄になって和希まで拒絶して引きこもってしまった榛名。その危機を救う為に現れたのは他でもない、雪音であった。
「…何のために来た…? わたしを罵りに来たのか? それとも…憐れみに来てくれたとでも言うのか?」
雪音を拒絶する榛名。しかし、雪音は引き下がらない。
「どうしてそんなこと…そんなこと、どうして言うの…全部あなたが臆病なのが悪いんじゃない!」
ぱしっ。平手の音が響く。
「勝手な…ことを言うな…あいつの…想いも夢も、尊敬も、焦りも、嫉妬も、彼女の座もずっと独り占めしておいて…今さら被害者ですよってしゃしゃり出てくるなっ」
ぱしんっ。榛名も負けじと返す。
平手打ちとともにお互いの本音をぶつけ合い、いつしか和解する二人。
「おまじないだよ」
別れ際に雪音が榛名に渡したのは、あのコンテストの控え室で和希から受け取り、以来片時も離すことがなかった、和希との絆のギターピックだった。
「おまじないだ」
そして、和希からは、キスを
舞台にあのコンテストの日の「届かない恋」が流れ、榛名はピアノを取り戻す。しかし、それは皮肉にもあの日の3人の思い出と和希と雪音の仲まで取り戻してしまった。 二人の為に身を引く決意を固める榛名。
榛名がピアノを取り戻したことを知った母親からの留学の薦めを承け、誰にも知らせずウィーンへ去ろうとする。
飛行機が起つ直前でその事を知り、空港へと向かう和希と雪音。
雪による遅延で奇跡的に3人は出会うことができた。
再会を誓い、和希と雪音は榛名を見送る。しかし、榛名はもう二人の元に戻らないと心に決めていた。
「あれ?」
「何か…ポケットに…」
「これ…和希のギターピック…」
その意味に愕然として飛行機に向かい榛名の名を叫ぶ雪音。その雪音に寄り添う和希。
二人の姿を照らしていたスポットライトが徐々に絞られ、舞台は暗転し、最終幕は閉じられた。
スポットライトが最後に照らしたのは二人の繋がれた手、それは二人の未来を暗示していた。
拍手に包まれる劇場にかずさの慟哭が響き渡った。 >>142-146
いきなりかずさに馴れ馴れしすぎるような>千晶
千晶演じる雪菜に騙くらかされうなずいてしまうかずさ
バンドを組んで友情を深めた三人が三角関係にってとこでちょっと反応欲しかった気も
かずさの前で榛名を演じニヤニヤする千晶、美味しいぞw あら随分大作
ご苦労さん
でもこのスレ的には雪菜End後より、千晶End後の方が需要があったような… >>150-154
ん〜もう少しかずさの蒼白度(?)が欲しかったかなーと
それこそ顔面蒼白で声も出せないみたいな
て、なぜに張り手合戦!?まさか千晶はその後もずっと観察し続けてたとか?
ピック、たしか雪音は返さなかったんだよな
次はかずさが楽屋へ乗り込んで派手に張り手合戦、と読んだw >>156
>>158
感想サンクスです。
スマホからで恐縮ですが、千晶さんにインタビュー
>>千晶さん。かずささんに馴れ馴れしくないですか?
「あはは。そこは賭けだったなぁ。向こうは今をときめくヒトだし、こちらも時間ない中、最終日前にかずささんの『演技指導』受けたかったしね
…決め手は春希と雪菜の名前出した時の反応かな。『かずさの事も知っている二人の共通の友人』って誤解させて切り込むコトにした」
>>バンド組んで三角関係って、かずささんとってはすごくトラウマですよね。かずささんの反応薄くなかったですか?
「ん〜。確かに。1幕より三角関係露わな2、3幕の方が反応薄かったよねぇ? 事実から離れてるからかな? 閉幕時の声はでかかったけど…何でかなぁ?」
>>どうして張り手合戦?
「あれ? 三角関係の争いで張り手合戦って定番じゃない? いやさ、雪音はともかく榛名ピアニストなのに張り手いいのかわかんないけどさ」
>>雪音ちゃん、ピックを一時手放しちゃうんですね。
「うん。『和希から離れてもピックは返さない雪音』も構想したけども、雪音には愛や友情のために誓いを犠牲にできる強さがあると思った」
「さて、なんか控え室で待っていても来そうにないし。ちょっと行ってきま〜す」
**********「シアターモーラス」『届かない恋』閉幕後、場外のベンチにて
「…かずささん! …大丈夫ですか? しっかりして下さい!」
「………ううぅ…うう…」
板倉は困り果てた。閉幕後、板倉が何度呼びかけてもかずさはベンチにうずくまり、立ち上がろうとしない。
そこへ現れたのは千晶だった。
「いやぁ、そんなに泣かれるほど感動されると役者冥利に尽きるねぇ…」
「…っ!」
かずさが顔を上げ、涙も拭かず、憤怒の視線を千晶に向ける。
千晶は鋭い睨みにもひるむことなく、手にしたボストンバッグを床に置くと、飄々と芝居じみた語り口を始めた。
その口調は雪菜のものを模していた。いや、意図的に慇懃無礼な言葉を選んでおり、彼女を知るものなら怒り出すように意図されたバッドコピーだった。
「いやいや…『本日は脚本、私、瀬ノ内晶。本名、和泉千晶の劇『届かない恋』ご覧いただき誠にありがとうございました。
甚く嘆称いただけ何よりです。この度はご感想を頂戴したく参りました』」
それが、かずさの逆鱗に触れた。
…わたしの前でその女のマネをするな…
ゆらりとかずさが立ち上がった。そして、
バシンッ! …どさっ
平手打ち一閃。千晶は豆が弾かれたように床に吹き飛んだ。
「かずささん! やめてください! 手を出すなんて!」
板倉が止めに入る。
が、その背後で背筋が凍るような冷たい声がした。
「これか…これが足りなかった…」
「!?」
驚く板倉が目を向けると、千晶がすくりと立ち上がった。 「ピアニストだから本能的に手をかばう、なんて都市伝説だね。フルパワーじゃん。
それに、昨日も触って思ったけど鍛えられた硬い手指。鉤爪みたいだね。弱々しい音ばかりの平手打ちとは月とスッポンだ」
「まさか…あなた…」
板倉は悟った。さっきの吹き飛び方はいくらなんでもおかしかった。手も予想していたように素早く顔を完全にガードしていた。それに、吹き飛んだ先には本人が事前に置いた大きなボストンバッグ。
「…わざと、冬馬かずささんを怒らせて…手を出させた?」
「ご名答」
「…なんで?」
「『恋敵に対してするように手を出して下さい』ってお願いしたらちゃんとやってくれた?」
「?? …なんで冬馬さんに…っ!? まさか…」
板倉は勘付いた。かずさも気づいた。
「そう、演技指導は本人にお願いするのが一番だしね」
この女、和泉千晶は自分の脚本のために、演技のために、実在の人物を糧とする怪物であることに。
「そうか…そうやって春希たちにも近づいたんだな…なぜだよ…」
砂でも飲み込んだかのようなかすれた声でかずさは聞いた。
「だって、あたしファンだも〜ん。あなたたちの…そう、付属時代のステージから」
「…っ!」
「あんたたちの三角関係、歌からダダ漏れだったもん。もうはまっちゃってさぁ。
絶対これは脚本にしてやろうって。で、大学の三年間、二人を調べさせていただきました〜」
それから千晶は、かずさたちが聞きに入ったのを見計らい、ぺらぺらと何の罪悪感もなく、どうやって3人の関係を調べ上げたか喋り出した。
『女を感じさせない女性』を装って春希に近づいた事。
『商学部の長瀬晶子』に化けて雪菜に近づいた事。
春希からより多くの情報を得るために母との不仲を装い、夜明けまで語りあったことまで…
かずさは魂を抜かれたように聞き続けた。 全て話し終えた後で、千晶はそれまでのうすら笑いではなく、にこやかな微笑みを浮かべて言った。
「まぁ、でも、ケリついたみたいだね。あんたたちの関係」
「!? っ! 何を!?」
「アンサンブル増刊号、付属CD『White Album』ボーナストラック」
「!?」
「3人の和解の産物。あなたから声掛けないとあり得ないよね。あんな曲売られるの」
「………」
「春希とおめでとう、とだけ言わせてもらうわ。これだけは心から言える。」
「何…を…?」
「わたしが2年前最後に2人に合った時も雪菜ちゃんとの仲冷えてたしさ。特級スーパーかずさとして凱旋してきたあなたなら春希くんも鎧袖一触一発撃沈〜。そりゃあ雪菜ちゃんも笑ってあんたに譲るしかないさ」
「………違うんだ…」
かずさは弱々しい声で訂正しようとするが、千晶は聞こえないふりをして続ける。かずさの口調を真似て。
「トドメに『過去の事は忘れたさ。3人であの日に戻ってみるか。さぁ、わたしのピアノについて…』」
「違うんだってば!」
いつの間にかかずさの目から滂沱と涙があふれている。千晶は驚きの表情を見せて聞き返した。
「え? 何が?」
「………」
「まさか?」
千晶が不安げな表情をつくり、かずさを見返す。
「……うぅっ」
かずさは答えられず。ただ眼から涙を流し続ける。
その様子を念入りに伺って、千晶は言った。
「あ〜。誰かに話したほうが楽になれるよ? …例え相手が最低のクソ女でも」