「耕一さん、今度ちょっと時間を作ってもらえませんか?」
「時間……っていうと」
「その、色々と話したいことがあるんです。明日にでもどうですか? お休みなので、ちょっと二人で」
「……ああ。わかった」
 結局は千鶴さんの方から言われてしまって、もうどこまでも情けない限りだ。
千鶴さんの表情をうかがうと、その顔色は、恥ずかしそうで、でもどこか嬉しそうで、
照れたような温かみしか感じられない。
 微妙に逸らし合いながら互いの視線を絡ませること数十秒。あからさまなほどに意識しあった
沈黙に、良い意味でも悪い意味でも耐えられず俺は口を開いた。
「それにしても千鶴さんからデートの誘いがあるなんてな。二月だというのにもう春が来たか」
「耕一さんったら……まったく、もう」
混ぜ返そうとした俺の台詞に、呆れたように肩をすくめた千鶴さん。
駄目な亭主に、それでも愛想を尽かさない鬼嫁のように千鶴さんは微笑んだ。
「耕一さんのそういう所は、結構嫌いじゃないんですよ」


【前スレ】整頓しようよ……千鶴さん(柏木千鶴スレ38)
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