大胆にも一度は一つの布団に入ってみる二人。
「あったかいなお前」
「ゆ〜いちの方があったかいもン」
とか言っていたが、階段を昇ってくる秋子さんの足音に気が付き慌ててベットから
飛び出す。 秋子さんはそのまま自分の寝室に入ったようだ。

「はぁ〜」と二人同時にため息。

「じゃ、じゃあ明日から彼氏役ちゃんとお願いだよ、祐一」
「ああ、わかったよ、彼女さん」
「そこは、名前呼び捨てじゃないの?」
「それじゃ何も変わらんじゃないか」
「あぁ、ホントだよ〜。 どうしよう?」
「ま、名前呼びのままでいいだろ、自然だし」
「そだね、おやすみだよ」

自分の枕を抱いて祐一の部屋から自分の部屋へ戻る名雪。 結構自分の積極的な
行動、いや積極的すぎる行動に驚いていた。 「やれば出来るモノなのかな?」
なんて思っていたら、「名雪〜」と祐一が扉から顔を出す。

「何?祐一、早速にも既成事実を・・・」と言いかけてみるが
「アホかい、ホレ手伝え」と祐一が被せて言う。
両腕と胸に沢山の目覚まし時計を抱えている。
「わ、そうだった。 明日寝坊しちゃう所だったよ」
「あっても寝坊してるだろ、しっかしよくこんなにカチコチの輪唱の中で寝れるな?」
「これがイイんだよ〜、わっからないかなぁ〜?」
「全く、わからんわ」

祐一は戻って行った・・・名雪は自分のベットで胸の鼓動が早鐘を打って止まらない。
(香里の事をダシにしてしまったのかな? それにしても今日の私って随分と大胆な
事も平気でしちゃってた・・・なんでだろ? お母さんに認識してもらえたから?)
いつもは数秒で寝息を立ててしまうハズの名雪が、なかなか寝付けずにいた。

一方の祐一。 
(正直な所、ドキドキしてしまったな。 従姉妹とはいえ、こんな男女の関係を想起
 させるみたいなのは今まで無かったし、妹みたいな感じだったのが何だかんだで
 ・・・女・・・になっていたなぁ・・・)なんて思ってしまっていた。
まぁ、そこは健康な男子・・・仕方がない所だ。 名雪の心情は汲めていないのに
そのスキンシップ等にやはり鼓動がなる夜になっていた。

明日からは彼氏・彼女・・・二人はそれを心の中で反芻しながら眠りについた。