と思っていたよ」みたいな事を言われたり「懐かしいわねぇ」なんて目を細められる。
祐一はだんだんとコレが「フリ」では済まなくなりつつある・・・と感じていた。
名雪は名雪でそんな祐一の様子を見て、嬉しい様なちょっとズルかったかな・・・みたいな
複雑な思いを抱いている。
祐一はフッと考える・・・(秋子さんが了承している以上、お買い物をしている秋子さんと
商店の女将さんの間で次の様な会話がなされている事にならないだろうか?)と。
「あらあら水瀬さん、あの昔によく来ていた祐一君だったかしら・・・やっぱり名雪ちゃんの
お婿さん候補として呼んだのかしら?」
「いえ、全くそんな事は無いはずだったんですけど、名雪は一途でしたから」
「じゃ、やっぱりそうも同然なんじゃないの〜」
「あ、そうですね。 私も了承しちゃいましたし」
「あ、でもケジメだけはシッカリね、水瀬さんはまだおばあちゃんになっちゃ駄目よ」
「そうですね、了承してしまった時の状況もあった事ですし・・・」
「ま!、どんな状況に遭遇したのかしら、是非ともお聞きしたいわ」
(うわ〜、コレはいかんぞ! あくまでも香里と北川の奴の為にうっている一芝居のハズが
嘘から出た誠になりかねん・・・モチロン名雪の事は嫌いではないし、純粋に可愛らしく
なったなぁ・・・とは思うが事が性急に過ぎてしまっている)
学校についても二人は手を繋いだままだったが、祐一は掌に汗を搔いてしまうくらいに寒さ
や冷たさは感じなくなってしまった。
そして昇降口の下駄箱の所で、思案顔の香里と出会う。
「おはよう名雪、相沢君。 朝からとっても仲良しね、妬けちゃうわ」
「おい、コレは」と祐一が言いかけるが、名雪はそれに被せて会話に入る。
「香里のおかげだよ、そして祐一と私で今度は香里と北川君のキューピッドになるんだよ〜」
こう先手をうって言われてしまっては協力する事になっている手前、真向否定は出来そうもない。
祐一はもう敢えて黙ってしまう事にする・・・何か言えばかえって立場が悪くないそうだ。
香里は香里で「やっぱり相沢君に話しちゃったの?
、北川君への事」と名雪に尋ねている。
「話しちゃうも何も、祐一は自分でとっくに気が付いていたみたいだよ」
「そうなの?相沢君」香里は(そうだとは思ったけど)という顔で訊いてくる。
「まぁなぁ、北川のヤツの傍で様子を毎日見ていたし香里の方も分かりやすかったからな」
「分かりやすい?」 赤くなる顔を背けて隠しつつ香里は問うてくる。
「ああ、俺に香里って呼べっ言ったのも多分、北川に妬いて欲しかったんじゃないのか?」
「な!・・・・・・」
香里は自分では考えもしていなかった祐一の言葉に、二の句が継げなくなってしまう。 そして
普段とは反対に、名雪の後ろに隠れてしまった。
「〜〜〜〜〜んもう」と名雪の背中で顔を隠している・・・つもりらしい。
そこへちょうど北川が登校して来たのだった。