と思ってしまう香里であった。
「この名雪とあの相沢君じゃ、ちょっと劇的な展開は難しそうねぇ・・・もし二人のどちら
かに横恋慕してくる者が現れたらどうなる事やら。 例えば私が相沢君にモーションをかけた
ら名雪はどうするか? 信じられないという顔をしながらも、引き下がってしまいそうだわ」
放課後になって、ちょっと試してみようか?とも思ったが北川の目があるのがそれにブレーキを
かける。 そのはずなのだが、香里にその自覚は無い。 この辺、自分の事となると「コレ」である。
第三者的視点で見れば、香里も祐一と同類なのかも知れない。
それでも、香里は名雪に助言を入れる事にした。
「ねぇ名雪、相沢君は名雪の家に居候しているのよね?」
「うん、そうだよ〜」
「つまりはひとつ屋根の下で同棲しているのよね?」
「香里、違うよぉ」
「え?」
「祐一はど・う・きょ・しているんだよ、同居だよ」
「・・・・・ん、まぁこの際どっちでもいいのよそれは」
「???」
「単刀直入に言うわ、名雪、あなたはその事は口止めされているでしょ?」
「さっき祐一にはそれ言われたんだけど・・・」
名雪はちょっと口ごもる。 どうしたのかしら?と思うほど貯めてから
「実はお昼休みになる前にみんなに話しちゃったんだ」
「何を?」
「祐一が私の家に住んでいる事・・・」
香里は眼をパチクリさせて名雪を見ていたが、名雪の積極性に驚くと共に
嬉しくなってしまった。
「怒んないんの?」
「えぇ?どうしてよ?」
「さっき祐一に言われる前に話しちゃっていたから、その事を祐一に話したら
すっごい呆れられてその後、怒られたんだよぅ」
「そりゃねぇ」
「どぉ〜してぇ、だってホントの事なのにぃ」
この子、本気で分かってなかったんだ。 一度は皆に来たばかりの男と親し気
にしている対応に色めき立ったクラスだったのを、担任が「いとこだ」と説明
した事により落ち着いた所だった。
外堀を埋める一環として、クラスメートに状況を知らしめる・・・それを名雪が
積極性の賜物としての行動だと思ったのに、名雪は純粋に嬉しかった事実を
「🎵あんな〜事〜こんな〜事、あ〜ったでしょ〜」バリに伝えていただけだったのだ。
香里は前途多難さに、ちょっと頭を抱えてしまっていた。