俺はこのゲームで誰が好きかと聞かれれば迷いなくかずさと答えるが、
このゲームで誰が一番重要かと聞かれれば迷いなく雪菜と答える。
はっきり言ってしまうが、かずさは凡庸なヒロインで、雪菜は非凡なヒロインだ。
雪菜は普通で、地味で、精神的に強くて、自分の欲求に忠実な、とてもリアルな女の子だから。
そんなリアルな女の子がエロゲーに殴り込みをかけてきたわけで、
そんなことは前代未聞だと思うのだ。

残念だったのは雪菜TRUEルートで、
雪菜の最大幸福を追求してやった結果、
代償なくかずさに一生の拷問を強いたこと。
この無自覚さが雪菜とは言えるが、
個人的には無自覚な残酷さが物語上の重要なファクターだったを思うし、
かずさEDでの痛みに対する現実側の回答がこれかよ、
ぬるま湯すぎるだろうという感じがしてしまうのだ。

俺はどうしても、雪菜EDにはそういう意味での逃避を感じてしまう…。

劇中でも何回も言及されるが、雪菜は全てわかってやっている。
基本的に頭の回転が速いし、勘も良いのだ。
かずさが本当はどんな気持ちかずっと気付いてるし、
自分が衝動的な行動を起こしたとき、春希がどう動くかもわかってる。
だから雪菜EDではかずさに拷問を強いながら、
本当に幸せそうにしているのだ。

確かにそれを春希が受け入れることはできないと思う。
だから雪菜EDでは春希は雪菜を「本当の気持ちなんかわからない」、
ブラックボックスの女の子として捉えてしまっている。
誰よりも雪菜を理解していたあの春希が…。

確かに馬鹿のふりをして楽しく生きることは必要かもしれない。
諦めや妥協は実生活には重要だと思う。
でも、それを推奨するのか?
3人のうち、雪菜だけが諦めず、
残りの2人だけが諦めてしまった、そんなふうに見えてしまう。