まず、ここには「名前への強迫的な執着」と「イメージの固定化」が見られます。
彼にとって「博美」と「ひろ美」は、それぞれ異なる対象でありながら、ひとつのイメージ空間のなかで交錯し、境界が溶解しているのです。
この交錯は、対象関係の混乱や自己と他者の区別の曖昧さを物語ります。
つまり、長井は架空の「妻(博美)」という実在しない理想的な対象と、「ひろ美ちゃん」という妄想上の被害者像を、内的に重ね合わせることで、自らの自己肯定や自己正当化を試みている。
また、「ひろ美ちゃん」に対して性的被害者としての属性を与えつつ、同時に「味方」や「守護者」という役割を演じている点は、サディスティックな保護願望を示しています。
ここでは性的欲望と支配欲が絡み合い、被害者であるはずの「ひろ美ちゃん」が、長井にとっては「自身の抑圧された欲望や怒りを投影するスクリーン」となっている。
さらに、長井はかつて架空の妻について「永作博美を不細工にした感じ」と発言したことがありましたが、これは、現実と虚構の混淆した自己像の裂け目を示唆し、妻帯者という社会的役割と、妄想や虚言による自己防衛的イメージの間で葛藤していることが推測されます。
まとめると、長井の「博美」と「ひろ美」への言及は、精神分析的には自己の統合の欠如、対象への過剰な依存と投影、そして攻撃的自己防衛メカニズムの複雑な絡まりとして読み解けます。
この心理構造の中で、彼の社会的逸脱行動や妄想的言動の背景が浮かび上がるのです。