★令和の世でも詠美ちゃんさまはフミューだぞ★
「ママの方がパパより漫画が上手だったんだよ」
ふと何年か前に聞いたパパの言葉を思い出した。
「マンガのさいのう? あなたが産まれたときにあげちゃったんじゃない?」
そんな魔法少女みたいな力、近場の進学校に通う普通の女子高生にあるわけないのに。
そりゃ生まれた時から紙とペンとタブレットを握って育ったから多少は上手だろうけど、
パパのようにクラス全員が主題歌を歌えるようなアニメの原作や、
ママのようにとんでもなくキラキラして可愛い絵を描けるわけでもなく、
才能なんてものが万が一あるとしてもその片鱗すら見えたことは無い。
オフィスに籠もりきり満身創痍で帰ってきたりこなかったりするパパや
苦手な家事の合間にイラストの仕事をするママを見ていると、
そこまで命をかけてまで表現したいものが私にはないのだ。
現実的な未来を考えるならば、
二人のマネージメントなり、記念館の学芸員にでもなる方法を学ぶべきなんだろう。
そんな大した主体性もない空色なのか灰色なのかもわからない夢も忘れかけた頃、
ママの友人を名乗るおば……お姉さんがやってきたのだ。
「大きゅうなったなあ! 飴ちゃんどや?」 こみっくパーティー。世界最大の同人誌即売会にしてクリエイターの登竜門にしてかつてパパとママが出会った地でもある。
知識として、おとぎ話としては知っていたが来ることも来たいと思うこともなかった。
こみパの話をするママはどこか遠くを見ているような感じだったし、パパが参加したら目立つだろうし、
何より子どもの教育には良くないだろう。
そんな私がなぜこんな場所に居るかというと……
「あ〜ミキティすまんなぁ、急に売り子なんてさせてもうて」
この方のせいなのだ。あとミキティって誰だ。
「あんアホ久々にシャバの空気吸わせたるわと声かけたらけんもほろろで「美樹ちゃんに頼めば?」やし……来てくれておおきにな」
「私ももう15ですし、母も猪名川さんなら安心だと思ったのでしょう。社会勉強と思っておきます」
新しい服が欲しかったのだ。勉強する時間も惜しいけれどお小遣いだけでは足りなかったのだ。
バイト代も出るらしいし、例の場所は一度くらい見ておくべきだと思ったし、何が欲しいわけでもないが何かは有ると思うのは考えすぎだろうか。
「あぁもうええ子やなあ! 経営学びたいらしいしうちのあほぼんと一緒になって旅館もっとデカくしてくれんか? 最強や!」
……ママはこの人とどう付き合っていたのだろう?