はい、今日はちょっと面白い例を見ていきましょう。
ネットでですね、ある方が「殺虫スプレーを“噴霧されろ!”」って言ってたんですね。
えー、これ聞いて違和感なかった人、危ないですよ(笑)
いいですか?
日本語の命令形って、基本は「自分が行う動作を、相手に強制する形」なんです。たとえば、「書け」「行け」「やれ」、これが命令形ですよね。
一方で「されろ」って、何ですかこれ。
これは受動態の命令形。つまり、「誰かに何かされなさい」ってことなんですけど、これ、実は日本語ではほとんど使いません。
これね、言語学的に言うと母語の構文がそのまま日本語に影響している、いわゆる「構文干渉」ってやつです。
実際、中国語ではこういう受け身+命令形、バンバン使うんです。
・例:「快被消灭吧!」(さっさと駆除されろ!)
・例:「让他被喷药吧!」(薬剤でも噴霧されとけ!)
このように、中国語では「受け身構文(被〜)」と「命令・勧誘(吧)」を同時に用いることがごく自然に行われます。
ただ、これを日本語に直訳すると、「早く駆除されろ」「彼に薬剤をスプレーされさせろ!」のような不自然な文になってしまうわけです。
日本語ネイティブが同じ意味を言いたいとき、どうするか?
・「さっさと駆除されてしまえ」
・「おとなしく薬かけられとけっての」
こういう風に、少し婉曲に、自然な語感で回すんですね。
「されろ」は、日本語としては非常に不自然な命令形。
おそらく、母語が中国語か、中国語的な構文に慣れてる人が日本語に訳すとこうなる。
日本語って、命令する時ほど「語感」と「ニュアンス」が問われるんです。
だからこそ、「されろ」のような言い回しには、母語的なリズムのズレが如実に出てくる。
つまりね、この一言だけで、その人の言語背景って、案外見えてくるものなんですよ。