今週もお願いします。
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「ちはるさん」
「あ、育代さん。なんだか悪いわね。呼び立てるようなことになっちゃって」
「いいのよ。専業主婦は暇なようで忙しいし、忙しいようで暇なのよ」
「どっちなのよ」

私は笑いを含みながら訊いてみた。

「できる専業主婦は時間のマネジメントが上手なの」

やはり軽く笑いを含みながら育代さんは答えた。

「で、どこでご休憩するかはもう決めてあるの?」
「ええ…街中だと万が一で知ってる人に出会うかも知れないから、タクシーでインター近くの大型店に行こうかと…」
「なるほどね。じゃあ、向かいましょうか」
「タクシーを停めないとね」

そうして停めたタクシーを前に、育代さんはやっぱり私の腰に手を回して「エスコート」した。
タクシーに先に乗せられるっていうことは、逃げられないように警戒されたようでちょっと怖くもある。
そしてホテル前に着いた。
やっぱり、言われるままっていうのはまずいかも知れない。
真意を確認しないと。

「ねえ、育代さん?」
「なあに?」
「育代さんは…その…こういうことはよくあるの?」
「まさか! 私だってこんなこと初めてよ」
「じゃあ、なんで今日はこうやって誘ってくれたの?」
「やよいちゃんとうちのみゆきと一緒に、映画に行った日のこと覚えてる?」
「ええ…行ったこと自体は覚えているけど」
「それじゃ、映画のあとお茶をしてたときに私がちょっと言いよどんだことは覚えているかしら?」
「…?」
「専業主婦は少し退屈っていう話題になったときに…」
「ごめんなさい。そこまで詳しくは覚えていないわ」
「仕方ないかも知れないわね。でも、実際のところそうなのよ。刺激が欲しいなって思うことは結構あるの。
 でも、うちの人を裏切りたくないとも思う。だから相手が女性だったらギリギリセーフじゃない?」
「そうなのかな…?まさかその台詞でいろんな女性をホテルに連れ込んでいたりはしないわよね?」
「やめてよ。私だって初めての出来事で今すごくドキドキしてるのよ。ほら」

育代さんは私の手を取って自分の胸に当てた。

「ほら、わかる? こんな風に心臓がバクバクいってるのよ」

あ、育代さんって意外と胸大きい…
いやいやそういうことじゃなくて、確かに脈がずいぶん速くなってるみたい。
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若干短い気もしますが今日はここまでにします。このあと結構長い会話なので。
またよろしくお願いします。