一年ほど前に等身大ドールが海岸に流れ着いているのを拾ってね
綺麗な人形だから、持って帰ったよ
何のための人形かは、それは最初からわかっていたが
人形に衣服を着せて椅子に座らせたら、可愛く思えた
それで、俺はついつい「あや」って名前をつけてしまった。

その翌日に「あや」を置いている部屋から物音が聞こえたりしたのよ
最初はネズミかと思ったけど。
物音だけではなく、女性の忍び笑いのような声も聞こえて来た
近所のおばさんが、窓に若い女の子の姿が見えたけど、彼女がいるのか
って訪ねてきたりしたのよ
もちろん私にはそんなのいない。
そんなのがいれば、人形を家にもって帰ったりしないな

そんな時に何年か前にあった大災害、俺の地元でも多数の人が海に流された災害だが
その追悼式典があったのだが
海に流されて行方不明の女の子と、「あや」の姿がよく似ているのに気づいてね
びっくりしたよ
それで気持ち悪くなって人形を拾った海にもっていって再び流した。
海に流された女の子の魂が、あの人形に入り込んだのかも知れないと思えば、それが一番に思ったのだが
それから毎日のように、あの海岸に足を運んで、自分が捨てた人形を探すようになってしまった。
まったくどうかしているよ。