あの日見た少女の黒ストが忘れられない、目の前で伝線したのがよほど衝撃的だったのだろう。
あの駅に停車するまでは少女に履かれた幸せを実感していたに違いない、初めて履かれた時はさぞかし嬉しかっただろう。
1日少女と共に過ごしてもう少しで帰れるはずだった、家に帰れば洗ってもらい、また別の日に少女に履いて貰えただろう。
あの駅で黒ストの運命は変わった、電車を降りる乗客の荷物が触れてしまうほんの些細な出来事、だが黒ストにとっては致命的だった。
おそらく荷物に触れて黒ストの繊維は少し引っ張られたのだろう、なので糸が切れるだけでは済まず伝線までしてしまった。
俺は捨てられる運命となってしまった黒ストを見て、あれがもうすぐゴミになってしまうと思うと「カワイソウに」と感じた。
少女と出会い、少なくとも1日は少女の脚を包むことができた幸せな黒スト、その幸せが終わってしまう瞬間を俺は見てしまった。