孫武は
「命令が不明確で徹底せざるは、将の罪なり」と言い、
命令を何度も繰り返した後に「左!」と太鼓を打つと、
また宮女たちはどっと笑った。

孫武は
「命令が既に明確なのに実行されないのは、指揮官の罪なり」と言って、隊長の二人を斬首しようとした。

壇上で見ていた闔閭は
驚き「将軍の腕は既によくわかった。余はその二人がいないと飯もうまくないので、斬るのはやめてくれ」と止めようとしたが、

孫武は
「一たび将軍として任命を受けた以上、陣中にあっては君命でも従いかねる事がございます」
と闔閭の寵姫を

二人とも斬ってしまった。

そして新たな隊長を選び号令を行うと、今度は女性部隊は命令どおり進退し、粛然声を出すものもなかった。

孫武は
「兵は既に整いました。降りてきて見ていただきたい。水火の中へもゆくでしょう」と言ったが、

闔閭は
甚だ不興で「将軍はそろそろ帰られるがよろしい、余はそこに行きたくはない」と言った。

孫武は「王は言を好まれても、実践はできないのですね」と答えた。

以後、闔閭は孫武の軍事の才を認めて将軍に任じたのである。