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撮影は怖いほどに順調に進んだ。
さしたるハプニングもなく、いろははクライアントの指示通りに動き、気が付けば終わっていたのだった。
ただただ、ばあちゃるは見惚れるばかりであった。
ごんごんにこんな一面があったとは。清楚の中の清楚というべき立ち姿は、初めて見たかのように彼を惹きつけずにはいられなかった。
だから、彼は残念に思う。
「馬P、約束、覚えてるよね」
「もちろん」
この時、柄にもなくかすれてしまった声のその心情が、
「じゃあ、付き合って」
「!?」
ドキリ、とした彼の純情が、
「映画に」
「……いいっすよ。ちなみに、どんな映画っすか?」

「『シャークネードVSメタルマン 最後の戦いU』」

あっけなく裏切られ、百年の恋すら終わってしまうほどのクソ映画に招かれるなどと、誰が予想できただろうか。

FIN