ばあちゃるカプ妄想総合スレ part12
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0001ほのぼのえっちさん2020/12/12(土) 15:42:56.42ID:an7c3ZpQ0
ここは株式会社アップランドが運営する.LIVEに所属している世界初?! 男性バーチャルYouTuber ばあちゃるのカップリング妄想(白馬組、アイドル部など)に関するスレです
また、ここは未成年閲覧禁止のえっちな隔離スレです
ここでの話題の外部へ持ち出し、本人やそのファンへの迷惑となる行為やDMは自重しましょう
また、他sage・他ディスは厳禁です
スレの性質上、荒れやすいのでage進行です
─────────────────────────────────
・age進行推奨。E-mail欄(メール欄/メ欄)は空白にしましょう。
・次スレは>>970が宣言してから立てること。無理ならば代理人を指名すること。指名なき場合立候補して立てよう
─────────────────────────────────
.LIVE公式
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ばあちゃる公式ツイッター
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※配信の実況は禁止ではありませんが、まったく関係のない実況(レス)は控えましょう

前スレ
ばあちゃるカプ妄想総合スレ part11 [無断転載禁止] [無断転載禁止]©bbspink.com
ttps://mercury.bbspink.com/test/read.cgi/pinkcafe/1594810784/
0009ほのぼのえっちさん2020/12/14(月) 22:11:54.73ID:???0
多分どっちの穴も散々使ったし、よくよく見たらみとみとの太ももに正の字が書いてある奴
0010ほのぼのえっちさん2020/12/15(火) 01:13:00.55ID:2M+qvj4T0
一部改行あり

 ばあちゃる学園生徒会室に、ひとりの少女が居た。
 腰の辺りまで伸びる流麗な銀髪と赤色の瞳を持つ少女だった。眉目秀麗、とでも形容するしかない美少女は、猛然とノートパソコンのキーを細く白い指で叩いている
 静音キーボードを叩く彼女――夜桜たまを見て、同じく生徒会の一員である北上双葉は珍しい、と思った。夜桜たまが此の時間にマジメに仕事をしている、という事態に薄ら寒いものを覚えながら思った。
「……どう思う、あずきちゃん」
 隣で同じように生徒会長を観察する同僚、木曽あずきに双葉が問うと、あずきはこてんと可愛らしく首を傾げる仕草をしてみせて、
「何か、思いつめたような顔してますね」
 顔? と双葉は返しながらたまを見る。確かに、普段の飄々とした雰囲気が無い。其れなりに長い付き合いで、此の顔をしたたまを見たことも幾度かある。以前は確か、何かに悩んでいた覚えがあったが――
「前は、ばあちゃるさんのマスクの中身について考えてたはずですぅ、はあい」
「つまりどうでもいいこと考えてるんだね今も」
 心配して損した、と双葉は溜息を零す。
「えー、でも気になりません?」あずきはまだ此の話題を使うつもりらしい。「ばあちゃるさんの素顔」
「うまぴーのお顔」
「はぁい」
「……いや、其れは気にならないといえば嘘だけど」双葉は慌てふためいて反論する。「でもうまぴーはうまぴーだし」
 どんな顔でもうまぴーだよ、と双葉は言う。
「……つまり、どんな顔でも大好きだと?」
「……あずきちゃん?」
 双葉の声が低くなった瞬間、がたん、と椅子が弾かれたような音がする。見れば、たまが無言で立ち上がっていた。其の表情には少し、暗いものが滲んでいた
 思わず大丈夫か、という旨の言葉をふたりが言いかけると、まるで其れを制するように、たまははぁ、と大きく息を漏らしてから言った。

「――うまぴーにセクハラしたい」

「何言ってるのたまちゃん!?」思わず双葉が絶叫する。「というか、仕事してたんじゃないの?」
「えー、仕事?」
 たまはPCディスプレイに目をやると、両手をひらひらと振って、何故か誇らしげに言う。
「全く以て手に付きません」
 突っ込む気力を失くした双葉が椅子にずるずると崩れる。代わってたまとの対話をあずきが試みる。
「たまさん、何故そんなことを?」
 よくぞ訊いてくれました、とたまは指をぱちんと鳴らした。そして、何も言われていないのに唐突に語り出す。
「いやね、わたしってうまぴーが大好きじゃん」
「そうですね」
 何を当たり前のことを、とあずきは思った。夜桜たまがばあちゃるに恋慕しているのは誰が見てもわかる話である。序でに、自分たちがひとり残らず同じ穴の狢なのも自明であった
 漫画かよ、とあずきは頭を抱えたくなる衝動に駆られるが、今するべきは頭を掻きむしることではなく友人であり仲間である少女の話を聴くことだろう。
「で、うまぴーもわたしのこと大好きじゃんか」
 何言ってるんだ、と言いかけた。
「そうですか?」
「大好きじゃん?」
「好みのタイプ;巨乳」
「大 好 き じ ゃ ん ?」
 凄まじい剣幕だった。頷かない限り無限ループだな、と察したあずきがそうですね、と返す。あずきは余計な面倒は嫌いなタイプであった。
「だけどさー、うまぴーってば大好きで大好きで堪らないわたしに何にもしてくれないんだよね」
「いやしませんよ」其の戯言を地球と月の距離くらい譲歩してそうだとしましょう、とあずきは少し不機嫌そうに例えてから、「だとしてもばあちゃるさん、プロデューサーですから」
「そーだそーだ、うまぴーはプロデューサーだよ。アイドルとして活動してるふたばたちにどうこうするなんてあり得ないし、そもそもうまぴーがそういうコトする姿が想像出来ないなー」
 双葉も援護射撃を加えに掛かる。2対1と不利な状況に立たされたたまはしかし、其の余裕気な表情を崩さないでいた。格好つけるように前髪を手の甲で払いながら言う。
「ふーん。ふたりは"まだ"そんな気持ちになれないんだ?」
「何でなる前提なのさたまちゃん」
0011ほのぼのえっちさん2020/12/15(火) 01:13:45.83ID:2M+qvj4T0
 ジト目を向けられて尚笑顔を崩さないたまは、まるで未熟者を諭すように喋りだす。
「だってうまぴーだよ? あのうまぴーだよ? どうやっても絶対にわたしたちに手を出そうとしないだろううまぴーだよ? 手を出してくれないならこっちから行くしかなくない? ないでしょ? ないよね?」
「何で手を出さされる前提でいたのたまちゃん」
「え、手、出されたくない?」
「手……」
 イエスかノーならイエスだと双葉は思った。あずきも思った。そして両者同時に頭を振った。危うく口車に乗せられてとんでもない発言をしてしまうところだった。煽動者は何故か変わらず誇らしげに笑っている。
「ふふ、今はうまぴーも居ないんだから」沼の底へと引きずり込もうとしているように見えた。「猥談、しよ?」
「しよじゃないですが」
 あずきは毅然と断った。否、少しだけ揺れていた。彼女だってプロデューサーは好きである。だが、其の感情を迷惑をかけるような形で発揮しようとは思えない
 度々奇々怪々な事象を起こして同輩たちを唸らせるあずきだが、彼女はある意味一番、恋愛に対して真っ直ぐ向き合うタイプであった。
 しかし、あずきの退路は味方に絶たれてしまう。即ち――
「……話しするくらいならいいよ」
「双葉さん?」
 ブルータスの裏切りにあずきが思わず振り向いた。緊張からか、双葉は汗をひとしずく額から流していた。だが、其の瞳はふらふら揺れている。「興味あります」と乙女の瞳は堂々告げている。
「さて、賛同者はふたりだけど、どうあずきちゃん?」
「……」
 こうなってしまっては多勢に無勢である。民主主義の徒たるあずきも渋々折れるしかなかった。渋々である。決して、期待していたわけではない。ないはずだ。きっと。恐らく。めいびー。



第一回対うまぴーセクハラ大会



「はい、ジュース。好きなの持っていってね」
「じゃあ双葉りんごね」
「……サイダーで」
 数分後、学園内の自販機から調達してきた缶飲料をふたりはたまから渡された。もう逃げられないな、とあずきはプルタブを開けたスチール缶を見て思う
 やってられないので一口含む。口中で炭酸が弾けて爽やかだ。こんな状況で無ければ素直に爽やかな、心地の良い気分に浸れるのだが、生憎目の前には下ネタモードの生徒会長である。こうなったら満足するまで喋らせておくしかないかとあずきは覚悟を決めた。
「……では、さっさと喋ってください夜桜さあん」
「え、なんか他人行儀?」首を傾げつつも、たまは余りの紅茶を半分ほど嚥下しながら、「じゃ、ふたりにたっぷり、うまぴーに対してするセクハラの魅力を伝授するよ? するね? するわ」
 勝手にしてくれとあずきは炭酸をもうひとくち含みながら思った。隣の双葉は目を輝かせていた。
0012ほのぼのえっちさん2020/12/15(火) 01:14:53.49ID:2M+qvj4T0
「じゃー先ず前提条件なんだけど、わたしはうまぴーとふたりきり、って条件ね」
 各自勝手に自己投影して想像してね、とたまは非常に愛らしい笑みを零しながら言う。
「……じゃ、行くね」少し空けて、「例えば、そうだなあ。……学園の屋上に向かう階段の踊り場に、わたしとうまぴーが居るのよ」
「……呼び出して?」
「まあそうだね」双葉の問いに首肯して、「昼休み、呼び出されたうまぴーは、何時も通りにワープして指定された踊り場にやってくる。わたしを認めると、うまぴーはやっぱり何時もみたいに、わたしに話しかけるわけ
『はいはいはいはい、用ってなんすかたまたまー』……って感じでさ」
 思った以上に寄せた演技をしてみせたたまの不意打ちで双葉が吹き出した。
「まあわたしは抱え込んでる邪な思いは秘めて、相談をするわけ。そうだなー、配信で使ってる衣装について……。ちょっとエッチな方向の相談をするとしておこうかな」
 ムードというかそういう雰囲気にするというかさ、とたまは言う。あずきは不覚にも自身の使う衣装を想起していた。最近サイズが合っていない感じがすることも思い出していた。
「うまぴーは真摯にわたしの疑問とか、一緒に考えてくれる。そうやって雰囲気を作りながら、わたしは少しずつうまぴーに近付いていく。じりじりと、だるまさんがころんだみたいな感覚だね。……そして、肩がぶつかるくらいまで近付いて、其処からが本番」
 本番、と勿体つけられ、双葉は目線で話を急かした。せっかちだなあ、とたまは小さく笑んで、
「そして、手がうまぴーに届く距離で、わたしはそっと、撫ぜるようにうまぴーに触る。はじめは手の甲で、掠るくらいに背中に触れる。勿論、相談は続いているよ」
 肩がくっつくくらいの距離で背に触れるということは、自ずと身体を押し付ける恰好だ。一瞬、其の情景を思い浮かべたあずきの顔が一気に沸騰する。
「はじめはうまぴーは気付かないの。だってうまぴーこういうのにも鈍感だから」口の端を軽く吊り上げて、「だから、少しずつ刺激を増やしていく。掠るように触れていたのを、少しずつ、強さと時間を増やしていくんだ
そうすると、流石のうまぴーも何かおかしい、って気付くんだ。でもうまぴーのそういうのがわかりやすいのは分かる?」
 ふたりが無意識に首肯したのを見てから、たまは満足そうに続ける。
「わかったら、触ってる手を、下にずらしてくの」
「え、其れって……」
「何処だと思う? あずきちゃん」
 あずきは、暫し逡巡してから、細い声で答えた。
「……お尻、です」
「ビンゴ!」ぱちん、と指を鳴らそうとして失敗した。「うまぴーのお尻に、手が届く」
 ごくり、と。誰かが唾を飲み込んだ音がした。既に、ふたりは此の猥談に呑み込まれてしまっていた。
「うまぴーもおかしい、って思うわけ。だって踊り場で、ふたりっきりなのにお尻を触られて……。最初はうまぴーも心のなかで否定するんだ。『たまたまがばあちゃるくんのお尻を触るなんて、何考えてるんすかね』って。……残念ながら現実なんだけども」
 バーチャルでも現実なんだよねー、とたまは口の端から溢れだした涎をハンカチで拭って、
「でも、わたしはセクハラをしたいわけだから、うまぴーの思いなんて気にしない。手のひらで、指を使って……撫でるなんて生ぬるいから揉む。手のひらに締まった肉の感触と、あったかい身体の温度が伝わってくる
抱きついたり撫でられたり、そういうのとはまた違うあったかさ」うまぴーは硬直すると思うよ、とたまは継いで、「だって、うまぴーにとってわたしって、『いいこ』だから。こんな、とんでもないことするなんて、多分想像もしていないよ。……だからこそ、やりたくなるけど」
 やるなよ、って言われるとやりたくなるよね、とたまは好奇心を主張した。
「揉む、って。こんな感じかなあずきちゃん」
「……あずきに振らないでください双葉さん」
「うまぴーは慌ててわたしにやめるように言う。多分手はぶんぶんと宙空で振り回されて、たどたどしく言うんだ。でも、わたしはやめない。寧ろ、指圧するみたいに指に力を入れてみたり、割れ目をなぞってみたり……。まあ、此処は各自の性癖に従えばいいよ」
「……おしり」
「ばあちゃるさん、筋肉質ですからきっと……」
 とうとう壊れ始めたあずきを見て、たまはしてやったり、な表情を浮かべる。
0013ほのぼのえっちさん2020/12/15(火) 01:15:49.81ID:2M+qvj4T0
「多分行き過ぎると、うまぴーも本気で止めようとするんだ。でも、もし妨害しようと手を出して、万が一わたしに触れると怪我するかもしれないから、うまぴーの武器は大声とかになるよね」にやりとたまは笑う
「……だから、わたしは言うんだ。『声を出すと、気付かれちゃいますよ』って」
「……あ、そっか。屋上への踊り場だから、声響くよね」
「どんな硬さなんでしょう? 板のような? 粘土の塊のような? 沈むのか張っているのか……」
「しかも昼休み。誰が通るかわからない。……万が一、此の光景を見られたらどうなるかな、ってうまぴーを脅す。うまぴー、きっとすっごく困った顔をすると思うな
だって、女学生と教師だったら、どっちが悪として扱われるかは決まってるよね。そもそも、わたしはアイドルで、うまぴーはプロデューサーなんだから……」
 三人の脳裏には、マスクの向こう側でどうすればいいか苦悩する冴えない男のビジョンが浮かぶ。そして、同時に思う。イイ、と。何となくそそる。
「撫でる手はお尻に留まらない。あの締まった胸板でも、美味しそうな首筋でも、心地よい硬さの股でも……そう、うまぴーの"うまぴー"でも」
『うまぴー(ばあちゃるさん)の"うまぴー(ばあちゃるさん)"!?』
 馬鹿二人が同時に絶叫した。
「甘い刺激と『バレたら終わる』という背徳感、そして、わたしという自慢じゃないけど結構魅力的な女の子……、さしものうまぴーといえど、耐えられない。うまぴーのうまぴーが、深い眠りから醒めるんだ。うまぴーだって男だから、なってくれないと健康じゃないよね」
 自画自賛を止めるものはいなかった。何故なら、ふたりとも語られる物語に自己投影しているからだ。まあ、客観的に考えても此の三人は結構どころでなく魅力的ではあるのだが。猥談してるけど。
「そそり勃つうまぴーのうまぴーを見て、わたしはうっとり笑いながら言うんだ。『ねえうまぴー、これなあに?』『あ、いや……たまたま、これは――』『おっきくしちゃったんだ? アイドルに? 学校で? こんなに?』」
「……『ふたばの秘密配信、そんなに気持ちよかったの?』『とんでもない変態やろーだね、うまぴー……ばあちゃる?』」
「……『ばあちゃるさんも男なんですね』『……わたしみたいな女に欲情してこんなにするなんて』『大丈夫ですよ。ちょっと調べさせてもらうだけですから――』」
「うまぴーは間違いなく、更に混乱する。だってわたしに手を出せないから。だからわたしは証拠を手にするんだ。こう、カシャ、って」カメラの枠を手で作りながら、
「うまぴーは絶望するよ。だって、自分が欲情した証拠を握られちゃったんだから。でも、同時にうまぴーはこうも思う。『従えば、またこういうことがある』って。気持ちよくなれるってさ」
「きもちよくなろ……?」
「ふふ、ふふふふふ……」
「だから、わたしはこう持ちかける。『ねえうまぴー。此れ、みんなで共有したいんだけど』『え、だ、だめっすよたまたま……!?』『なんで? うまぴーの新しい事実を発見したんだよ?』
『やめてください、何でもしますから!』『……何でも?』『……はい』脅迫されているうまぴーだけど、恐怖と苦悩の中に隠しきれない、期待感があるんだ。だって気持ちいいんだもの。即物的な感情って強いでしょ。だからね、こう"お願い"するんだ」
 言って、たまは決め顔で締めくくった。
「『またふたりで、"相談"しよう』って、ね?」
0014ほのぼのえっちさん2020/12/15(火) 01:16:22.61ID:2M+qvj4T0
「……とまあこんな具合かな」
 にこにこと。自身の妄想を語ったたまはサムズアップしながらお話しの終わりを告げた。生徒会室に詰まった息を一斉に吐き出す音が響く。
「……凄いねたまちゃん、熱演だった」双葉は頬を紅潮させながら、「双葉も『特別配信』でうまぴーと仲良くなってみたいな」
「ああ、耳!」たまは得心したように手を打つ。「音責めは気が付かなかったな。最後の言葉責め、耳元でやると効果アップするかもね。ふーさんやるじゃーん」
 いえーい、とふたりはハイタッチした。
「……たまさんは、脅迫すると言っていましたが、ばあちゃるさんのそういう……怖がってる顔が見たいのですか?」
「いや違うよ」たまは手を振って、「でも、いろんな顔を知りたいのはホントだし、うまぴーを独り占め出来るなら……そうしたいな、って気持ちはあるかも」
「そうですか」
 あずきは流れる汗を拭いながら、「こいつ告白して玉砕したらストーカーにジョブチェンジするんじゃないか」と思った。
「で! どう!? セクハラの魅力は理解して貰えたかな!?」
 子供みたいな純粋な笑顔を向けながら、たまはとんでもないことを言う。最初に口を開いたのは双葉だった。
「凄かったよたまちゃん、ふたば、もう知る前には戻れないかも」
 危険な扉を開いている。たまは満足そうに笑って振り向いた。視線の先にはあずきが居る。あずきは視線だけやってささやかに抵抗した。
「あずきちゃんは? どう?」
「むぇー……」微かに抵抗し、しかし力なく彼女は陥落した。「まあ、攻略する上で作戦として一考に値する、と、思いますう」
 よっし! と夜桜たまは拳を握る。自身の目指す計画に賛同してくれる協力者を手に入れたことを確信したからだ。たまは笑いながら、ふたりに話を持ちかける。
「で、さ。そんなふたりに、わたしと一緒にやってほしいことがあるんだけれど――」


「……セクハラ」
 生徒会室の前に、ひとりの少女が居た。少女は、室内から微かに、しかし内容を理解出来る程度に聞こえてきた三人の猥談を聴いていたのだ。少女は、彼女たちの語るとんでもない話に耳を傾けながら、携帯端末に文字を打ち込んでいた。
 少女には、彼女たちの計画に乗っかる度胸は無かった。だが、少女だってあのプロデューサーが好きなのだ。だったら、負けるわけにはいかない。しかし、度胸はない。ならばどうするか。
「――此れでよし、っと」
 トークアプリの履歴の既読が一気に増えていくのを確認して、少女は漏らす。生徒会室の中も騒がしくなってきた。大方、誰が情報を流したのだ、という話だろう。
「ごめんねプロデューサーちゃん」少女は呟く。「でも、こうも言うからさ」
 ぴこぴこと。腰から伸びる尻尾を揺らしながら、猫乃木もちは携帯端末を制服に仕舞う。
「『危ない橋、皆で渡れば怖くない』……って!」
 成し遂げた表情を浮かべてもちは言った。
 がら、と。
 生徒会室の瀟洒な扉が開いた。
「あ」
 木曽あずきと目が合った。もちは、冷や汗を流しながら、慎重に後退りする。
「い、いや。あたし、大セクハラ大会のことなんてぜんっぜん知らないからね!」
 自爆した。自供した。引っ掛けすらする前に盛大にバラしていた。其れを確認して、静かな声であずきが室内に喋りかけた。曰く、「もちさんです」
「ひ、ひええええええええええええええッ!?」
 もちは猛然と駆け出した。数瞬遅れて、双葉とたまがもちを追って飛び出す。生徒会役員が進んで校則違反する光景を、残ったあずきは暫し見ていた
 やがて、白煙を残して消えていった三人が居た痕跡が薄れると、あずきは学生鞄を引っ掴み、彼女たちが消えた方と反対側へ歩き出す。ボブカットの紫髪を揺らす彼女は、最後にこう言い残した。
「準備、しておきましょう」
 指を鳴らした瞬間、少女は消える。
 ばあちゃる学園生徒会室に満ちていた猥雑な空気は、少しずつ元の厳正なものへと戻ろうとしていた。
0015ほのぼのえっちさん2020/12/15(火) 01:16:59.28ID:2M+qvj4T0
凄く気分がいい(クソ野郎並感)
0016ほのぼのえっちさん2020/12/15(火) 02:51:35.34ID:ViLPM3EO0
えっ、あっ、はい、メッチャ好き。
もうこれpixivに投稿した方が良いのでは???
0017ほのぼのえっちさん2020/12/15(火) 02:51:35.34ID:ViLPM3EO0
えっ、あっ、はい、メッチャ好き。
もうこれpixivに投稿した方が良いのでは???
0018ほのぼのえっちさん2020/12/15(火) 06:45:13.61ID:???0
グワーッ!(多幸感)
準備とは一体ナニをするんでしょうかねぇ……
0019ほのぼのえっちさん2020/12/15(火) 13:24:53.65ID:???0
逆にあずきちによって「馬が私たちにセクハラしてくれるプログラム」を作って埋め込んで、
アイドル部全員それを食らうしシロちゃん達にもそれが派生する展開が見たい。

そして何故かセクハラの一環で馬に散々撫でられまくるマネ部
0020ほのぼのえっちさん2020/12/15(火) 13:26:00.50ID:???0
すずすずには誕生日に馬からめっちゃオシャレなプレゼントをもらって顔真っ赤にして乙女になる展開も似合うし、
馬が「すずすずが欲しい物行ってくれればプレゼントしますよ!」って言ったら
その勢いでホテルに連れ込まれて「私、これが欲しいんですよね」って股間を撫でられる馬という展開
0021ほのぼのえっちさん2020/12/15(火) 21:35:08.86ID:???0
>>20
てっきりそのまま股間のブツが欲しいと解釈した馬は、アイドル部はメンバー同士でデキてると信じてたので
バグとか利用して独断と偏見で「攻め」側をふたなりにしてあげて、ポカーンとしている面々に後ろ手で手を振りながら
「あー良いことしたっすねー」と思ってる陰で「そうじゃないんだよなぁ……」と頭を抱えるアイドル部

ところで馬の尻にも穴はあるんだよなぁ……
0022ほのぼのえっちさん2020/12/15(火) 22:09:39.40ID:ViLPM3EO0
>>21
すずすずがあの服装で馬並み持ってたら、スゴく叡智じゃないだろうか
あと、バグで馬並み付けたとしたら拒絶反応とかで感度ビンビンで簡単に逝き狂えそうだよねぇ!?
0023ほのぼのえっちさん2020/12/15(火) 22:18:37.43ID:???0
そのモノの使い方が分からなくて馬に教えてもらうことにして、
いやいやだけども馬が手でしごいてくれたらよがりまくってしまう展開
0024ほのぼのえっちさん2020/12/15(火) 22:27:28.86ID:???0
そして馬がしごいてあげたら感じまくって何発も出して、
出し過ぎてしまったせいでちょっとプログラム的に不安定だったソレが消えてしまって、
「あちゃー…」と馬が思ってたら、何発も出したせいで感じまくって愛液がまるで粗相をしたようなレベルでまき散らしてしまった
すずすずが、そのまま馬に無理やりキスして押し倒して、「ここまで来たらもう止まりませんよ?」とか言ってそのまま騎乗位で
0025ほのぼのえっちさん2020/12/15(火) 23:50:31.00ID:I/4w9ljP0
後日、真っ赤なスカートが白く染まってると思うと込み上げてくるものがあるな……
0026ほのぼのえっちさん2020/12/16(水) 09:34:47.68ID:???0
新衣装貰った人は大体その次の日は一回新衣装がべとべとになるので選択しなきゃいけなくなる概念
0027ほのぼのえっちさん2020/12/16(水) 19:58:35.48ID:???0
何なら本人の要望とかいろいろ聞いて出来上がった試作品のver.0.834辺りで一度馬と激しい運動(意味深)をして
「ここの部分が破けやすい」「ここがすぐ脱げる」とかを改善してからのver.1.00をお披露目で使うところまである
ver.1.00でも趣く

メンテちゃんはストレスで馬を襲う
0028ほのぼのえっちさん2020/12/16(水) 21:26:27.12ID:???0
伊東ライフ先生とコラボするからってライフ先生の書いた同人誌を読んで、
同じ感じのシチュを馬にしてあげとうとして「頑張れ頑張れ」しながら甘々な趣をしてくれるイオリン
0029ほのぼのえっちさん2020/12/16(水) 23:11:49.27ID:E6RCbTq00
>>28
どうせならすずすずも巻き込んで欲しい。
馬に入れられて逝きまくってるすずすずに「頑張れ頑張れ♪♪」っていうのも中々趣があっていいと思うの
0030ほのぼのえっちさん2020/12/17(木) 19:35:19.12ID:???0
それは是非見たい……。

そしてすずすずに覆いかぶさって腰降ってる馬にキスし始めて、
馬の下で喘いでるすずすずに騎乗して自分のも慰めてもらいそう
0031ほのぼのえっちさん2020/12/17(木) 22:33:30.70ID:YqSeNb7M0
今更ながらloveちゃんの存在知ったんだけど、これアイ馬ならぬラブ馬って、もしやある???
0032ほのぼのえっちさん2020/12/17(木) 23:51:25.86ID:UCgeBL690
これは瑠璃馬判定ですね……
0033ほのぼのえっちさん2020/12/18(金) 00:31:50.87ID:YPaRmbWy0
馬また女の子落としてる……薄い本が厚くなりそうですね……
0034ほのぼのえっちさん2020/12/18(金) 01:18:47.36ID:???0
???「ねえうま」
うま「はい」
???「"また"なの?」「世界中の女の子とオトモダチなの?」「ねえ?」
0035ほのぼのえっちさん2020/12/18(金) 06:23:59.60ID:???0
「ばあちゃるくんの愛はですね、無限に広がる大宇宙よりも広いっすね、これ完全にね」
0036ほのぼのえっちさん2020/12/18(金) 13:29:05.27ID:???0
打ち上げであの四人で電脳世界で飲んだ後、司はその後に明日の配信予定とかあるので別れることになって
三人で飲んでたけど、久々に収録とかで結構タガが外れてた馬が酔いつぶれてしまって、
割と忍者なので筋力のあった瑠璃姉が送ってあげることにしてニュイも帰ったんだけども、

馬の家について適当にベッドに寝かせた後、「酔いつぶれた相手の家に行くって、男女逆だったら同人誌だよなぁ」とか思ってたら、
疲れから大きくなってた馬の物を見てしまって、そのサイズに「お、おぉ…」ってちょっとドキッとしてしまい、
そのまま誰もいないし、酔いつぶれてるし、ってことでそのままちょっと味見してたらそのまま馬に寝ぼけてヤられてしまって、
今まで経験したことのない快楽に気絶するくらい感じてしまって、
翌朝になって目覚めたらベッドで隣で寝てる瑠璃姉を見て顔真っ青にする馬と、
起きて現状を把握したら同じように顔真っ青にして、その場はなんとかお互いに秘密にしておこう、
ってことにしたけども、最終的にたまに馬のところにやってきてシてもらうことにする展開…?
0037ほのぼのえっちさん2020/12/18(金) 15:56:41.28ID:YPaRmbWy0
瑠璃姉さんの身長:142p、ピノ様の身長:147p
うっわ、めっちゃ小っちゃい⋯⋯小っちゃいとはわかってたけど瑠璃姉さん、アイドル部最小のピノ様より小さいのか⋯⋯そんな小さい身体で馬と趣するのか……超叡智じゃん⋯⋯
0038ほのぼのえっちさん2020/12/18(金) 16:01:41.29ID:???0
>>37
多分試しに口でする段階で結構大きすぎてアゴ外れそうになりながらも頑張ってしゃぶるし、
自分から騎乗位で入れようとしたらサイズ的に半分で結構きついのに、足滑らせて一気に奥まで突かれて
一気に絶頂して欲しい…そして、その勢いで失禁してしまって、それがかかったせいで馬が起きて、
流石に非現実的過ぎて「最近溜まってるんだなぁ」と思いながら夢だと思ってそのまま瑠璃姉のことを気にせず動いて、
一方的に道具みたいに使われてしまってほしい…
0039ほのぼのえっちさん2020/12/18(金) 22:33:11.60ID:???0
馬とのプレイの一貫で「○○でイケ」カードを使って、
乳首やキスだけでいかないと本番してくれないと言う罰ゲームを思い付いた
0040ほのぼのえっちさん2020/12/18(金) 23:30:02.54ID:???0
年々美しくなっていくシロちゃんに見惚れていき段々と「可愛いですねー」とは言えなくなった馬と、
『誰が見ても可愛い』はずなのに馬に可愛いって言われなくなって寂しい思いをしているシロちゃんの
すれ違いはあと何年経てば見れるようになりますか?
0041ほのぼのえっちさん2020/12/18(金) 23:33:04.49ID:YGCadGF/0
>>39
瑠璃姉さんに騎乗位で逝けとか、ごんごんにご奉仕しながら逝けとか、シスターに叩かれて逝けみたいな叡智叡智な展開が待ってるんですね!
0042ほのぼのえっちさん2020/12/19(土) 10:07:23.39ID:???0
俺はノム馬を使い手なんだがちょっと長めのss投下していい?
具体的に言うと17レスぐらい消費するんだけど
0043ほのぼのえっちさん2020/12/19(土) 10:44:44.84ID:jLDYpXgJ0
>>42
良いぞもっとやれ!!
0044ほのぼのえっちさん2020/12/19(土) 10:56:39.55ID:???0
1/17
二人掛けの小さなテーブルの上で、グラスに入った氷が始まりの合図のように、カランと音を立てた。
「ばあちゃるさんは、催眠術に興味ありませんか?」
彼女、燦鳥ノムがばあちゃるにそう話を切り出して来たのは、彼女の家で杯を傾けている時だった。
電脳少女シロを通じ知り合った二人は初めて顔を合わせるなり意気投合し、
今では時間さえ合えば一緒に晩酌を共にする仲にまで至っている。
所属企業が異なるにも拘らず周囲が驚くような早さで親密になった理由として、
『実は二人は高校か大学が同じだったのではないか』『かつては恋人同士だったのではないか』などと
まことしやかに囁かれているものの、本人たちは笑って否定している。
尚、その噂が界隈に流れた際、少なくない数の少女たちが徒党を成してばあちゃるの元へと迫り
ノムとの関係についてアレコレと詰問した挙句、窮に瀕したばあちゃるから休日一緒にお出かけという
史上稀にみる提案を引き出させたことは伝説になっている。
「催眠術ってあれっすか? この前の動画でやってた」
「はい、見て下さったのですね。嬉しいですわ〜」
まだ中身の入っているグラスを手放し感激したように隣の席に座る男へ、ひしっ、と抱き付くノムと、
突然の行動にこらこらと窘めながらも満更でもない表情のばあちゃる。
金曜の仕事終わりに「良いお酒を貰ったんですよ」とノムがばあちゃるを自宅に招き始まった今宵の晩酌は、
既にボトルの半分ほどがなくなるまで進み、二人はすっかりほろ酔い気分になっていた。
とはいえ好い仲でもない男女が意味もなく抱き合っているのも良くないな、と思える程度には
理性が残っていたばあちゃるは、自分の胸に額をぐりぐり押し付けてくるノムを引き離した。
「んー。でも動画だと、ノムノムは催眠術を掛けられる側でしたよね?」
「そうでしたけど、収録が終わった後に色々と教えて頂いて、すっかり催眠術の虜になってしまいましたわ」
酒気で赤らんだ顔をぱあっと輝かせながら朗らかに笑うノム。そんな彼女に、ばあちゃるは尋ねた。
「へぇー。じゃあどんなのが出来るっすか?」
「よくぞ聞いてくれましたわ!」
さっきまでのふらふらとした挙動から一転、背筋をピンと伸ばしたノムはばあちゃるへと指をビシィッ! と差して言った。
「わたくし、手ごわいばあちゃるさんを意のままに操ってみたいと思いま〜す!」
どどーん! と効果音が聞こえてきそうなノムの宣言に、ばあちゃるは少し呆れたように言い返す。
「いや動画でも言ってたじゃないっすか。催眠は『自分が体験したいと思ったものだけ体験できる』って」
「だから、ばあちゃるさんがそれをしたいなーって思うように、わたくしが催眠を掛けま〜す」
得意げな顔でふんっ、と鼻息を鳴らすノムだが、残念なことに説明になってない。
もうすっかり酔いが回ってるなー、と思ったばあちゃるは、この際彼女の余興に付き合ってあげることにした。
「じゃあやってみて下さいよ。どうやって俺に催眠を掛けるのか」
「分かりました〜」
そう言ってノムはばあちゃるのグラスを手元に寄せると、そこにウォッカとオレンジジュースを注ぎ、かき混ぜる。
丁度氷だけになっていたばあちゃるのグラスに、スクリュードライバーと呼ばれるカクテルが出来上がった。
「まずは、一杯飲みます」
「ハイハイハイ飲みますよノムノムー」
差し出された自分のグラスを受け取り、スクリュードライバーを口に運ぶばあちゃる。
ごくごくと、ビールでも飲んでいるような喉越しの良い音が鳴った。
「ハイハイハイ飲みましたよノムノムー。次はなんすか?」
「もう一杯飲みます」「ハイハイハイ」
「まだ一杯」「ハイハイハイ」
「更に一杯」「ハイハイハイ」
0045ほのぼのえっちさん2020/12/19(土) 10:57:04.34ID:???0
2/17
「はい! オッケーで〜す!」
「ハイハイハイハイハイハイハイハイハイハイハイハイハイハイハイまだまだばあちゃるくんは飲めますよ〜」
数分後……そこにはすっかりグロッキーに仕上がったばあちゃるの姿が!
まあ度数の高いウォッカがベースとなっているカクテルをジュースのようなペースで飲み続けていれば当然のことである。
「では、ばあちゃるさん。目を瞑って、感覚を出来るだけ研ぎ澄ませて下さい」
「おおっ、ついに開始っすねーハイハイハーイ」
ばあちゃるが言われた通り大人しく目を瞑ると、ノムはある物を片手にばあちゃるに身体を寄せる。
身体から発する体温さえ感じられそうなほど近くまで来たノムは、ばあちゃるの耳元に口を寄せて囁き始めた。
「今、あなたは一人で砂漠を歩いています……」
「俺一人だけっすか〜。寂しいっすね〜〜」
返事の代わりに茶々を入れるばあちゃるの声を無視して、ノムは催眠を続ける。
「飲み水を全部飲み切ってしまったあなたを、陽は容赦なく照り付けます……」
「んん〜〜」
「あまりの暑さに汗ばみ、喉はもうカラカラです……」
「もうカラカラっすねこれ完全にね」
「そんなあなたの前に突然、サントリーの天然水が湧きました……」
「おおー気が利いてますね〜」
「あなたはペットボトルで天然水を汲み、口を付けます……」
そう言いながら、ノムは自分が持っていた『ある物』……『サントリー 南アルプスの天然水』の
550mlペットボトルを目を瞑ったままのばあちゃるに握らせると、キャップを外し彼の口元へと運ぶ。
「ほら、お口を開けて。いっぱいノムノムして下さい……美味しいですか?」
「ごくごく……ふぅ。いやいやいや、生き返りますよホントに〜」
「今ならこの美味しい美味しいサントリーの天然水一か月分が、なんと小売希望価格の40%オフで──」
「──って! これただの自社商品の販促営業じゃないっすか!」
「あれ〜バレちゃいましたか〜!」
正気に戻ったばあちゃるのツッコミにノムが、あちゃ〜、とどこか楽しそうに顔をしかめた。
「なんすかサントリーの天然水が湧くって! そもそも酒飲んだら脱水するから喉渇くのは当たり前っすね完全に!」
「これだけ酔っててそこまで頭が回るなんて、ばあちゃるさん賢いですわ〜!」
一切悪びれることなくケラケラと笑うノム。ブチィ! と何かが切れる音が聞こえた。
「こらー! 反省ゼロっすかノムノムー! こうなったらもう朝まで飲み明かすっすよー!」
「そんなに飲んだら二日酔いになりませんか?」
「こうなるまで飲ませたのはノムノムじゃないっすかー!」
「そうでしたわ〜!」
そんな茶番を間に挟みつつ、二人の晩酌はまだまだ終わりをみせようとしない。
しかし今夜、ばあちゃるの記憶はここで途絶えた。
0046ほのぼのえっちさん2020/12/19(土) 10:57:32.01ID:???0
3/17
朝焼けが夜空を追い出そうと広がり始めた頃。眠りから覚めつつあるばあちゃるが微睡みの中で最初に感じたのは、
身体全体に忍び寄る肌寒さだった。今年の夏も終わり、衣替えの時期となる秋に入ったことを感じさせる空気の冷たさだ。
「──さん。そろ──れませんか」
何やら耳に入ってくる雑音を他所に眠りを深めようと、ばあちゃるは腕の中にある物を抱き寄せる。
それは彼の周囲で唯一温かく、その熱を求めてより一層強く抱き締めた。
まるで、この温かさをずっと胸に抱いていなければならないような使命感さえ──。
「もう……お願いですから、起きて下さい」
その声を聞いた途端、それまでの微睡みっぷりが嘘のようにばあちゃるはぱっと目を覚ました。
視界一杯に広がっているのは、昨夜一緒に一杯やっていたノムの、少し恥ずかしそうに頬を染めた顔。
その彼女の背中に自分の両腕を回し、お互いの身体がこれでもかと密着している。
ここにきて初めて、ばあちゃるは彼女を抱き枕の如く抱擁していたことに気づいたのだった。

「うわっ! ごめんなさいノムノムっ!」
驚きのあまり飛び起きたばあちゃるは、その直後如何ともしがたい頭痛に苛まれる。
そうだ、昨夜はノムノムと一緒に飲んでて、それから……。それからどうなった?
二日酔いでガンガンと痛む寝起きの頭をそこまで回転させたところで、ばあちゃるは初めて周囲を見渡す。
女性らしく可愛らしい小物が置かれている内装、そして目の前にはベッド。
傍にはクチナシ色の物体が、寝息のような音を立ててうずくまっている。
それがノムのペット、水瓜と気づいた時、ばあちゃるはようやく、ここが彼女の寝室であること、そして自分の惨状を自覚した。
「ちょっ! 何で俺下着一丁なんすか!?」
シャツとパンツ一枚というあられもない己の姿を、さも女性がするように必死で腕で隠そうとするばあちゃる。
なるほど、この時期にそんな姿をしていては寒く感じるのも納得である。納得できるか。
「えっ……ばあちゃるさん、覚えていないんですか?」
対してベッドから身体を起こしたノムは、ばあちゃるの言葉に表情を曇らせる。やがて群青色の瞳が潤み始めた。
「そんな、昨夜はあんなにも心を通じ合わせたのに、全部忘れてしまったなんて……。ううう……酷いですわ」
よよよ、と泣き崩れるノムを見て、ばあちゃるの顔がサーッ! と青ざめる。
ばあちゃるの頭の中で『会社員の男性が別の会社の若い女性にわいせつな行為』『「酒に酔っていて覚えていない」と話している』
『容疑者の男性、複数の女性から壮絶なリンチに遭い無事死亡』という実にセンセーショナルな見出しが躍った。
走馬灯さえ見え始め、終わったな俺の人生……と絶望に打ちひしがれるばあちゃるであったが、
そこで未だ俯いたまま肩を震わすノムの恰好が自分とは異なり昨夜着ていた服装そのままであったこと、
彼女から聞こえてくるのが嗚咽ではなくクスクスという忍び笑いであることに気づき、恐る恐る話しかける。
「あのー……燦鳥ノムさん? もしかして……」
「うふふ……ごめんなさい。思いつきだったのですけれど、ばあちゃるさんの反応が面白くて、つい」
表を上げたノムの、親しい相手にだけ見せる清楚さを保ちつつも少し意地の悪い笑顔。
騙された、と完全に理解したばあちゃるは深く息を吐いた。
「ちょいちょいちょーい! いやもう勘弁して欲しいっすよノムノムー! 心臓止まるかと思ったっすよ!」
「あはははははっ! ごめんなさい本当に! もう二度としませんわ〜!」
謝りながらも笑いが止まらない様子のノムにばあちゃるは、二度も三度もあってたまるか、と心の中でツッコミを入れる。
「それはそれとして……ばあちゃるくんの服ってどこにあるっすか? 流石に何時までもこの格好は色々とやばーしなので」
「ごめんなさい。リビングに散らばったままだと思いますわ」
ありがとうございます、とお礼を言って一旦リビングに戻ったばあちゃるの眼前に、
脱ぎ散らかされた己のスーツと、そこかしこにごろごろと転がる酒の空き瓶が目に入る。
一体どれだけ飲んだんだ、と二日酔いの頭を更に痛ませながら服を着直したばあちゃるは、ノムのいる寝室へと戻った。
0047ほのぼのえっちさん2020/12/19(土) 10:58:14.00ID:???0
4/17
ベッドに腰かけ、依然として眠り続ける水瓜の背を優しく撫でるノムに、ばあちゃるは尋ねた。
「それで、結局昨夜は何があったんすか? 申し訳ないんですけど全然覚えてなくて」
「えーっと、どこから話せばいいでしょうか……逆にどこまで覚えてますか?」
「ノムノムの催眠術(笑)が終わったところまでは覚えてるっすね、完全に」
「失礼ですわ! わたくしの催眠術は完璧ですわー!」
むくれるノムをばあちゃるはまあまあと宥め、当時の状況の説明に戻らせる。
「あの後、家にあるお酒をどんどん開けてノムノムしていったばあちゃるさんが、急に
 『っつーか砂漠も脱げば暑くないんじゃないっすかね!?』って言い出すと、わたくしが止める間もなく下着姿になって……」
「うわあ……」
「それからくしゃみを一つして『寒い』って呟くと、いきなりわたくしを抱きかかえて、
 『今夜はノムノムを布団にします』『寝床はどこっすか』と……」
「まじんがー……」
「最初は突然のことでびっくりしましたけど、わたくしを抱き締めたまま、すやすやと眠ってしまったばあちゃるさんを見ていたら、
 何だかおかしくなってしまって……そのままわたくしも朝まで眠ってしまいましたわ」
「何というか……本当にすいませんでしたノムノム」
けらけらと笑っているノムだが、普通なら一発で絶交レベルの所業である。彼女の契約先から刺客を放たれてもおかしくない。
頭を下げて謝罪するばあちゃるにノムは、いえいえ、と返す。
「きっとばあちゃるさん自身も気づいていなかっただけで、ストレスが溜まっていたのでしょう。
 わたくしはあまり気にしていませんから、ばあちゃるさんもお気になさらず」
「いやいやいや、そうは言っても自分で自分を許せないというかですね」
「そこまで言うのでしたら、ちょっと昨夜のことについてシロちゃんにご相談を──」
「わーわーわー! 寛大なノムノムマジ聖人過ぎてばあちゃるくん感激っすねー!」
先程脳裏をよぎったイメージが現実となりかねない事態を前に、ばあちゃるは必死になってノムを思いとどまらせる。
そんなばあちゃるにノムは、冗談ですわ、と安心させるように笑いかけた。
「もし納得出来ないのでしたら……そうですわね。一つお願いをしてもいいでしょうか?」
「お願い、ですか?」
一体どんな内容なのだろうかと戦々恐々とするばあちゃるに、ノムは微笑みかけながら告げた。
「はい。お願いですけれど、またこれからも二人で一緒にお酒をノムノムしませんか?」
予想だにしないノムの『お願い』に、ばあちゃるはポカンとする。
それはどっちかっていうと自分の台詞じゃないだろうか、と頭の片隅で考えながらも、
返事がないことに段々と表情を曇らせていくノムに笑って言った。
「勿論っすよノムノム。こんな俺で良ければ喜んで」
不安そうな表情から一転、ぱあっと花が開いたようなノムの笑顔が咲いた。

ばあちゃるとノムの交流はその後も変わらず続いた。しかし以前と比べて変わったこともある。
それは二人の距離感。自分の失態を笑って流してくれたノムにばあちゃるは完全に気を許すようになり、
ノムもばあちゃるに対して良い意味で遠慮がなくなったことで、二人は古くからの友人のように打ち解けた。
それまでは『時間が合えば一緒に飲む』という感覚で行っていた晩酌も、
今では『一緒に飲めるように毎週どこかで予定を空けておく』というレベルにまで発展していた。
尤も二人とも多忙の身、実際には急な日程変更や休日出勤などもあって上手くいかないこともあったが、
心待ちにしていた分、次の飲みではうっ憤を晴らすかの如く盛り上がった。
そして二人の関係の中で一つ、ある特筆すべきことがあった。
0048ほのぼのえっちさん2020/12/19(土) 10:58:56.46ID:???0
5/17
「おはようございます、ばあちゃるさん」
「……おはようございます、ノムノム」
二人で晩酌を共にした翌朝。もう何度目になるだろうか、ばあちゃるが腕の中にいるノムと朝の挨拶をする。
場所はノム宅のベッドの上。ばあちゃるはやはり下着姿で、ノムは昨夜の服そのままだ。
「電車に乗る時間までまだありますけど、どうしましょう? 軽く朝ごはんでも食べていかれますか?」
「……お願いします」
は〜い、とにっこり笑いながら返事をすると、ばあちゃるの腕の中から抜け出したノムがベッドから起き上がり、
その場で軽く伸びをしてから寝室を出ていく。
しばらく横になった状態でぼうっとしていたばあちゃるも、やがて緩慢な動作で体を起こすと、
ノムが出してくれたスリッパを履いて洗面所へと足を運び、カランを捻り水を出す。
蛇口から流れ出す冷水を手で掬い、顔へと叩きつけるように浴びせて洗顔をすると、用意されていたタオルで顔の水滴を拭う。
勝手知ったる他人の家とはこのことか、と二日酔いでぼんやりとする頭で思いながらばあちゃるはリビングへと向かった。
昨夜も酔っ払ったばあちゃるが盛大に散らかしたリビングは、いつの間にかすっかりと片付いている。
先に来たノムがしたのだろう、開封された大量のボトルは洗ってまとめられ、
ばあちゃるが脱ぎ散らかしたスーツやワイシャツも丁寧に畳まれてソファの上に置かれている。
大事な書類やら何やらが入っている愛用のビジネスバッグもソファの脇にあった。
広げたワイシャツに袖を通して愛用のネクタイを締めると同時に、キッチンからチンッという心地よい音が聞こえてきた。
完全に自分の指定席となった椅子に座ると、丁度良いタイミングで朝食をトレイに乗せて持って来たノムが、
自分とばあちゃるの席の前に静かに置く。二人掛けの小さなテーブルの上は二人分の食器で埋まった。
今日はトーストだ。卵とスモークサーモンが乗りパセリを振りかけられたトーストの香ばしい匂いが、ばあちゃるの食欲を誘う。
「簡単なものですが、どうぞ召し上がって下さい」
「ありがとうございますノムノム、いただきます」
覇気の出ない声に最大限の感謝の気持ちを乗せて、ばあちゃるはトーストにかぶりつく。
ノムも着席し手を合わせると、自分の分のトーストに口を付け始めた。

晩酌をするときは、ノム自らの提案により彼女の家で行っていた。
発端は、ノムがサントリーの偉い人に大層気に入られたところから始まる。
既に販売していて評価の高い製品から試供品まで、サントリーブランドのお酒を頻繁に貰うようになったのだが、
如何せん彼女一人では飲み切れず、結果未開封の酒瓶やボトルが家の中に溜まってしまっていたのだ。
仕事上どうしても断り切れないノムとしては、ばあちゃるを家に招くことで半ば蔵酒化しつつあるお酒を消化できるし、
ばあちゃるとしても色んなお酒をタダ同然で飲める、という互いの実益を兼ねてのものだった。
しかし困ったことにこのばあちゃるという男、毎度毎度酔った挙句の果てに目に写る酒を粗方開封し、
翌朝ベッドの上で下着姿のまま彼女を掻き抱いた状態で起床するという行いを繰り返していた。
その度に次回は気を付けようと胸に刻むばあちゃるだが、飲酒量を抑えようが飲むペースを調節しようが、
何故かどうしても翌朝はノムと同衾した状態で目を覚ましてしまう。
毎回毎回平身低頭して謝るばあちゃるだったが、意外にもノムは一度も怒ったり悲しんだりすることはなかった。
なんでも、酔ったばあちゃるのそういった行動がとても面白いらしい。
自分は珍獣か何かか、と思いつつも、彼女に拒絶されてはいないということに少なからず心が安らいだばあちゃるであった。
しかし、何時までもその温情に甘えているわけにもいかなかった。何せノムは女であり、そしてばあちゃるは男だ。
今のところは文字通り一緒に寝ているだけにとどまっているが、酔って理性を失った人間が何をするか分かったものではない。
いつノムの泣き顔とあられもない姿を目の当たりにする朝を迎えてもおかしくないのだ。
彼女に嫌われこの交流がなくなることを、ばあちゃるは恐れていた。
0049ほのぼのえっちさん2020/12/19(土) 11:00:03.24ID:???0
6/17
「カクテル、ですか?」
「飲みに行きませんか? ノムノム」
二人揃ってごちそうさまと朝食を終えた後。いつものように次の晩酌は何時にしようかと話し合い始めた時に、
ばあちゃるがノムにそう提案した。
「前から一緒に行ってた居酒屋とかじゃなくて、こうオトナーって感じのバーに入ってですね、
 カクテルをくっと飲むのはどうかなーって思いまして。ばあちゃるくんとしてはですね、
 ノムノム的にどうかなーと思ってるんですねーハイハイハイ」
「驚きましたわ。逆にわたくしは、ばあちゃるさんはこういったお店を敬遠されているイメージがありましたので」
「もしかして、どんちゃん騒ぎ出来る場所しか行ってなさそうとか思ってます?」
「そんなことはありませんわ」
ばあちゃるからの疑いを首を振って否定するノム。
実際のところはどうなのか、それは彼女の心の中のみぞ知る。
「それで、どうっすかね?」
「ばあちゃるさんはわたくしとカクテルを飲みたいのですよね?」
「そうっすけど」
「カクテルでしたらわたくしも作れますわ。シェーカーも持ってますし」
「まじんがー!? すごいじゃないっすか!」
「嗜む程度なので、流石に本職のバーテンダーの方々には敵いませんけど」
謙遜するノムだが、ばあちゃるからすればすごいことに変わりはない。
今の彼は、近所に住んでいるおじさんがかつての大リーガーだった時の子どもの気持ちだった。
「何でずっと隠してたんすかノムノムー!」
「隠してなんていませんわ。カクテルといっても、簡単なものなら自宅でも作れますし。
 ばあちゃるさんも、この前わたくしが作ったスクリュードライバーを何杯もノムノムされてましたわ」
「あー、そういえばしこたま飲んだっすね。ノムノム自慢の催眠術()の前振りで」
「あー! またそうやってわたくしをバカにしてー!」
ばあちゃるの物言いが頭にきたノムは頬を膨らませる。
こうした子どものような素の態度を見せられるぐらい、彼女がばあちゃるに気を許している証拠だった。
「あーあー! 折角、今度はわたくしがカクテルをお作りしようと思いましたのにー、
 やる気がなくなっちゃいましたわー!」
「ごめんなさいノムノムー! いやいやいや、ばあちゃるくんもノムノム特製カクテルをノムノムしたいっすねー!」
「ふーん! 知りませんわ!」
すっかりおかんむりになったノムに平身低頭謝るばあちゃる。
そっぽを向く彼女だったが、なおも謝り続けるばあちゃるに心が折れたか、ため息を一つ吐いて向き直る。
「……そんなに飲みたいです? わたくしのカクテル」
「是が非でも飲みたいっすね完全に」
「……さっきも言いましたけど、そんなに上手じゃありませんわよ?」
「全っ然構わないっすね」
「……分かりましたわ」
「ありがとうございますノムノムー!」
「ただし! 一つお願いがありますわ」
今にも狂喜乱舞しようとするばあちゃるに、ノムが人差し指を立てる。
「いいっすよー! なんでも言って下さいノムノム」
「それでは。お願いですけれど──」
0050ほのぼのえっちさん2020/12/19(土) 11:04:07.49ID:???0
7/17
「それじゃあ、失礼するっすよノムノム」
「はい、また来週」
電車の時間が迫り、ばあちゃるがノムの家を後にする。
玄関口から自分の背に向かって手を振る彼女に見送られ帰路に着き、電車に乗り込み席に座って揺られる。
思い返すのは、先ほどノムに言われた『お願い』。
『お願いですけれど、今度からは着替えも持って来るようにして下さい。
 朝、電車に乗ってお家に帰ってからお風呂に入られるのも大変でしょうから』
「やばーしやばーし……」
ノムのそのお願いは、寝落ちしたばあちゃるがそのまま泊まっていくこと前提のものだ。
ついに彼女から毎度毎度の『悪癖』を改善することを諦められたと悟り、ばあちゃるは人知れず凹む。
しかし一方で、彼の心にはある疑問が生まれていた。
確かに、ばあちゃるは彼女との晩酌の度に酔い潰れて朝までお世話になっている。それはまごうことなき事実だ。
だが(誠に遺憾ながら)いくら予想しやすいこととはいえ、あくまでお互いにとって不本意な事態であり、
ノムが朝食を用意してくれるようになったのも彼女の親切心の発露でしかない筈だ。
にも拘らず、此度ノムはばあちゃるに着替えを持参するように頼んできた。
これは言い換えれば、酔い潰れたばあちゃるが自分の家に泊まることを正式に認めたに等しい。
問題は、彼女のお願いにどういった意図が含まれているかだ。
今のところ、ばあちゃるとノムは只の同業種の親しい友人関係でしかない。少なくとも彼自身はそう思っている。
ただそれにしては、自分と彼女との距離感は随分と近いような気がする。
いくら意気投合したとはいえ、女性とは家族でも恋人でもない男性をこうも簡単に自宅に泊めることを許すだろうか。
そもそも、酔って自分に抱きついてそのまま眠るような男にここまで心を開くだろうか。
自分とは違う性別の人間、それもかなり天然の気があるノムの思考を、こうだと断定することなど出来はしなかった。
今までの行動から、酔っ払った挙句自分に害をなす人ではないと判断したのか。
それか、もしかしたら彼女の中ではそれほど抵抗のあることでもないのかもしれない。
駅のホームに降り、改札口を通り過ぎながら、ばあちゃるは改めて考える。
一体、自分と彼女とはどのような仲なのだろうか、と。

翌週の金曜日。その日の仕事を神がかり的な早さで終わらせ定時で退社したばあちゃるは、
出勤時に用意した着替えの入った鞄を手に持ち、ノムの自宅を訪れていた。
もう幾度となく彼女の家にお邪魔しているというのに、緊張で心臓が元気よく血液を全身に送り続ける。
尤も、緊張の最大の原因はその手に持った鞄にあるのだが。
チャイムを鳴らすと、「入ってもいいですよ〜」というノムの声。
お言葉に甘えて家に上がったばあちゃる。彼が最初に対面したのは──
「……水瓜? 何やってるっすか? そんなところで」
「しーっ、静かに」
物陰から現れたのは、家主であるノムが飼っているペット、水イノシシの水瓜だ。
彼(?)ともやはり仕事の関係で顔を合わせ、以後は控室で話をしたり
一緒になってノムをからかったりと仲良くしている。
そんな彼だが、今日は元気がないようで、沈んだ面持ちでばあちゃるを見ている。
と言うよりは、何かを言うべきかどうか躊躇っている、といったところか。
いつもはふわふわ浮いている彼が珍しく床に足を着けている姿を見て、ばあちゃるもしゃがみ込んで話しかける。
「一体どうしたんすか? 何か悩み事でも?」
「……あのですね、実は──」
0051ほのぼのえっちさん2020/12/19(土) 11:05:07.04ID:???0
8/17
「あーっ! 水瓜ったらそんなところにいましたわー!」
その直後、ノムの大声にばあちゃると水瓜がビクッと肩を震わす。
スリッパをぱたぱたと鳴らし姿を現したノムが、水瓜に向かって話しかける。
「もう! 水瓜ったら、ばあちゃるさんを困らせたらダメですわ! それに、最近は何時も変な場所で寝て!」
「別にそんなこと──」
「はいはい、いい子ですから、もうおねんねしましょうね〜」
水瓜を抱きかかえ上げて、背中を撫でてあげるノム。
その優しい手つきに眠気を催されたのか、水瓜は段々とうとうとし始め、ついに静かに寝息を立てる。
「ごめんなさい、ちょっと奥の部屋で片づけをしていて」
「いえいえ、全然待ってないっすよ」
話しながらリビングへと足を進める二人。眠りに入った水瓜をソファに横たわらせて
小さな毛布を掛けてあげたノムは、改めてばあちゃるに向き直る。
「はい、お待たせしました。それでは、何を飲まれますか? ばあちゃるさん」
「えっと、オススメとかあるっすか?」
「そうですわね、ジン・トニックはどうでしょうか?
 バーに入って一番最初に頼むべきはジン・トニック、という話もありますし」
「それは一体どうしてっすかね?」
「最もバーテンダーの技量が試されるカクテルだから、ですわね。
 作り方自体は簡単なので、ばあちゃるさんも作ってみませんか?」
「じゃあ、折角なので」
席から立ち上がったばあちゃるがノムと二人でキッチンに並び立つ。
「必要な材料はご存じですか?」
「ジン・トニック、って言うんだから、ジンとトニックウォーターと……、
 あとレモンか何かが添えられてたり添えられてなかったりしたような気がありますね」
「はい。主に使うのはライムで、レモンは代用の時に使われるようですわね」
そう言いながら、ノムは冷蔵庫から必要な材料を取り出していく。
「もしかして、材料も全部ノムノムが用意されました? 何か悪いっすね」
「全然。この日のためだと思うと、むしろ買い物するのも楽しかったですわ」
口元に微笑みをたたえながら首を振り、ノムはてきぱきと準備を整えた。
「氷を入れたミキシンググラスにジンを注いで軽くかき混ぜて。そこにトニックウォーターを注いで、
 またかき混ぜて。最後にカットしたライムをスクイーザーで絞って、かき混ぜて……と」
「これで完成っすか?」
「ねっ、簡単でしょう? でも使う材料や手順をちょっと変えるだけで味が全く変わりますから、
 ジン・トニックと一口に言っても作り手によって違いがありますわ」
はいどうぞ、とノムが一歩退き、今度はばあちゃるがジン・トニックを作り始める。
若干のたどたどしさはありながらも出来上がっていくカクテルとそれを楽しそうに作るばあちゃるを目にして、
ふとノムがぽつりと呟いた。
「こうしていると、なんだか一緒に料理をしてるカップルみたいですわね」
「うびっ」
ライムを絞っていたばあちゃるが奇声を発し、思わず力んだ。
「だ、大丈夫ですか?」
「い、いきなり何言うんすかノムノムっ!?」
ライムの果汁をグラスに入れ過ぎてしまったばあちゃるが、わたわたと狼狽え始める。心なしか、顔が赤い。
0052ほのぼのえっちさん2020/12/19(土) 11:05:41.47ID:???0
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「だって、一緒にキッチンに立っているので、つい……」
釈明をするノムだが、ばあちゃるに釣られるように彼女の顔も赤みを増していく。
客観的に見るとばあちゃるとノムは既に同じベッドで起床する仲なのだが、ばあちゃるはそのことに気が付いてはいない。
二人の間を甘酸っぱい雰囲気が漂い出した。
「と、とにかくこうしてカクテルも出来ましたし、早速ノムノムしましょうかね!
 あーそうだ! 折角だから自分が作ったのを相手にノムノムしてもらうってのはどうっすかね!?」
「そ、それもいいですわね……そうしましょうか」
どこか気恥ずかしい空気の中、互いに相手の作ったジン・トニックのグラスを持ち、二人はテーブルに戻った。

「それでシロちゃんは何て言ったと思います? 『馬、また食べたでしょ』っすよ。えぐくないっすか?」
「えぐー、ですわ」
自分の正面に座るノムとの歓談の中で、ばあちゃるはノムの作ったジン・トニックを一口含む。
爽やかな酸味と仄かな甘み、そしてライムの香りが広がった。
飲み始めの頃はノムの爆弾発言の尾を引いてぎくしゃくしていた二人だったが、
アルコールが多少なりとも回って来たのか、いつものような軽快なやり取りを行うようになった。
楽しげに笑うノムが、自分が初めて作ったジン・トニックを美味しそうに飲む姿に
ばあちゃるも嬉しくなり、釣られるように彼女のジン・トニックを飲む。
丁度二人のグラスが空になったところで、突然ノムがぱんっ、と手を合わせ打ち鳴らした。
「そうそう、ばあちゃるさんにぴったりのカクテルがありますわ」
「おっ、一体何すか?」
「ちょっと待っていて下さい。すぐ作りますから」
そう言って自分とばあちゃるの分のグラスを持って席を立ち、再びキッチンに入るノム。
座っているばあちゃるからは彼女が何をしているか、角度の問題で見えず分からない。
それでも、彼女が先ほどのように楽しそうにしていることに安堵していた。
「おまたせしました」
「待ちくたびれたっすよ〜」
「もう、ばあちゃるさん。まるで子どもみたいですわ」
数分後、トレーに二つのロンググラスを乗せて戻って来たノム。そのグラスを見て、ばあちゃるは目を見開いた。
「な、何すか、それ」
「うふふ。その名もホーセズ・ネック、ですわ」
らせん状に剥いたレモンの皮をグラスの内側へ入れ込み、皮の一端をグラスの縁に引っかけ、
そこにブランデーとジンジャエールを注いだ、琥珀色のロングカクテル。
ホーセズ・ネックを端的に説明するならば、こうなるだろう。
その一風変わった、大げさに言えば異様なビジュアルに、ばあちゃるは驚きを隠せない。
「うわー……すごいっすね、これ」
「ホーセズ・ネックという名前の由来は、このレモンの皮が馬の首に見えるからだとか」
「まじんがー? それキャラ的にもばあちゃるくんが飲まなきゃいけない奴じゃないっすかー!」
「はい、是非ノムノムしていって下さい」
ばあちゃるとノムがホーセズ・ネックを片手に再び会話に花を咲かせ始める。
お互いに話すのは、何てことはない取り留めの無い話。
ロンググラスに口を付ければ、ブランデーの甘みとレモンの爽やかさ、そして突き抜ける炭酸の刺激が気分の高揚を誘う。
こんなにも楽しいのは、カクテルに含まれるアルコールのせいか、はたまた相手が特別だからか。
そうして互いに先ほどより速いペースでカクテルを飲んでいく中で、ノムがばあちゃるにこんなことを聞いた。
0053ほのぼのえっちさん2020/12/19(土) 11:06:12.91ID:???0
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「ところで、ばあちゃるさんはカクテル言葉をご存じでしょうか?」
「んん? 花言葉とか石言葉とか、そういうやつっすか?」
「はい。同じようにカクテルにもそれぞれ意味が込められていて、例えばさっきのジン・トニックには
 『強い意志』『いつも希望を捨てない貴方へ』という意味がありますわ」
「おー、かっこいいっすねー」
そうですわね、と相槌を打ったノムがばあちゃるに更に尋ねる。
「では問題です。このホーセズ・ネックのカクテル言葉は何だと思いますか?」
「うーん、『負荷が高まってる』とかっすかね?」
「それはばあちゃるさんのことですわ」
ひとしきり笑い合った後、ノムが答えを口にする。
「ホーセズ・ネックに込められた意味は、『運命』。何だかロマンチックだと思いませんか?」
「いやいやいや、普段あんなマスクを被ってるばあちゃるくんがこのカクテルを飲んでるのも運命ってことなんすかねー」
「それもあるでしょうけど……わたくしとばあちゃるさんが出会って、お互いを知り合って、
 こうして一つ屋根の下で一緒にお酒をノムノムしていること。それこそが運命だと、わたくしは思いますわ」
目の前の男を真正面から見つめるノム。彼女の頬が一層赤らみ、瞳が熱っぽく潤む。
「……なら、この運命は俺とノムノムを何処へ導くんすかね?」
ばあちゃるは逆にノムへと問いかける。それは彼女のペースに呑まれてしまっていることに対しての、かすかな抵抗だった。
「わたくしは、ばあちゃるさんと一緒なら何処でも構いませんわ」
しかしそれは、ノムがあっさり答えてしまったことで無に帰する。
彼女はゆっくり立ち上がると、座ったままのばあちゃるの背後へと回る。
「今までみたいに、お店やどちらかの家でグラス片手に話をするのもいいですし、
 ショッピングモールで一緒に買い物するのもいいですわね」
どこか夢心地のような、恍惚とした表情を浮かべながら、ばあちゃるを後ろから抱き締め、未来の展望を語る。
「お仕事でもまたコラボしたり、お休みの日には動物園や遊園地へ一緒に行ったり……。
 そうやって、ばあちゃるさんと手を取り合って生きていきたいですわ」
そうして語り終えたノムに、ばあちゃるは何も言うことが出来ず、ただただ黙りこくってしまう。
そんなことはありえない。いつも迷惑を掛けてくるような男に、そんな思いを抱く筈がない。
脳裏に浮かんだとある可能性を、ばあちゃるは必死になって打ち消そうとする。
ここでばあちゃるは、ノムの言葉はアルコールのせいだと思い込むことにした。
全ては酩酊し酔いが心身に回りきったことによるものであり、自分がたった今見聞きしたものは
決して彼女の本心などではなく、ただの一時の誤ちに過ぎないのだと。
「好きです」そんな甘い考えを、ノムの甘い告白が呑み込む。「あなたを愛しています、この世の誰よりも」
耳元で囁かれた愛の告白を前に、ばあちゃるは未だ逃げ道を模索していた。どうすれば彼女の間違いを正せるだろうか、と。
ばあちゃるは、彼女が自分なんかを好くのは何かの間違いだと真剣に思っていた。
彼女は大手企業サントリーの元で活動するV業界きっての歌姫の一人。
それに対して、どれだけ祭り上げられようと所詮自分はしがないサラリーマンでしかない。
そうだ、お互いに立場というものがあるじゃないか。
自分なんかとのスキャンダルが報じられてしまえば最後、まず炎上は避けられないだろうし、
最悪彼女とサントリーの契約が打ち切られてしまう可能性だって十分ある。
そう、これは彼女の為、彼女の未来の為なのだ。それを指摘してやらねばならない。飲み仲間として、良き友人として。
ノムが体を起こし、身を離す。チャンスは今しかなかった。
0054ほのぼのえっちさん2020/12/19(土) 11:07:19.57ID:???0
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「ノムノム、俺は……」
意を決して振り向いたばあちゃるが、口を開こうとして固まった。
至近距離からこちらを見つめるノム。彼女の潤んだ瞳から一筋の光が零れ落ちた。
果たしてノムは泣いていた。涙は頬から顎へと伝い、ぽた……ぽた……、と床へと垂れる。
「……そんな、サントリー公式バーチャルYouTuberとしてではない、一人の女としての想いを、
 お願いですから、どうか受け入れてはもらえないでしょうか?」
居ても立っても居られなかった。荒々しく席から立ち上がり、急な行動に驚くノムを無理やり抱き締める。
今まで一体何処に隠れていたのだろう、と不思議に思うほどに、彼女を愛しく思う気持ちが湧き出てくる。
「ばあちゃるさん……?」
「すいません、ノムノム」
腕の中の華奢な身体がびくっと震えて強張る。拒絶されたように感じたのだろうか。
ばあちゃるは力をぎゅっと強めた。そうではないのだと否定するために。
「酌み交わす度に、次の機会を待ち遠しく思っていました」
「暇さえあればノムノムと一緒に飲むことを考えていました」
「でも、お互いの立場とか、俺じゃ釣り合うはずがないとか、そんなことを考えて、自分を慰めていました」
「そんな俺の身勝手な自己保身でノムノムを傷つけてしまって、すいません」
「ノムノムの勇気、しかと受け止めました」
「俺も、あなたのことが好きです」
「こんな情けない俺で良ければ、あなたの傍にいさせてくれませんか」
「これからあなたと二人で、いろんなことに挑戦していきたいです」
大きく見開かれたノムの瞳から再び涙が流れ始める。
しかしそこにあるのは先ほど見せた悲哀ではなく、まさに満ち溢れんばかりの歓喜だった。
「嬉しい……!」
ノムが腕をばあちゃるの背に回し、顔を胸に埋め、感慨深げに呟く。
「夢みたいです」「夢じゃないですよ」
「大好きです」「俺もです」
「どれくらい好きですか?」「……サントリーの天然水ぐらいっすかね?」
「…………」「ノムノム?」
「いえ……一瞬好きになる相手を間違えたかと思いまして」「えーぐー!」
思わずバッと飛び跳ねるように離れたばあちゃるに、ノムがクスクスと笑う。
先程まで二人を包み込んでいた甘い空気はすっかり霧散してしまっていた。
「ばあちゃるさんが変なたとえ方をするからですわ」
「いやいやいや、ノムノム的には一番分かりやすいと思いましてね」
「もう、百年の恋も冷めてしまいますわ」
「じゃあ、ノムノムはどうすれば許してくれますか?」
ばあちゃるがそう聞くと、ノムは微笑みながら答えた。
「それでは、もう一杯付き合って頂けませんか?」
「喜んで」
三度キッチンに立つノムをテーブルで待つばあちゃる。
彼女が幾つもの材料を取り出し、それをシェーカーに入れてシェークする様子が見えた。
「上手いっすねー」
「ありがとうございます」
カクテルについては素人同然なばあちゃるの賞賛にノムは丁寧に礼を述べる。
ほどなくして彼女がトレーに乗せて持ってきたのは、琥珀色の液体が注がれたカクテル・グラスだ。
0055ほのぼのえっちさん2020/12/19(土) 11:08:13.54ID:???0
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「ビトウィーン・ザ・シーツ、といいます。
 ブランデー、ラム、ホワイトキュラソー、レモンジュースをシェークしたカクテルですわ」
ノムがばあちゃるの前にカクテル・グラスを二つ置くと、自らも彼の席の隣に椅子を動かして座る。
「ノムノム?」
「正面より隣がいいですわ」
そう言ってカクテルグラスを持ち、ばあちゃるの前に掲げる。ばあちゃるもノムに倣った。
「わたくしたちの新たな関係の出発を祝って、乾杯」「乾杯」
グラスが重ね合わさり、チン、という小気味のいい音が鳴った。
柑橘類の甘めで香り高いこのカクテルは、口当たりは良いがアルコール度数が高く、
そのためショートグラスとも呼ばれる小さめのカクテル・グラスに注いで楽しまれる。
口数は先ほどより少なかったが、ばあちゃるとノムがこれまでにない充足感を得ていたことは、
二人の間の心身共に縮まった距離と穏やかで幸福感の現れた表情が物語っている。
しかしショートカクテル故に、早いもので飲み始めてから10分ほど経った頃には
ばあちゃるは飲み終わり、後はノムの分が一口程残るのみとなった。
酔いが回り始めたばあちゃるが空になったグラスをぼんやりと見ていると、ノムから声が掛かる。
「ばあちゃるさん、ちょっといいですか?」
「ん? 何すか?」
唐突なノムの問いかけに彼女へと意識を向けるばあちゃる。見れば、彼女も最後の一口を飲み干そうとしている。
次の瞬間、彼が感じ取ったのは両耳に添えられた細い指の感触、そして視界いっぱいに広がったノムの顔だった。
「んっ……」
「…………!」
ばあちゃるが驚きの声を出す前に、彼の口はノムのそれによって塞がれた。
つい十数分前まではまだ友人関係だったとは思えないほど、彼女の行動には一切の躊躇がない。
重なった唇を介し、舌を伝って、最後のビトウィーン・ザ・シーツがばあちゃるに送り込まれる。
ちゅる、じゅる、という水音が静かなリビングに響き始めた。
わずか十数mlのカクテルを共有し合おうとし、しかしすぐに飲み下してしまった二人が、
示し合わせたかのように両手を相手の頭の後ろに回し、身を寄せ合う。
まだあの甘露がどこかに残っていないだろうかと、お互いの口内を舌で弄り始めた。
ほんのわずかな甘いカクテルの残滓と、それをはるかに上回る量の唾液が混じり合う。
とうに希釈されてしまっているだろうに、脳はなおも甘みを知覚し続け、
舌同士は一向に止まる気配を見せず絡み続ける。既に二人とも、頭も心も完全に蕩けきっていた。
どれだけそうしていただろうか。
やがて自分が今一体何を味わっているのか、そもそも何を求めているのか分からなくなってきた頃、
そろそろと、これまた同じタイミングでお互いの口と口が離れていった。
二人の名残惜しい気持ちを代弁するかの如く、唇と唇の間に銀糸が掛かり、ぷつんと切れる。
目の前には火照った顔で、ハアハアと息を荒くしている相手の姿がある。
それが単に呼吸を整えるための行動なのか、はたまた隠し切れぬ興奮が表に出てしまっているのかは、
もはや当の本人たちにさえ分からなかった。
「このカクテルのカクテル言葉を、わたくしはまだ言っていませんでしたわね」
「……どんな意味があるんすか?」
今しがた行われた大胆で過激なスキンシップのことになど一つも触れず、ノムが会話の端を開く。
それに対しばあちゃるが尋ね返すと、彼女は嬉しそうに答えた。
「ビトウィーン・ザ・シーツのカクテル言葉は……『あなたと夜を過ごしたい』ですわ」
そう言って妖艶な笑みを浮かべるノムに、ぞわり、とばあちゃるの背筋が震える。
0056ほのぼのえっちさん2020/12/19(土) 11:08:34.50ID:???0
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彼のあずかり知らぬことではあったが、このビトウィーン・ザ・シーツはバーで意中の相手を口説き落とす際に
注文されることも多いカクテルの一つだ。
ただ実のところ、そのカクテル名からばあちゃるにもある程度の予想はついていた。
『ベッドに入って』という英訳からそう離れた内容ではないと推測するのはさほど難しいことではない。
それにも拘らず、ばあちゃるは不意を突かれたような強かな衝撃を覚えた。
ドクンドクン、と否が応でも心臓の鼓動が高まっていく。
「着替え、持って来てくれてますわね」
見慣れないばあちゃるの鞄から戻した視線には期待と、それ以上の感情で満ちている。
今にも蕩けそうな群青色の双眸が、ばあちゃるを見つめていた。
「もう夜も遅いですし、今夜は泊まっていかれますか?」
「……ノムノムがそう言うなら」
二人は同時に席から立ち上がった。自分の手を取り歩き出すノムに、ばあちゃるは何も言うことなく従う。
リビングからノムの寝室へと移動し、静かに扉が閉まる。
誰一人いなくなったリビングに残されたのは、片付けられることなくテーブルに置き去りにされた、
ホーセズ・ネックのロンググラス。グラスの氷がドアベルの代わりのように、カランと音を立てた。
この夜、初めてばあちゃるは忘れることなく保持し続けた。ノムと過ごしたひと時の記憶、その全てを。

ばあちゃるとノムがお互いの気持ちを確かめ合って早一週間が経ち、再びやってきた金曜日の夜遅く。
就業時間もとうに終わりを迎えても尚、ばあちゃるは事務所にただ一人残りその日最後の事務作業に打ち込んでいた。
今週は普段より多くの案件が舞い込み、それに応じて業務量も膨れ上がった為に、久方ぶりに長時間の残業をせざるを得なかったのだ。
丁度ノムも今日は帰りが遅くなるそうで、珍しく今晩は一緒に過ごせそうにない。
落胆するばあちゃるが静かに愛用のマグカップに淹れたコーヒーを啜っていた、その時のことだ。
静寂に満ちたオフィスに、彼のプライベートの携帯の着信音が鳴り響く。発信者を見ると『ノムノム』とある。
残業に辟易する心も多少は癒される気持ちになり、ばあちゃるは恋人からの電話に出る。
「もしもしー、どうしたっすかー?」
『もしもし、ばあちゃるさん?』
電話のスピーカーから聞こえてくるのは、恋人の少し困惑したような声色。どうしたのだろうか、と思った矢先に再び声が発せられる。
『あの、今日どこかで水瓜を見ませんでしたか?』
「水瓜っすかー? 見てないっすけど、何かあったんすか?」
『それが、さっき帰ってきたらどこにも姿が見えなくて……。家を出る前に鍵は全部掛けておいたつもりだったのですけど』
「でもいなくなっていた、ということっすか」
『帰ってきたらベランダの戸が開いてて、もしかしたら鍵を掛け忘れててそこから誤って出て行ってしまったのかもしれません。
 お願いです、ばあちゃるさん。もし水瓜を見つけたら、わたくしに連絡してくれませんか? もう心配で心配で』
「分かったっすよー。こっちでも探してみるっすね」
通話を終えたばあちゃるは携帯をデスクの上に置き、先ほどまで進めていた仕事の手を止め思考に没頭する。
先程ノムは、水瓜が開いていたベランダから誤って外に出たのかもしれないと言っていた。
しかしばあちゃるの知る限り、彼はそんな危険を知らない幼児のような真似をするほど幼い精神の持ち主ではない
加えて、水瓜は四足歩行の水イノシシだが、実際の所その手先はテレビゲームをプレイ出来るほど器用だ。
ならば水瓜は、自分の意思でベランダの扉を開け外に出て行った……つまり家出をしたのではないだろうか。
何か、ノムとの間で仲たがいでもあったのだろうかと考え始めた、その時。
ゴンッゴンッ、とノックと表現するには些か乱暴に事務所の扉が叩かれた。
こんな時間に一体誰だろうか、と不審に思ったばあちゃるが恐る恐る扉を開けた、その先にいたのは。
0057ほのぼのえっちさん2020/12/19(土) 11:09:07.10ID:???0
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「……水瓜?」
「ばあちゃるさん、やっと見つけました」
燦鳥ノムのペットであり、渦中の人物である水瓜がその姿を蛍光灯の下に晒していた。
よく分からない原理でいつもふわふわと空中に浮いている彼だが、何やら疲れているらしくフラフラとした危うさがある。
「一体どうしたんすか? ノムノムが探してましたよ。いやいやいや、心配かけさせちゃダメじゃないっすかー」
全くー、と言いながらデスクへと戻るばあちゃる。そのまま携帯を掴むと、飼い主に電話を掛けようとする。
「待って下さい!」
そんな彼に、水瓜は制止をかけた。
「ノムさんには電話しないで。僕の話を聞いて下さい」
「いやいやいや、ノムノムに頼まれちゃってますんでね」
「お願いですから!」
鬼気迫る勢いの水瓜の言葉に、構わず携帯を操作しようとしたばあちゃるの手が止まる。
「……分かりました」
「……ありがとうございます」
ばあちゃるは不承不承という面持ちで再び携帯をデスクに置くと、近づいてきた水瓜に問いかける。
「それで、一体どうしたんすか? なんか切羽詰まってる感じっすけど」
「切羽詰まってるのは僕じゃなくて……。ばあちゃるさん、あなたの方です」
「俺? 一体何の話っすか?」
話がさっぱり見えず困惑するばあちゃるの問いに答えようとせず、水瓜はデスクの上にある物に視線を走らせる。
「そのマグカップは、ばあちゃるさんの物ですか?」
「これですか? そうっすよー、ちょっとツテがあって特注で焼いて貰ったものっすねー」
そう言ってばあたちゃるは、件のマグカップを手に取って水瓜に近寄せる。
陶器で出来たそれはばあちゃるの手のサイズに合うように作られていて、表面には普段彼が面倒を見ている
電脳少女シロやアイドル部、メリーミルクらのデフォルメされた顔が模様となって浮き出ている。
「大切な物なんですね?」
聞かなくても分かるだろうに、わざわざ念を押すように尋ねる水瓜にばあちゃるは怪訝そうに答える。
「そうっすけど……それが?」
「ちょっと、割って貰っていいですか?」
突然の、そして余りにも無理難題な水瓜の頼み事に、流石のばあちゃるも難色を示す。
「いやいやいや、シロちゃんが描かれた物を壊すなんて、そんなのばあちゃるくんに出来るわけ──」
「──お願いがあるんですけど、そのマグカップを割って貰っていいですか?」
パリンッ、という甲高い音が事務所で炸裂した。
「……は?」
ばあちゃるは驚きを隠せない。音源は床に向かって叩きつけられ破片となった特注マグカップ。
それを実行したのは、マグカップを右手に持っていた男性の腕。紛れもなくばあちゃる自身だったからだ。
「は、えっ、何で?」
自分の意思に反して動いた腕と、見るも無残な状態になったマグカップを交互に見つめるばあちゃる。
そんな彼に水瓜は諭すような口調で話し掛ける。
「いいですか、ばあちゃるさん。あなたはノムさんに──」
「──いい子ですわね、水瓜」
鈴の音を転がすような美しい声が響いた。二人にとって聞き慣れた、そしてよく知っている女性の声だった。
その声を耳にした途端、水瓜の瞼が次第に細まり始め、身体から力が抜けていく。
彼の身体を慌てて抱きかかえたばあちゃるの前で、水瓜は完全に眠りに落ちた。
不思議に思う彼の元に声の主、燦鳥ノムがつかつかと歩み寄る。
0058ほのぼのえっちさん2020/12/19(土) 11:09:46.02ID:???0
15/17
「水瓜を見つけて下さってありがとうございます。ばあちゃるさん」
「ノムノム……どうしてここへ?」
「外で水瓜を探していたら、何となくここにいるんじゃないかと思いまして。それはもう急いで来ましたわ」
そうしてばあちゃるの前に着いたところで、ノムは彼の足元に広がる惨状に気が付いた。
「あら? 床に破片が散らばって……ばあちゃるさんはお怪我ないですか?」
心配そうにばあちゃるを覗き込むノムだが、今の彼は彼女のことなどほとんど眼中になかった。
ただ、先ほど起きた事象と自分の行いだけが頭の中でグルグルと回っていた。
何故、俺はマグカップを壊した? あれは大事なものだったはずだ。小さいけれど宝物の一つだったはずだ。
「あの、ばあちゃるさん?」
最初に水瓜に頼まれた時、確かに拒否出来た。でも次は出来なかった。
というより……身体が勝手に動いてしまった?
「あのー、ばあちゃるさん? 聞こえてますか?」
あの時何と言われた? そう、マグカップを割ってくれないかと言われたんだった。
いや違う。二回目には違う頼まれ方をしたんだ。そう、確か──
「もう! ばあちゃるさん。お願いですから、わたくしの話を──」
『──お願いがあるんですけど、そのマグカップを割って貰っていいですか?』
──『お願い』?

『もう……お願いですから、起きて下さい』
──その言葉に、微睡んでいたばあちゃるの意識は一気に覚醒した。
『お願いですけれど、またこれからも二人で一緒にお酒をノムノムしませんか?』
──その内容に、ばあちゃるは一もにもなく頷いた。
『お願いですけれど、今度からは着替えも持って来るようにして下さい』
──その頼みに、ばあちゃるは鞄に詰めて持って行った。
『お願いです、ばあちゃるさん。もし水瓜を見つけたら、わたくしに連絡してくれませんか?』
──その通りに、ばあちゃるは目の前に現れた水瓜のことを電話で知らせようとした。
『ノムさんには電話しないで。僕の話を聞いて下さい。お願いですから!』
──その剣幕に、ばあちゃるは結局のところ従った。
今まで聞いた数々の『お願い』が記憶の底から蘇る。そして──
『一人の女としての想いを、お願いですから、どうか受け入れてはもらえないでしょうか?』
──その告白に、ばあちゃるは彼女を愛することを決意した。

「お願いですけれど、わたくしを抱き締めてくれませんか?」
その瞬間、だらんと垂れたままのばあちゃるの腕が伸び、ノムの身体を抱き寄せる。
放り出された水瓜の身体が重力に従い、床へと落ちるも、起きる気配はない。
そこにばあちゃるの意思は存在しない。二人の身体が触れ合い温まり始めるのに反して、
ぞっとするほどのおぞましさを感じた彼の心は冷え込んでいく。
「ノムノム……一体どういうことなんですか……?」
「……やはり、気づいてしまわれましたか」
残念そうに、心底悲しそうにノムが呟く。まるで自分の羽毛で機織りをしていた所を見られた鶴のように。
ただ、かの民話と違い、ばあちゃるがノムに返される恩など存在しない。
「説明してください。俺に何をしたんですか?」
「分かりましたわ」
重ねて問いかけるばあちゃるに、ノムは口を開いた。
「ばあちゃるさんは、催眠術はご存じですわね?」
0059ほのぼのえっちさん2020/12/19(土) 11:10:28.64ID:???0
16/17
脳裏に浮かぶのは、ノムが初めてばあちゃるを自宅に招いたあの夜。二人の距離が縮まる、そのきっかけとなった出来事。
「催眠術? あれはただの酒の席での戯れじゃあ……」
「はい。確かに、あの時やったこと、それ自体には何の効果もありませんわ」
でも、とノムは言葉を続ける。
「あの後、予想通りお酒をたくさん飲んで酔い潰れてしまったばあちゃるさんに、わたくしは正真正銘、本物の催眠術を掛けましたわ」
全身の力が抜けた時の方が催眠に掛かりやすいですから、と平然と言うノムに、ばあちゃるは歯噛みする。
それは確かに、あの催眠術の動画で術師の男が言っていた言葉だ。加えて、ばあちゃるはとある光景を頭の中で思い返す。
翌朝、脱ぎ散らかした服を着るためにリビングに戻ると、至る所に空の酒瓶が転がっていた。よくよく考えると、
いくら飲料メーカーの公式広告塔とはいえ、一人暮らしの女性の家にあれほどの量の酒が常にあるのはおかしな話だった。
「なら、偉い人に気に入られてお酒を貰ったっていうのも……」
「ないわけではありませんでしたが、家に置いてあった物の大半は、わたくしが買ったものですわ」
それも全てばあちゃるさんを誘い込むために、とノムは悪びれもなく言う。

「一体、どんな内容の催眠ですか」
「『お願い』と言われたら、必ず言われた通りに動くこと。そういう催眠を、わたくしは酩酊しているばあちゃるさんに施しましたわ」
ある特定の刺激に対して特定の反応を示すようになる。
古典的には、犬に餌の時間を知らせるベルの音を鳴らすことで、最終的にはベルの音だけで犬が唾液を分泌するようになる反応。
それは「条件付け」と呼ばれる類いのものだった。
「そんなこと出来るわけ──」
「お願い、もっと強く抱き締めて」
ぐぐっ、とノムの背中に回したばあちゃるの腕の力が勝手に強まる。満足そうなノムの艶のある吐息がばあちゃるの耳をくすぐった。
「でも、わたくしも最初はちゃんと上手くいっているか不安でしたわ。だから、すぐに催眠効果のテストをしました」
「テスト、とは?」
「着ている服を脱ぐことと、わたくしを抱き締めてベッドに寝ること。この二つを言われた通りに出来るか、ですわ。
 そうしたらばあちゃるさん、全部脱いで裸になってしまいましたわ。流石に可哀そうだと思って、下着は着せてあげましたけど」
初めて『お願い』されて起きた朝を改めて振り返ったばあちゃるは、しかし頭を振って否定する。
「やっぱり、おかしいっすよ」
「何がでしょうか?」
「だって、『お願い』なんて言葉、皆使うじゃないっすか。その話が本当なら、俺は誰の言うことも聞く人間になってるっすね」
「そう、そのままだとばあちゃるさんは皆の言いなりになってしまいますわ。ですから、わたくしは調整を続けました」
「調整?」
「何度も何度も催眠を掛け直して、わたくしだけに反応するように、ですわ。
 ……ばあちゃるさん、わたくしのベッドの上で朝目覚めたのは一度や二度ではないでしょう?
 そして催眠を施し終えた度に、同じようにテストもしましたわ。でも、水瓜を除外するのをすっかり忘れていましたわね」
まさか見られていたなんて、とノムは自嘲する。
彼女のベッドの上で起こされる時、いつもばあちゃるは下着姿だった。
それは彼に原因があるのではなく、単にノムの度重なる調整とテストの賜物であったというわけだ。
「そうだ。水瓜にも何かしたんすか? さっきの様子は普通じゃないっすね」
「最初、ばあちゃるさんに掛ける前に水瓜で試しましたわ。流石に信じきれなかったものですから。
 キーワードは『いい子』です。 尤も、聞いてもすぐに眠りに着くだけの簡易的なものですけれど。
 でも、結果として成功しましたので、わたくしはばあちゃるさんへの催眠に踏み切りましたわ」
自分のペットさえ実験台にしたことを淡々と語るノムに、ばあちゃるは戦慄を覚える。
一見するといつも通り清楚な彼女だが、しかし間違いなくその精神は狂気に陥っていた。
0060ほのぼのえっちさん2020/12/19(土) 11:11:39.20ID:???0
17/17
「どうしてそんなことを──」
「分かりませんか?」
ノムがばあちゃるを抱き締め返す。それこそ、自分がされている以上にきつく、痛みさえ覚えるほどに。
「気になる男性を……意中の人を、同じ想いを抱いている皆さんを出し抜いて、
 誰にも渡したくないと希うのは、そんなにおかしいことでしょうか?」
その言葉に愕然とするばあちゃる。愛情。嫉妬。独占欲。誰もが持ちうる普遍的な心が、彼女をこのような凶行に駆り立てた。
「でもおかげで、ばあちゃるさんはわたくしのもの……わたくしもばあちゃるさんのものですわ」
愛しい人の体温を感じ恍惚とした表情で、感慨深そうに呟くノム。
そんな彼女と抱きしめ合ったまま、ばあちゃるが口を開く。
「だからって、こんな方法を取ったらダメっすよ」
「どうしてでしょうか?」
「相手を操って自分を愛するように仕向けたりなんかしても、その人が本当に愛してるかどうか分からないじゃないっすか。
 愛の言葉を囁かれたとして。一体どうやってその言葉を信じられるって言うんですか?」
子どもの頃、「他人に嘘を吐いてはいけません」と躾けられた人も多いだろう。
あれは「相手を傷つけてはいけない」という意味合いも勿論ある。
だが、それと同じく「自分も嘘を吐いてるなら相手も吐いているのではないか」と
疑心暗鬼に陥ってしまうことから子を守るためでもあるのだ。
「ばあちゃるさんが、わたくしを抱き締めて囁いてくれた言葉は嘘だったのでしょうか?」
「嘘じゃなかったっすよ。あの時は心の底からノムノムを愛してました。でも今はもう……分からないっすね」
ノムから自分の意志で離れることも出来ぬまま、せめて気持ちだけでもと口を動かし、本心を嘘偽りなく伝えるばあちゃる。
そんな彼の言葉を耳にしたノムからふっと力が抜け、正しく抱擁と呼べる強さまで弱まった。
「優しいですわね、ばあちゃるさんは。わたくしの催眠の下にあると分かっていて、自分の心が分からなくなっても尚、
 まだわたくしのことを思い気遣ってくれる。あなたを好きになって、本当に良かったですわ」
でも……、とノムはそこで言葉を区切る。
「もう手遅れですわ。既にわたくしたちは二度と戻れないところまで来てしまいました。
 後はもう、行く着くところに行き着くまで進み続けるしか道はありませんわ」
「まだやり直せるはずっすよ、ノムノム」
必死に説得しようとするばあちゃる。
そんな彼の優しさに触れたノムは、安心したように表情を綻ばせると、彼の耳元に口元を寄せ──
「──お願いですから、ここでわたくしを愛してくれませんか?」
瞬間、ノムの身体はデスクに押し倒される。
歪んだ笑みを浮かべるノムの服を少しずつ脱がしていく自分の身体を、ばあちゃるの心はどこか俯瞰するように見ていた。
一体、どこで間違えたのだろうか。どこかには、こうならない未来へと続く道もあっただろう。
しかしそれを見つけ辿ることは叶わず、そしてついにルビコン川を渡ってしまった。
「きっと」あられもない姿となったノムが、ばあちゃるの心を読んだかのように言った。
「こうなる運命だったのですわ、わたくしとばあちゃるさんは」
そう呟いたノムだが、それが本意であったにも拘らず、どこか寂しそうに見えた。
ノムを脱がし終えたばあちゃるは、彼女のこのうえなく美しい姿を前に、せめて彼女を慰め、その心の隙間を埋めようと、
次に自分の服を脱ぎ出し始めたのを、それは心と身体を操られているのではなく自分の意志によるものだと思い込むことにした。
少しして、二人の男女の影が重なる。悦喜の声が挙がる中、瞳から真珠のような輝きが零れ落ちた。
0061ほのぼのえっちさん2020/12/19(土) 11:19:47.60ID:???0
以上になります。楽しめたら幸いです。
長々とお目汚し失礼しました。
0062ほのぼのえっちさん2020/12/19(土) 11:55:51.84ID:jLDYpXgJ0
あぁ〜〜たすかる〜〜
すっごい好き、馬の殆どを手に入れたんだけど、最後の最後で全部は手に入らなかったって感じがしてメチャ好き
0063ほのぼのえっちさん2020/12/19(土) 17:15:24.97ID:???0
一番欲しい物だけはどうしても手に入らない感じバッドエンドでいいなぁ……。
これ、誰かが気づいて助けに来るルートにも持っていけそう
0064ほのぼのえっちさん2020/12/19(土) 18:28:08.66ID:???0
エロサンタコスで馬の前に堂々と現れて
半分おふざけのつもりだったけども結構馬がいい反応してくれたので調子に乗って
誘惑してみたら馬が乗ってきたのでそれに混乱しながらも結局OKしちゃうエロサンタごんごんだって?!?!?!
0065ほのぼのえっちさん2020/12/19(土) 20:32:51.07ID:???0
プレゼント(暗喩)を渡すのは馬の方なんだよなぁ
0066ほのぼのえっちさん2020/12/19(土) 21:05:31.20ID:???0
馬が「一日オラが何でもするプレゼントをあげますよー!」とか言って予想通り始まる趣
0067ほのぼのえっちさん2020/12/19(土) 23:25:18.05ID:UZcajqnv0
クリスマスといえば、教会だよなぁ??

クリスマスパーティの買い出しを手伝って欲しいとシスターに頼まれた馬
馬が珍しく気を利かせて車を持ってくれたので、買い物という名のドライブを楽しむ二人。
そして、お礼がしたいと彼女の家でシスターを待っていたら……
0068ほのぼのえっちさん2020/12/20(日) 15:04:35.54ID:???0
馬が家が遠くてあんまりコラボできないというかどっとライブにこれなくて、必要な作業するために交通費がかかったりもするので、
ある日ちょっと作業が溜まった時があって、何回もこっちに来るのを心配した馬が、
「日中は俺も家にいないし、よかったらうちに泊まって作業しますか?」って言い出して、
ごんごんはめっちゃ驚いてあわあわするんだけども、馬にとっては今のところ通勤環境と家の広さが一番ちょうどいいのが自分かな、
と思って誘っただけだったので、「イヤなら別に…」ってお流れになりかけたけども、ごんごんが「それがいい!」って言い出して同棲することになって、

馬の家に泊まって客間の布団で寝かせてもらいながら、
よく本社に行って作業と化しつつ、馬との同棲生活を楽しむ一週間を過ごす短編が読みたい
0069ほのぼのえっちさん2020/12/20(日) 15:16:56.33ID:???0
あんまり学園以外出会う機会が少ないので、ちょくちょく出会ったりした時にも
毎回人見知りするからちょっと心配になった馬が毎日毎日時間を見つけては電話したり、
会って話をしたりするようになっていってその馬の献身的な行動で
どんどん馬への好感度がアップしていき、恋に落ちるごんごん
0070ほのぼのえっちさん2020/12/20(日) 15:57:54.00ID:???0
>>69
馬を好きになってからは馬にもどこかよそよそしい態度になっちゃって、
さらに心配した馬が接する時間を増やして一層よそよそしくなりもっと心配した馬が(以下省略)
0071ほのぼのえっちさん2020/12/20(日) 16:37:25.11ID:???0
ごんごんがエロ画像ファイルみたいなものができた、とか話してたから、
何故か全員が「持ってる中で一番センシティブだと思う写真選手権」を初めて、
ほぼ全員が馬の着替えシーンだったり食事シーンだったりの盗撮を持ってきた展開
0072ほのぼのえっちさん2020/12/20(日) 20:52:03.39ID:???0
深夜に疲れて帰ってる途中に、女の子が酔っ払いに絡まれてるのを見て、
その時は関わらないようにして、こっそり警察でも呼ぼうかとしたら
その声をよく聞いたらかのかのだったので、慌てて馬が助けに入り、酔っ払い二人に無理やりパリピのノリで、
元々持ってた缶ビールを渡して飲ませたりして、その隙にかのかのを救出してその場を離れて、

離れた後に「なんでこんなところにいるの」って馬が話したら、ちょっと収録とかが終わったのでお酒を飲んでみようとした、って話らしくて、
でも居酒屋とかであぁいう風に絡まれたから逃げてきたらしく、この後どこかで飲みなおすのを心配した馬が
自分の宅飲み用のお酒を渡して「家に帰ったらのみな」っていうんだけども、
「折角だから馬と一緒に飲みたい!」って言われたから、仕方なく馬が一度も上げたことのない家にかのかのを上げて、
そのまま二人でお酒を飲み始めるんだけども、途中からすっかりぐでんぐでんになったかのかのがダル絡みしてきて、
そのままキスとかしてきて馬の服を脱がせてきて…ってかんじでそのままヤってしまい、
翌日になって馬の胸に抱かれてお互い全裸で眠る状況にオーバーヒートして、
二人で結局昼くらいまで寝てしまって、心配してかのかのに電話をかけたかのかのの親の電話に
間違えて馬が出てしまったそこから始まる大騒ぎ
0073ほのぼのえっちさん2020/12/20(日) 23:14:25.72ID:xzXYIkuk0
>>72
帰ろうと家から出る時にも、ご飯作りに来たシロちゃんや、突然遊びにきたアイドル部とかと鉢合わせて一悶着ありそう。
そして「馬がかのかのと付き合ってる」的な噂とかも流れ始めたりして、さらに一悶着ありそう。
0074ほのぼのえっちさん2020/12/21(月) 00:32:10.99ID:???0
 しんしん、と。
 無垢な綿雪が降っていた。
 学園長室の採光窓を見上げながら、ばあちゃるはもうこんな季節か、と思う。真っ白な光が、柔らかく部屋に注ぐ。雪は嫌いではない。車が動かなくなるのは難儀だが、幼い頃は子供らしく、元気いっぱいにはしゃぎまわったものだ。
 今でも、ふとした瞬間に雪合戦でもしたくなる衝動に駆られることもある。しかしまあ、2メーター近い上背の大男が子供のようにはしゃぎまわる画というのはとてもでないがお見せできるものではあるまい。
 ひとつ伸びをする。机仕事で縮こまった身体が音をたてる。机の上に積み上がった書類は、全てに朱印が押されていた。終わった、という開放感がばあちゃるに微かな喜びを齎した。
 業務が終わるまでには時間が余っていた。ばあちゃるは、校内を見回ることにした。三日前に学期末を迎えたばあちゃる学園の校舎は、しんと静まり返っていた。当たり前だろう。そもそも、教師すら殆ど出勤していないのだ。
 ばあちゃるは学園の長であるためこうして学期末後も書類仕事があるが、雇われの教師たちにそんな仕事は存在しない。といっても、ばあちゃるの仕事もこうして無事に片付いた。彼もとうとう、年末年始を迎えるのだ。
(いやー、今年も色々あったなー)
 短文を思考メモリに乱雑に綴りながら、ばあちゃるは学園を巡る。雪化粧を施した学園施設は、彼にとっても新鮮に見えた。車で来なくてよかった、と白い床の厚さを確認しながら思う。人っ子一人居ない学園の廊下に、雪が落ちる音が響いているようにも感じられた。
(……懐かしい感じっすね)
 電脳都市の中に組み込まれたばあちゃる学園が見せる珍しい一面に、ばあちゃるは望郷の念を覚えていた。彼はこう見えても日本の文化で浸かって育ったAIである。まるで遠い田舎のような空気を感じ取れる程度には、彼の思考回路は日本人であった。
 粗方見回り、彼は職員室にやってきていた。マスターキーを仕舞っていると、ばあちゃるの耳に聞き慣れた声が入ってきた。
「あ、お疲れさまですばあちゃるさん」
 幼さと冷静さが混じったような、少女らしい声。振り向くと、ふわりと軽く膨らんだ金髪が見える。視線を下げる。琥珀色の瞳がばあちゃるを見つめていた。
「あ、あわい先生」
 ばあちゃるに呼ばれた少女のような女性、竜崎あわいはぱっ、と綻ぶような笑みを浮かべて、
「はい、書類仕事はおしまいですか?」
「そうっすね」ばあちゃるは首肯して、「これでどうにか来年に仕事を持ち越さないで済むっすよ」
「あはは、一昨年とか凄かったですからね」
「いやまあ一昨年は……」
 そもそも年末年始休みが存在しなかったのが一昨年である。ふたりとも精力的に、地獄へ向かって疾走していた頃のことを思い出して揃って小さく震えた。もうデスマーチはやりたくない、というのが本音であった。
「えーっと、それであわい先生。ばあちゃるくんに何か用事があったんすかね」
 態々声かけてくれてるわけですし、とばあちゃるは問うた。
「あー、はい」あわいはぽりぽりと頬を指先で引っ掻きながら、「実はですね……」
 暫し困ったように視線を右往左往させていた彼女だったが、やがて、何か決めたようにばあちゃるに詰め寄る。一歩、二歩、三歩。影が重なるくらいまで近寄ったあわいは、頬を朱に染めながら、こう言った。
「一緒に、言って欲しいところがあるんです」
0075ほのぼのえっちさん2020/12/21(月) 00:32:53.20ID:???0
「へえー、凄くオシャンティーな店っすねえ」
「お酒と料理が美味しいお店なんですよ」
 ふたりが連れたってやってきたのは、電脳繁華街から一本外れた裏通りの隙間に聳え立つ小さなビルのワンフロアだった。風情のあるカウンター様式のバーだ。制服で決めたバーテンダーがふたり、カウンターの奥に直立している。
 めいめいにカクテルと料理を頼み、ふたりは一足先にささやかな祝杯をあげた。
「えーっと、それじゃあ……」
「2020年、お疲れ様でした」
 ちん、とグラスか小さく音を奏でる。同時に酒に口をつけると、ばあちゃるは少し興奮した様子で「美味しいお酒っすね本当に」と呟いていた。
「ね? 美味しいでしょう」
 料理もありますよ、とあわいは彼に自身のおすすめの皿を差し出す。ばあちゃるは、本当に美味そうに、しかし下品ではない程度の勢いで食べていた。
「美味しいっすね、これ完全にね。あわい先生、意外とグルメなんすか?」
「まあ、食事って大事ですから」
 健康にも美容にも、何より生きていく上で重要です、と少し顔を赤くしながら捲したてる。アルコールによる作用以外の要素も働いているのかもしれなかった。
「いやいや、これはリスペクトっすよ。ばあちゃるくん、あんまりそういうの気にしないというか出来ないというか……」
「え、散々シロちゃんに言われてますよね?」
「いやいやいや、お料理って中々やる時間ないじゃないっすか」ナイフで鶏肉のソテーを切り分けながら、「そしたらシロちゃん、『だったらシロがやるから』って……」
 シロちゃんの手を煩わせちゃうのは失格だと思うんすよ、とばあちゃるは困ったように言う。あわいは表情を引き攣らせていた。
(シロちゃん、恐ろしい……)
 凄まじい正妻力にあわいは表情を歪めるしかない。この強大な戦力に如何に太刀打ちするべきか、と腹案を巡らせる中でも、ばあちゃるの話は止まらない。
「それでですねー、どうしたもんかと思って色々相談したんすよ」
「相談」嫌な予感がした。「……誰に?」
「アイドル部のみんなとかルナちゃんとかのじゃおじちゃんとかのらのらとか、あとよくシロちゃんと話してるから何か知ってるかなって思ってアイパイセンとか……」
 ずらずらずらずらーっと。更に続くライバルどもの百鬼夜行にあわいは戦慄した。何でそういうときばっかり暗愚で居ないんだこの馬ァ、と悪態をつきかける。
「そしたら、なんか誰かしら入れ代わり立ち代わりで料理を置いていってくれるようになっちゃって……。いや有り難いんすよ? ばあちゃるくん中々料理とか作っていられないので助かるんすけど……」
 ばあちゃるくんに時間を割いて貰っている間に皆がチャンスとか逃したりしないか心配なんすよねー、とばあちゃるはうーんと唸りながら言う。
(完ッ全に包囲されてません? わたし、周回遅れとかそんな次元じゃなくないですかねえ!?)
 絶叫したかった。だが堪えた。馴染みの店を喪うことが心苦しかったのだ。
(……もしかして、「やる」しかない?)
 悩みながらも美味そうにソテーを口に運ぶばあちゃるを睨みながら、あわいは突貫で組み立てた作戦を実行に移そうとしていた。彼女は、懐から慎重に、手のひらサイズの小瓶を取り出す。そして――

「……」

 さーっと。ばあちゃるの酒にその中身を少し流し込んだ。顆粒状の内容物は一瞬泡を噴き上げるが、直ぐに酒に溶け消えていく。その様子を見送って、あわいは小さく笑みを浮かべた。


続きはスレ民がやってくれ……
0077ほのぼのえっちさん2020/12/21(月) 11:04:30.54ID:H6iQQki+0
媚薬に負けそうになった馬が最後の理性で自分の太ももにボールペンぶっ刺して
「自分を大事にしないとダメッスよ。気持ちは嬉しいッスけど、キミはまたまだ沢山の人に出会って、もっともっと素敵になりますからね、ハイハイハイ。」
って頭ポンポンされるのが似合いそうなのは?
0078ほのぼのえっちさん2020/12/21(月) 12:59:35.42ID:cah+XpWA0
「ありがとう……でもごめんね、今日は優しい言葉じゃなくて“ばあちゃるさんが欲しいの”」
と追い媚薬して理性崩壊させるのを、そらちゃんにやって欲しいが、多分そらちゃんはやらない。

あと追い媚薬は、瓶の中身を口に含んで唾液を混ぜてから、口移しするのが叡智だと思う。
0079ほのぼのえっちさん2020/12/21(月) 16:46:41.38ID:???0
なとなとは後ちょっとで下品に足突っ込みそうな誘い方してほしい欲望あるんだけど分かる人いるかな……
馬の前で自慰しながら誘ってほしいんだ…でも、その前にめっちゃ恥じらっててほしいし、
でも馬を誘うためだからってやってたら、気持ちよくなってきて途中からドンドン激しくなっていって馬も我慢できなくなってほしいんだ
0080ほのぼのえっちさん2020/12/21(月) 17:33:08.43ID:OVa9oHXT0
田中健太郎(41歳12月生)、田中初子(1月生) 元高槻市在住
投資詐欺、暴行。数百万を取って腕を骨折させ逃亡
人目のない所で犯罪を狙うクズども、注意
https://dotup.org/uploda/dotup.org2338815.jpg
0081ほのぼのえっちさん2020/12/21(月) 19:31:53.30ID:???0
1/4
当アパートは今月31日をもって取り壊しとなるため、入居者の皆さまに置かれましては
各自で次の入居先を見つけ速やかに退去されたし、って伝えるの忘れてたゴメンネ(29日付、管理人より)。
ちなみに今日は30日である。
「まじんがー……?」
今から数えること、およそ百年前。季節は桜が舞い散る三月の春。
アパートの掲示板の前で悲哀と絶望に満ちた嘆きを上げたのは、近隣の国立大学に通う大学生の男だ。
名をばあちゃる。現在大学三年生の彼は大学生活を絶賛満喫中であり、後に社会人として羽ばたいて被せられる馬マスクも
この当時はなく、その若々しくフレッシュな素顔を晒し呆然としている。
「いや、これ本当どうすればいいんすかね」
途方に暮れるばあちゃる青年だが、何もそのあまりにも急な通知だけが理由ではない。
彼はいわゆる苦学生で、大学に通う傍らバイトで生計を立て、巨額の学費を捻出するために
食費を切り詰め光熱費を限りなく抑える状況下にある。
毎日家計簿を作り、市場に並ぶ食材を見て頭の中で夢のような献立を思い浮かべ、思わず手を伸ばしかけるも
我に返り引っ込め、何も買わずに部屋に帰り味の薄いスープを涙を流しながら口に運ぶのもザラの生活である。
給料日前は口にするのが水だけ、という時もさして珍しくない。
ただまあ、その割には仲間とわいわい騒いだり定期的に酒盛りしたりしているので、
周囲には「アイツ意外と余裕あるんじゃね?」と思われているフシがある。
そんなばあちゃるが毎月の痛い出費の一つである家賃を抑えるために選んだのが件のアパートだ。
このアパート、大学入口から徒歩数分という寝坊しがちな学生にとって夢のような立地条件と
敷金・礼金なしの上に他の物件と比べて数分の一程度で済む家賃、そして途轍もなくクソボロッちい状態という特徴を兼ね備えている。
洗濯やお風呂は入居者が共用部で行うのはまあいいとしよう。
チャイムを鳴らすと入居者全員が顔を出すのは序の口で、壁や床の所々に無数の穴が開いており、
夏は暑く冬は寒い室温は建物に断熱材が入っているのかさえ怪しく、室内で飛び跳ねようものなら建物全体が揺れ始め、
挙句コンクリか何かで塗り固められた人型の「オブジェ」(管理人談)が豪勢にも全部屋に飾られ、
更には夜になるとどこからともなく聞こえてくる謎の囁き声と、もはや貸すつもりがあるのか疑わしく思えるレベルである。
そんなわけで住んでいる人もほとんどおらず、いるのはよく見ると指が何本か無かったり交番のポスターで見たような顔だったり、
あるいはどこかイッちゃってそうな振る舞いをしていたりと、近寄りがたい訳アリの人間ばかりである。
まともなのはばあちゃる青年だけか、と思う人もいるかもしれないが、彼も彼で
「それならこっちが多少うるさくしても向こうも下手に干渉しようとはしてこないっすね完全に」と
肝が据わってるんだか据わってないんだかよく分からない判断をして契約書類にサインをした剛の者である。
そんなこんなでヤ●ザ(極低確率で小麦粉か何かをドロップ)に気に入られて一緒にお風呂に入ったり、
少々頭が常時錯乱しておられるインテリ(状態;永久的狂気)と闇の儀式の一環で焚火を起こした末にボヤ騒ぎになりかけたり、
ちょっと影と足元が薄いルームシェアの相手(弱点;聖属性)と仲良く酒を飲んだりと、愉快な生活を送っていたばあちゃる青年は、
突如としてその暮らしに終止符を打たれてしまったのであった。おしり。
「いやいやいや、現実逃避してる場合じゃないっすね完全に」
頭を振ってその場で真剣に考え込み始めるばあちゃる。
幸か不幸か彼の荷物自体はそれほど多くないので、一日もあれば自力で持ち出せるだろう。
問題は、次の入居先の当てが全くないことだ。その超低い家賃に比肩する所などある筈もなく、
このままではばあちゃるは毎日水と太陽光で光合成をして生きていかねばならない。酒? 水です。
しかし、ばあちゃるはそんな植物めいた穏やかな生活など望んでなどいない。彼は生粋のパリピなのだ。
流石に河川敷でホームレスに紛れるのも御免な彼としては、何としても屋根の下で暮らせる生活をする必要があった。
「それじゃあ、大学の空き部屋でも間借りするとしますかね……」
そう結論を下して、ばあちゃるは早速行動に移した。
0082ほのぼのえっちさん2020/12/21(月) 19:32:10.89ID:???0
2/4
五日後。ばあちゃるは駅の公園のブランコに座り、一人頭を抱えていた。
普段使われていない空き部屋を利用する案は、自分で言ってもなんだが中々悪くなかった。
部屋は物置と化しており、ごちゃごちゃしてはいるものの整理すればそれなりに広く、
暇になれば図書館から本を借りて勉強も出来る。そのうえ家賃も掛からない。
彼の成績は格別良いものではなかったが、それは普段遊び呆けているからであり、勉強それ自体は嫌いでも苦手でもないのだ。
洗濯は早朝に大学の流し台を使い、風呂も拾ってきたドラム缶と薪を使えば費用も抑えられる。
寝泊りに使えそうな部屋も複数あり、転々とすれば大学側にバレることもない。そんな夢の生活は今朝がた終わりを迎えた。
その晩、良さそうな所属しているゼミの資料室で眠りに着いたばあちゃるだったが、
目を覚ますと見慣れたドラム缶に入れられており、一カ月前に同じゼミになった友人たちと教授に囲まれ、
今にもナニカサレタヨウダされそうになっていたのだ。
悲鳴を上げ着の身着のまま逃げ出し、奇声を上げながら自分を追いかける連中を何とか撒いたばあちゃる。
しかし、別の場所に隠しておいたドラム缶を見つけられた以上、
既に彼の現状は全てバレており、今まで使っていた空き部屋も全て押さえられているとみなした方がいいだろう。
自分を追い回す学友たちと教授の最高にイカれた表情を恐怖と共に思い出し、同じ志の人間相手に何て連中だと心の中で罵倒する。
自分も彼らと同じ立場だったら迷わず同じことを嬉々としてやる彼だが、そんなことはどうでもいいんだ、重要なことじゃない。
しかしこうなった以上、もはや知り合いの下でお世話になる他ない。
知り合い、という言葉から真っ先にとある少女がばあちゃるの頭に浮かぶ。
異国の出身と推測される銀色に輝く髪を持ち、彼同様パリピな性格の彼女とはもう千年近くの付き合いだ。
彼女が今どこで何をしているのかは知らないが、連絡を取れればどうにかなるだろうという思いがある。
だが、今回ばかりは彼女に頼るわけにもいかなかった。というのも──
「流石に、この国にいるわけないしなぁ……」
そう。ここは彼の出身地である電脳日本ではない。既に時代はインターナショナルであった。
コップに入れた水を一杯飲むばあちゃる青年。母国の水とは比べ物にならない、極上の水質が彼の喉を潤す。
今、ばあちゃるがいるのは、澄んだ清流、それが名産の世界的に有名な国、水の国の国立大学なのである。
ちょっと待つんだ。次に登場するのが自分の推しあるいは推しカプじゃなさそうだからって
ブラウザバックするのは止めて欲しい。カーソルを動かすんじゃない。タップもダメだって言ってるだろ!
かの国と電脳日本は一応ではあるが国交を結んでおり、国立水の国大学への留学生一期生を募集している
チラシを見たばあちゃるは、興味本位で応募・申請し、一定水準以上の学力もあると認められたことで、
晴れて留学生として水の国の大地を踏みしめていた。
ばあちゃる以外にも留学生となった者がおり、彼ら彼女らを留学生のモデルケースにしたい国側としては、
誰一人留年や退学をすることなく無事卒業させたいという思惑があった。
尤も、ばあちゃる本人からすれば、そんなの知ったことではないのだが。
そんなわけで、彼が頼れる人物は同じ学生に限られる。幸運なことに友達は多い方だが、
自分とのルームシェアを心情的にも環境的にも許してくれる相手となると話は別だ。
そして不幸なことに友達が多い故、先ほどの彼の逃走劇の話が出回って、見つけ次第引き渡すようお願いされてる可能性がある。
ゼミの連中のことだ、面白がって話に背ビレに尾ビレも付けて自由に泳ぎ回らせているに違いない。
下手な相手の家に身を寄せたら最後、一本釣りでそのまま今朝の再来になりかねない。
つまり、自分と仲が良く、ルームシェアのお願いを断らなさそうで、かつ自分を悪魔共に引き渡しそうにない人物といえば──
「──あの娘っすかねぇ」
脳裏に思い浮かんだのは、この異国の地で出会った少女。
今の時間なら自分のアパートにいるだろう、と予想を立て、ばあちゃんはブランコから立ち上がり歩き出した。
もう誰って言わなくて分かるでしょ? そもそも過去スレ読んでる人の中には『大学』って時点で薄っすら察した人もいるんじゃない?
0083ほのぼのえっちさん2020/12/21(月) 19:33:09.54ID:???0
3/4
「──それで、わたくしの所に来たわけですか……」
「そういうことっすね」
「何というか……頭の痛い話ですわ」
目を瞑り頭に手を当てた彼女に、はぁ、とため息を吐かれてしまい、ばあちゃるは自然とバツが悪くなる。
頭を振った拍子に群青色の短髪が揺れ、開かれた瞼から覗く同じ色の瞳が彼を見つめる。
「返す言葉もないっすね──ノムノム」
そうです今回もヒロインはこの人です。すまんな、本当にすまん。推しなんだ。毎日600mlの烏龍茶助かってます。
彼女の名は燦鳥ノム。水の国生まれ水の国育ちの華の大学二年生である。
高校で生徒会長を務め、「全教室に冷蔵庫を設置する」という選挙公約を見事成し遂げた彼女は、
親元を離れ、次なる学び舎として水の国で屈指の難関大学へと進む道を選んだのだ。
ばあちゃるより一つ下の学年の彼女は大学で同じ講義を受けた際に彼と知り合い、
ウマが合ったのか、それからというものの話をするような間柄になった。
ばあちゃるはノムを後輩の一人として大層可愛がっており、
ノムはノムでどこかだらしないばあちゃるを放っておけずに現在に至る。
「でも、何でわたくしなんでしょうか? 他にもレッカ先輩とかクロさんとか、
 ばあちゃるさんが頼んだら二つ返事で引き受けてくれそうな方がたくさんいるじゃないですかっ」
ばあちゃると同じ留学生を引き合いに出し、少し棘のある言い方をするノムだが無理もない。
目の前にいる青年はかなりのプレイボーイなことで有名であり、数々の女性を虜にしているワルーイ男なのである。
構内で、店内で、駅で、道端で。彼に落とされピンク色の視線を向ける女性は星の数ほどいるのだ。
しかも本人にはその気がなく完全に無自覚なのだから尚性質が悪い。
尤も、彼女自身もその一人になってしまっているのだから全く笑えないのだが。
ちなみに、今話に出たレッカとクロも漏れなくばあちゃるガチ恋勢のメンバーである。
ばあちゃるの一つ上の学年の、燃えるような赤い髪と右目に眼帯をしたレッカは今年卒業で、既に就職先は決まっているものの、
卒論を書かねばならないために彼と接する時間は少ない。それでも万年金欠の彼を自分の奢りと称して飲みに誘ったり、
来年就職を控える彼を自分と同じ就職先に誘ったりしている。そのバストは豊満であった。
ノムと同じ学年で、名前通り黒く艶やかな長髪でどこか妖艶な雰囲気を纏うクロは、
一周回って人に避けられ孤独を感じていた所をばあちゃるに話しかけられたことで救われた経験がある。
友達が出来た今でも彼に執着し、隙あらば自分と彼の純潔を対消滅させようと目論んでいる。そのバストは豊満であった。
そのバストは平凡であったノムからすれば、彼女たち二人は水の国ばあちゃる杯レースでの最大のライバルであり、
ばあちゃるが彼女たちと一緒にいるだけで少し不機嫌になるほど恋心が抑えられないのである。
そんなノムの心境を知ってか知らずか、ばあちゃるは真剣な表情で彼女を真っすぐ見つめ答える。
「いやいやいや、ばあちゃるくんはノムノム以外考えられなかったっすね」
「……その心は?」
「ぶっちゃけノムノムなら無理を言っても押し切れる感があったっすね完全に」
「ごきげんよ〜う」
ノムが笑顔を浮かべて玄関の扉を閉めようとするのを、ばあちゃる青年は咄嗟に扉の間に自分の身体を挟んで何とか防ぐ。
「ちょいちょいちょーい! 先輩を助けようという気概はないんすかノムノムー!」
「離して、離して欲しいですわ!」
「ここでノムノムに見捨てられたら俺生きていけな、痛っ! 腕! 腕が千切れるー!」
ドア一枚挟んで必死の攻防を続けるばあちゃるとノム。決して力持ちではないのだが、
ばあちゃるの「ノムノム以外考えられない」という言葉に少し期待しちゃっていた彼女は、
乙女の純情を踏みにじられた今、こっそりと怒りのスーパーモードなのである。
0084ほのぼのえっちさん2020/12/21(月) 19:33:36.28ID:???0
4/4
そんなわけで、勝敗はすぐについた。
「ホントお願いっすよノムノムー! 何でもするっすから──」
「──今、何でもするって仰いましたわね?」
ばあちゃるが音を上げた、その瞬間。玄関がガバッ! と開かれ、涙目になった情けない青年にノムが顔を近づける。
今にも唇が触れ合いそうな距離だが、彼女の据わった目が放つ迫力にたまらず気圧される。
「い、言いましたね完全に」
「んふふ〜どうしましょう〜?」
先程とは一転して上機嫌になったノムを、ばあちゃるは不思議そうに見つめる。
彼は知らないのだ。清楚な印象で通っているノムだが、その実、
自分に対してはかなーりドロッドロとした感情が渦巻いているということを。
「それでしたら、ばあちゃるさんには対価を支払ってもらいましょうか」
「た、対価っすか?」
その単語に条件反射的に怯えるばあちゃるに、ノムはふんすと鼻息を鳴らして言う。
「だって、他人であるわたくしの家で暮らすのですから、わたくしに対価を支払うのは当然の話ですわ」
「いやいやいや、実はばあちゃるくん、ノムノムは他人だとは思えないって感じてたんすよねー完全に」
「……それぐらいわたくしのことを特別だって想ってくれればいいのに……」
「何か言ったっすか?」
「何でもないですわ!」
ハーレム主人公必須スキル、難聴を遺憾なく発揮したばあちゃるに、ノムが荒々しく返す。
「でも対価って言っても、ばあちゃるくんさっき言ったようにお金がなくてですね、
 もう差し出せるのが労働力ぐらいなんすよ」
「それなら丁度いいですわ。ちょっとばあちゃるさんに手伝って欲しいことがありまして」
「手伝って欲しいこと、っすか?」
「はい。これから作ろうと思ってるものがあるんですけど、わたくし一人じゃ出来ないので、
 ばあちゃるさんにも是非協力して頂こうと思って」
「おおー、ばあちゃるくんとノムノムの共同作業って奴っすね完全にね」
「当たらずとも遠からず、ですわね」
「???」
渾身のギャグによく分からない返しをされ、怪訝そうに首を傾げるばあちゃる。
そんな彼に説明することなく、靴を履いたノムはニッコリと笑って言う。
「それでは、ばあちゃるさんの荷物を取りに行きましょうか。これから色々とシなければならないことがたくさんありますわ」
「あー、生活スペースを区切るための仕切りとか必要そうっすね」
「それも使うかもしれませんわね」
「いや絶対使うっすね完全に。というか、一体何を作るつもりなんすか?」
「ばあちゃるさんも知っているものですわ。完成品がどういう風になるかまでは分かりませんけど」
「いやいやいや、もったいぶらないで教えて欲しいっすねノムノムー。作業自体は大変なんすか?」
「そうですわね。お互い汗をたくさん掻いて、すごい疲れることになると思いますわ」
「えー。ばあちゃるくん、あまり疲れることはやりたくないっすねー」
「まあ最悪、ばあちゃるさんは天井の染みでも数えていれば終わりますから」
「……えっ?」
その晩、ノムの言った『対価』の意味をベッドの上で身を以って理解し、えぐー! と悲鳴を上げたばあちゃるだったが、
最終的にヒイヒイいう羽目になったのはむしろ彼女の方だったということを、彼の名誉のためにここに記しておく。
ヤったねばあちゃる! 家族が増えるよ!
0085ほのぼのえっちさん2020/12/21(月) 21:49:11.13ID:zAj/YEHD0
>>84
高濃度ノム馬助かる〜〜
大学時代にそういう関係か……とっても叡智だなぁ……

というか、なんなのだ新スレになってから、みんなss書きまくってくれるの超助かる。ありがとう愛してる。
0086ほのぼのえっちさん2020/12/22(火) 20:32:03.38ID:???0
馬はカブトムシ、ごんごんはカブトムシを食った、虫食いといえばピノちゃん、つまり……ピノごんに馬が食われたということを示唆しているんだ!!
0087ほのぼのえっちさん2020/12/22(火) 22:20:03.16ID:???0
久々に配信をした後に感慨深くなってたら、後ろにいつの間にかシロちゃんが立ってて、
「お疲れ様」って優しく言ってくれて、二人で仲良く手をつないで家に帰って温かいご飯を食べてほしい
0088ほのぼのえっちさん2020/12/22(火) 22:52:15.84ID:???0
>>87
食卓で和やかに会話をして、一緒にお風呂にも入って、一つの毛布にくるまってすやすやと眠りに着いて欲しい
0089ほのぼのえっちさん2020/12/22(火) 23:38:04.16ID:ulSCXPCe0
>>88
そんでもって朝起きたら、シロちゃんが横にいて、寝ぼけながらキスして欲しい。
キスで起きたシロちゃんがテンパってぱいーんして欲しいし、そのあと二人で静かな朝ご飯を食べて欲しい。
0090ほのぼのえっちさん2020/12/22(火) 23:48:36.31ID:???0
すいません
馬CP初心者なんですけど、CPの種類ってどれくらいあるんですか?
出来れば、一覧的な感じなものがあると嬉しいのですけれど…
0091ほのぼのえっちさん2020/12/23(水) 00:21:13.71ID:???0
一覧はいくつか前のスレにあったような気がする。
ただまた増えたから今いくつあるかはわからん。
30は超えてると思うけど。
0092ほのぼのえっちさん2020/12/23(水) 09:54:31.98ID:3Ngv9+Zr0
馬CPまとめ《以下、敬称略》

白馬:シロとのCP
ドル馬:アイドル部とのCP
あわ馬:あわい先生とのCP
メン馬:メンテとのCP
メリ馬:メリーミルクとのCP

アイ馬:キズナアイとのCP
月馬:輝夜月とのCP
アカ馬:ミライアカリとのCP
のじゃ馬:のじゃロリとのCP

そら馬:ときのそらとのCP
A馬:えーちゃんとのCP
のら馬:のらきゃっととのCP
ノム馬:燦鳥ノムとのCP

美兎馬:月ノ美兎とのCP
うた馬:鈴鹿詩子とのCP
シス馬:シスタークレアとのCP
→ドグ馬:シスターとは別存在“DOGMA”とのCP

エイ馬:エイレーンとのCP
ヒメ馬:田中ヒメとのCP
ヒナ馬:鈴木ヒナとのCP
あお馬:富士葵とのCP

このほか、Loveちゃんや朝ノ瑠璃さん、馬犬さんなどのCPが最近となって確認されている。
0093ほのぼのえっちさん2020/12/23(水) 10:32:15.65ID:3Ngv9+Zr0
だいたい40近くあるのかな?
0094ほのぼのえっちさん2020/12/23(水) 11:09:18.27ID:???0
他のVと関わるたびにカプが増えると評判なので、全部はちょっと把握しきれないな
0096ほのぼのえっちさん2020/12/23(水) 12:39:52.04ID:???0
まぁ数の差はあるはあるな。
月馬の人とかノム馬の人とかはいるけど。
0097ほのぼのえっちさん2020/12/23(水) 18:26:18.01ID:5AT1HSsn0
>>95
白馬はな...明らかにシロちゃんが需要を把握してたからな...公式が最大手なんだからそりゃ強い...
0100ほのぼのえっちさん2020/12/23(水) 21:32:18.71ID:iTMOLmyB0
ノラネコPさんが以前、のらちゃんは渡さない的な話をされていたけど...のらちゃん自身が完落ちしちゃってませんかね、この様子だと...
0101ほのぼのえっちさん2020/12/23(水) 22:18:21.05ID:jeVlZ0qn0
あれだよ、オヤジが「娘はやらんぞ」って言ってる感じのアレ
0102ほのぼのえっちさん2020/12/23(水) 22:23:41.57ID:???0
いつの間にかのらのらが学園長室に普通にいて
何なら馬の膝の上に乗ってて、それを見てアイドル部がいろいろ言うけども
「ねこはひざのうえにのるものですよ」とか平然と懐いててほしい…

なんならもう猫化して馬がお世話することになってくっついてる時に元に戻れ…
0103ほのぼのえっちさん2020/12/23(水) 23:59:55.39ID:3Ngv9+Zr0
なんだったら元に戻っても、馬の家や学園長室で猫のようにかまってちゃんしててほしい
0104ほのぼのえっちさん2020/12/24(木) 09:15:48.11ID:???0
>>75
いえっさ

1/2
十数分後。
「だからばあちゃるくんもですねー、皆を集めてバーベキューとかやった時にですね、
 『キャーばあちゃるさんステキー!』って言われるぐらい料理の腕を磨こうと思いましてねー」
(おかしい……ばあちゃるさんに何の変化もない……)
意中の男を巡る戦いで後れを取り、衝動的におクスリを仕込んだあわいだったが、目の前の男性に変わった様子はない。
相変わらず飲食を続け、ライバルたちとの話を彼女に語り続けている。
もしやと思いこっそりラベルを確認したが、誤って水溶性の胃薬を入れてしまった、なんてミスを犯しているわけでもない。
商品説明文通りなら、もうとっくに薬効が表に出ていてもおかしくはなかった。
自分に好意を向ける数々の見目麗しい女性たちに目移りしそうな環境でも食指が動くことのないばあちゃるの強靭な理性は、
薬の成分と共にトロトロに溶かされ、今頃は眼前の雌を飢えた獣の目で見つめている筈なのだ。
(でも汗は掻いて……いや、アルコールによる発汗作用もあるから断定は出来ないですね)
アルコールが入っているにも拘らず、普段よりも高速に回転するあわいの頭脳。
頭に浮かんで来た可能性を一つずつ検証して潰していき、最後に「バグってるばあちゃるが薬効を無効化した」という
荒唐無稽なんだけどちょっとはありえそうな話をないものとみなす。
そうして彼女は最後に、ある結論に辿り着く。それは──
(……!! もしや偽物を掴まされましたか!)
己の犯した致命的なミスに、あわいは愕然とする。まさか彼欲しさに目が曇り、挙句詐欺に引っかかるとは。
「じゃあ、そろそろお暇するとしますかね。あっ、支払いはばあちゃるくんがするっすよ。美味しいご馳走のお礼ってことで」
「……ありがとうございます。ごちそうさまです」
退店した後でも、あわいの心は落ち込んだままだった。
ライバルたちは既に自分の一歩も二歩も先にいる。今更自分も手作り料理勢に加わったところで、大した効果は望めないだろう。
奥の手である惚れ薬作戦も、たった今失敗したばかりだ。
どうやって挽回したものか、と沈んだ気持ちで思考に没頭するあわいに、ばあちゃるが話しかける。
「着いたっすよ、あわい先生」
「えっ?」
彼の声に我に返り、前を見るとそこには見慣れた自宅。どうやらほとんど無意識で帰路に着いていたらしい。
帰巣本能恐るべし、と思う中で、ふと傍らの男性に話しかける。
「ばあちゃるさんは、どうして付いて来てくれたんです?」
「ハイハイハイ、もう夜も遅いですしね、最近何かと物騒ですからね、ここは不肖ばあちゃるくんがお供しようと思いましてね。
 それにあわい先生も何か考え込んでいるようでしたからねハイハイハイ」
一言も発することなく物思いに耽る自分を見守っていてくれていたということに、あわいは驚くと共に嬉しくなる。
ばあちゃるへの邪な考えなどすっかり消え失せた彼女は自然な笑みを浮かべ、純粋な感謝の気持ちを述べる。
「ありがとうございます、ばあちゃるさん」
「それでですね、ちょっとあわい先生にお願いがあったりするんですけど」
「何でしょうか?」
「よろしければトイレを貸して頂けないかと思いましてね、ばあちゃるくんそろそろ膀胱が破裂しそうな勢いなんですね完全に」
「それは大変」
恩人に恥をかかせる趣味など持ち合わせていないあわいは、すぐさま玄関へと近づき、鍵を開ける。
どうぞ、と言って扉を開けた彼女に続き、お邪魔しまーす、と陽気な声を挙げてばあちゃるが足を踏み入れた。
男を招き入れた後、あわいは玄関の扉を閉める。カチャリ、と鍵が掛けられた。
0105ほのぼのえっちさん2020/12/24(木) 09:16:47.76ID:???0
2/2
直後、あわいの小さな身体を覆い被るように、背後から何者かに抱き締められる。
「へ……?」
突然のことに頭の処理が追い付かず、一体誰、と思うあわい。しかしそんなこと、考えるまでもない。
「ど、どうしたんですかばあちゃ、んむっ……!?」
振り向く途中の彼女の言葉は最後まで声にならない。唇を塞がれたからだ。他ならぬ、ばあちゃるの唇によって。
その事実を受け止める暇もなく、半端に開いたままのあわいの口内に勢いよく舌が入り込んでくる。
彼女を蹂躙すべく侵略してきたばあちゃるの舌に対し、思わず自分の舌で追い返そうとするあわい。
しかしそれは結果として舌と舌同士を絡め合わせ、より深い交わりを生むこととなった。
甘い。目を閉じ、ぼんやりと霞がかった頭であわいは思う。
口の端から溢れた唾液が顎へと伝い、服へと垂れるが、この場にそれを咎める者など誰一人いない。
ただお互いに与え合う快楽を享受する、男と女がいた。
しばらくして、強引に始まり合意に至ったディープキスは、二人が唇を離したことで終わりを迎えた。
「お酒に媚薬を混ぜるだなんて、あわい先生も意外と大胆なことをするんですね」
「な、何でそれを……?」
「いくらなんでも、目の前で入れられたら流石の俺でも気づきますよ」
ふぅ……、と少し長く吐かれた息が、彼女の耳をくすぐり、背筋を振るわす。
あわいはそれが、スポーツマンが身体の無駄な緊張を解くために行う脱力のようだと感じられた。
そしてこうも思った。今目の前にいるのは、スポーツマンなどというお行儀のよい生き物ではない。
それは不用意にも自分が呼び起こしてしまった、一匹の強大な獣なのだと。
「それで、こんな物を俺に飲ませて、あわい先生は一体ナニを企んでいたんですか?」
「そ、それは……あっ、んんっ」
口ごもったあわいの声に嬌声が混じる。見るとばあちゃるが彼女の胸と下腹部に手を伸ばし、弄り始めていた。
服の上からの愛撫ではありながらも、彼女は確かに昂ぶりを感じ、ばあちゃるの手にその証拠を示していた。
「ダメ、触らないでくだ、あんっ」
「ほらほら、答えないとどんどん激しくしますよ?」
「言います、言いますからぁ……」
息も絶え絶えに懇願するあわいの切なそうな顔を見て、満足そうに顔を歪めたばあちゃるが手を止める。
自分の望み通り止められた愛撫に今度は一抹の寂しさを覚えながらも、あわいは口を開く。
「わたし、竜崎あわいは……ばあちゃるさんを発情させて、自分のものにしようとしましたぁ──ああっ!」
言い切った瞬間、「よく言えました」と一言呟いたばあちゃるの愛撫が、一層その激しさを増して再開される。
今にも堕ちようとしていた心身に堪えきれる筈もなく、あわいは一度絶頂へと追いやられた。
「でも、そんなイケナイ先生には、学園長が直々にお仕置きを与えないといけないですね……」
荒く息を吐く彼女の耳元に、お仕置き、という言葉が囁かれた、その途端に、どくん、とあわいの心臓が跳ねる。
じゅん、と下腹部が疼き、自分のオンナの部分が鎌首をもたげるのを感じた。
「……はい、学園長を誘惑したわたしに、いっぱいお仕置きしてください……」
「じゃあ、どんなお仕置きがいいっすか? 特別に叶えてあげますよ」
ばあちゃるの問いかえにあわいは無言で一旦彼から離れると、振り返ってスカートの両端を指でつまみ、ゆっくりとたくし上げる。
露になったショーツはしとどに濡れ、それを覆うストッキングにまで染み出している。
むせかえるような女の期待と興奮に満ちた匂いが、自分とばあちゃるの鼻に香った。
この瞬間、あわいは周囲を出し抜いてばあちゃるを自分のものにすることを諦めた。代わりに──
「わたしの一番大事なところを犯して、ばあちゃるさん専用にしてください」
自分が、ばあちゃるの女になる道を選んだ。
0106ほのぼのえっちさん2020/12/24(木) 09:34:24.79ID:q97TBUfB0
>>105
エッッッッッッッ!!!!!!!
0108ほのぼのえっちさん2020/12/24(木) 12:32:17.31ID:nUdNAbaV0
この馬絶対他にも手込めにしてる……
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