恩田投手は後続を三者連続三振に打ち取り、チームも都市対抗出場を決める。窮地を救われた渡辺は本大会で全4試合に先発してチームの4強入りに貢献。
 同年のシドニー五輪に出場し、秋にはロッテからドラフト4位指名を受けた。その後の活躍は…あらためて語る必要はないだろう。

 現在は引退して社業に就いている恩田氏は、渡辺の人生を照らし出した恩人と言える。

 16年後の決戦−渡辺は6回無失点の快投でチームも延長十三回サヨナラ勝ち。都市対抗本戦への切符を手にする。今度はベテラン・渡辺が、KOを喫したエース右腕を救った。

 「疲れましたね」。そうして話をしながら何度も座り込んだ。これほど疲労感を漂わす姿を、そしてこれほど充実感に満ちた顔を見た記憶がなかった。

 「16年前は僕も打たれたけど、ベテランの人がカバーしてくれた。だから今日は僕がカバーしてやろうと。彼らに東京ドームの舞台で投げてもらえるように」。そして「意地ですかね。ここに戻ってきたというね」と少し照れ笑いを浮かべた。