再起を誓う男が新天地で躍動している。ヤクルトに今季から新加入した坂口が86試合出場で96安打を積み重ね、打率・294。川端、山田につなぐチャンスメーカーでチームに不可欠な存在だ。
 杉村チーフ打撃コーチと話し合い、開幕前に目標に掲げたシーズン安打数は180本。「目標はでっかくね。獲ってくれたヤクルトに恩返ししたい」と目を輝かせる。

 外野の守備でゴールデングラブを4度受賞。打撃も11年に144試合フルイニング出場し、リーグトップの175安打をマークした。パーマのかかった後ろ髪がヘルメットからのぞく個性的な風貌。「グッチ」の愛称で親しまれた坂口はオリックスの顔だった。

 しかし、翌12年から度重なる故障に苦しんだ。昨季は若返りを図るチーム方針もあり、36試合出場のみ。「もう一度、野球人として勝負したい」と同年オフに自由契約を申し入れて退団した。

 「決断したけど不安もあった。どこか獲ってくれる保証もない。野球を辞めなあかんことも頭をよぎった」と振り返る。だが、技術はさびついていなかった。今年2月の春季キャンプ。杉村チーフ打撃コーチは坂口の打撃練習を見て、驚きを隠せなかったという。

 「オリックスはよくこんないい選手を出してくれた。他のチームで頑張れよという球団の親心もあったんだろうけど」と配慮した上で、
「スイングが想像以上に力強かった。体が前に流れる打ち方だけど、選球眼もいい。モノが違うね。レギュラーでやらなきゃいけない選手。180安打も達成できる数字だから言ったんだよ」。