美紀「そこはもうさっき拭いたでしょぉ? もしもーし。ドン亀クン聞いてる?
   どうして君はいっつもそんなに鈍いのかなぁ?
   私をイライラさせるために、お口に雑巾咥えてここまで這って来た訳じゃないでしょ?
   あんまりノロノロしてると美紀さまにそのカラッポおつむ踏み潰されちゃうよ。
   あたま潰されたくなかったら、さっさとしよぅね!ドン亀クン!」
美紀はなおももたつく俊一の頭を小突いて言う。
ちゃらちゃらした若い女の子の口調から、怒気をはらんだ強い口調に変わっていた。
美紀「ホラ、さっさとしなさい!このドン亀!!」

美紀は軽く蹴ったつもりでも、尖った爪先で蹴られては俊一には顔が歪むほどの激痛で、
俊一は雑巾を口からこぼさないようにするだけで精一杯、急に声を荒げた美紀への恐怖から、
腰が震えてうまく力が入らなかった。

それを見下ろす美紀は、相変わらず涼しい顔だ。
美紀「10秒待ってあげる。その間にお口に咥えたその雑巾で、この床ピカピカにするのよ!」
俊一は口に雑巾を咥えているため何も言えない。

美紀がカウントダウンを始める。俊一は必死で雑巾を顔ごと床にこすり付けるが、
美紀のブーツを間近に感じる恐怖感から頭がまっ白になり、両脚をバタつかせることしか出来ない。
美紀のすぐ足許で壊れたおもちゃのように体をよろめかせる俊一。
そしてカウントダウンが終わる。

足許でなおももがくようにジタバタする俊一をよそに、美紀はゆっくりとした動作で、
ちょこん、と俊一の後頭部にブーツを載っける。
美紀「俊一、時間切れよ!言ったわよね、私。10秒やるから綺麗にしなさい、って。
   私ね、言うこと聞けない子、大っ嫌いなの。知ってるでしょ?
   適当に頑張ってるフリさえしてれば、許してもらえるとでも思ったの?」
言いながら美紀は、ブーツのソールで俊一の後頭部を撫で回す。じっくりと時間をかけながら。
美紀「ねぇ…、私の足許でいい度胸じゃん。その腐った根性、叩きなおしてあげないとね。
   ホラ、天罰よ。泣いても喚いても許してあげないからね…。」