>>761のつづき。

数日後、男は警察署の愛想の無い壁に包まれながら廊下を歩いていた。
前後に女性警察官が立っている。
…手続きする部屋へ案内するために先導するのは解るけど、自分で来た人に何故後ろから監視する必要があるのか?
男には解らない。
やがて、先導する女性警察官がとある扉をノックした。
「どうぞ。」と落ち着いた女性の声がした。
「入ります。お連れしました。」と先導する女性警察官が扉を開け、中に入り、男と後続の女性警察官が入る。
殺風景な、わりと大きめな部屋に机がひとつ置いてあり、そこに眼鏡を掛けた女性警察官が座っていた。
他に腰掛けるものは無さそうだった。
机の前に促され、眼鏡の女性と向かい合う。前後に立っていた女性警察官たちは男のやや後ろ、男を左右から挟む形で待機する。
男は目の前の女性を確認してみた。
身長は170cmくらいだろうか?座っているので定かではないが、男は自分より高そうだと見積もった。
長い黒髪を後ろに束ね、目付きが鋭い。本来は相当な美女と思われたが、猛獣の前に連れてこられたような威圧感があって、目を合わせられない。
タイトな衣装に包まれた身体は女性的な魅力を匂わせながらも、強くしなやかな筋力を連想させる。
その女性が手元の書類を見ながら、男の名前と生年月日、住所を読み上げた。
「…間違いないですか?」
そう聞かれ、男は萎縮したようにハイと小さく答えた。
「ああ、失礼。」机の女性が苦笑する。
「私は威圧感があるそうで。…誤解して欲しくないのですが、被虐嗜好男性保護法は、男性を守る法なのです。」
そこまで話して、一旦口を閉じた。
美しく冷静な猛獣…豹のような女性に見つめられ、男は困惑する。
ふ、とため息をひとつついて、女豹がしなやかに立ち上がる。
予想どおり、男より高かった。