>>808のつづき。


誰も来ないマゾ部屋で、時間だけが過ぎていく。
廊下を歩く人の気配も、いつの間にか消えていた。
夜も更けたのだろうか?時計も無ければ窓もない部屋では解りようもなかった。
ベッドに座っていた男は、水飲み器に口をつけ、わずかに出る水を飲む。一度に多くの水を飲めないため、こまめに飲む必要があった。
少し高めに設定された水飲み器から飲むためには鉄格子に触れるくらい近づいて少し背伸びしなければならず、全裸の肌に鉄の冷たさが伝わる。
家畜、あるいはペット。マゾの行き先はこの二つしかないと思い知らされる。
女豹に捕まれた睾丸が、まだ疼く。
思い出すと、恐怖とトキメキが共存してしまう。ふつふつとマゾの血が騒ぐ…が、現状はどうだろうか。
これからの一生を、愛しい飼い主のペットとしてならまだしも、家畜としてこんな部屋で過ごせるだろうか?
女豹の言葉を思い出す。
迎えが来るまでに、思い直すべきではないか?
一度は叶えてもらったマゾの夢、と今日のことを大事に抱え込んで、安穏と平凡な人生を送るのも悪くはないのかも知れない…。
男がそう思い始めた時、廊下から声が聞こえてきた。
「榊のヤツ、やり過ぎなんですよ!」
「彼女、元旦那がムジマだったんだって。」
「え?!それは悲惨…そうか、それで…いや、それはそれで職権乱用なのでは?」
「どの口が言ってんの?」
あはは、と二人の女性の笑い声が近付いてくる。
間違いない、この声は…男の胸がトキメク。
「お待たせ。」廊下側の扉が開き、聞き覚えのある声が入ってきた。
「会いに来て上げたよ。」笑いながら二人の女性が入ってきた。
少女先輩と美女。
M検…男にマゾ狩りを仕掛けた二人だった。