>>853のつづき。

車から下ろした素足に、コンクリートの冷たさが伝わる。
降りた場所が、大きなビルの地下駐車場のような場所だった。
意外さに男はキョロキョロと回りを見渡した。
三人の女性が近づいてくるのが見えた。
背の高い、警察官とはまた違った黒い制服の、屈強そうな女性が二人。その二人を従えるように、白衣の小柄な女性が歩いてくる。
柔らかそうな長い髪を、一見無造作そうに纏めた白衣の女性。前を開けた白衣の下には、淡いピンクのシャツとタイトスカート。
それらを通して、女性的な優雅な曲線が見える。白衣を装い、一見質素そうに見える。だが、切れ長な眼や、緩やかな曲線を描く唇が、可愛らしくもエロチックだった。
男性なら思わず抱き締めたくなるような不思議な可憐さを持つ、その女性は、コケティッシュな笑みを浮かべる。
小悪魔のようだった。
護送車のメンバーと簡単な挨拶を交わし、書類を受け取った小悪魔は、男に向かって名前と生年月日を確認する。
柔和な声だった。
確認が終わると、黒い制服の女性が男のリードを受け取る。
「ご苦労でした。」
小悪魔に声を掛けられると、護送車の女性たちは一礼し、車に乗り込むと早々に引き上げていく。
それを見送ってから、小悪魔は男に振り返った。
「…君は運がいい。」
きょとんとする男を見て、小悪魔はクスッと笑った。
「詳しくは歩きながら説明してあげるけど、ここは半官半民。プライベートレッスンも充実している。良い飼い主に出会える可能性が高いよ。」
そう言って微笑む。
「…さて、ここにはいくつものルールがあってね?まず、許可を得ずに女性を見下ろしてはいけない。」
小悪魔の言葉が終わるやいなや、黒制服の女性に膝裏を踏まれ、跪かされた。