朝、目覚めた瞬間から、俺は緊張していた。二十歳の誕生日。そして、診断結果が届く日だっ
たからだ。半年前の書類診断、そして、三ヶ月前の面接の診察結果が。
ゆっくりとベッドから起きあがり、深呼吸をする。大丈夫、大丈夫だと思いながら、ジャージ
姿のまま、玄関の郵便受けへと向かった。
郵便受けには大き目の白い封筒が入っている。これで、俺のこれからの人生が決まる。いや、
人生、人としての生が送れるかどうかが決まるのだ。
その封筒を取ると、表には進藤亮平という俺の名前が印刷してあった。これは間違い無く俺の
封筒だ。
その封筒を持ち、部屋に戻り、テーブルの上に封筒を置いた。ハサミを持ってきて、テーブル
の正面に座り、深呼吸を繰り返す。大丈夫、大丈夫だ。
封筒を手に取り、すかしてみる。すかしてみるが、結果が見えるのが怖くなり、すぐにすかし
て見ようとすることをやめる。そして、二、三度封筒を振り、書類を端に寄せ、ハサミで封筒
を挟んだ。
ゆっくりと力を入れていくと、ざざざざざと、厚い紙が切れていく音がした。一度では切れず、
広げ、もう一度挟んでいく。
封筒の端が切れ落ち、開いた隙間から書類の頭が覗く。ハサミの穴から手が抜けず、振りまわ
してハサミから手を抜いた。手のひらにはぬっちょりと汗をかいていた。
どうりで抜けないはずだと思いながら、ジャージで汗をぬぐい、封筒の中に手を入れ、ゆっく
りと紙を取り出した。
封筒を脇に置き、ゆっくりと三つ折りにしてあった紙を開いた。

劣等種

その三文字が目に入った瞬間、俺の人生は文字通り終わった。
身体ががたがたと振るえる。手も、足も、頭も、すべてが俺のものではなくなったかのように、
まるでそれぞれが独立しているかのように、がたがたと振るえている。
間違いだ。間違いだ。間違いだ。
間違いに違いない。そうだ、ネットでやってたじゃないか、確かに99.78パーセントは正しい
が、ということはつまり、0.22パーセントは間違いだって。そうだ。これは間違いだ。
俺はそう思いながら、落ち着こうとした。しかし、俺の体の震えは収まることは無かった。