【ヤプー】〜限り無く絶望に近い幸福〜【外伝】
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沼 正三氏の著作「家畜人ヤプー」の世界観を基に、
自分好みの場面を書いてみました。
第壱話
【 暗黒の覚醒 】
香織はブルッと身震いした。
刺すような鋭い痛みが肌を通って体の芯を揺すっている。
やがてぼんやりと知覚が戻ってきた。 頭がズキズキと痛む。
それに体全身の節々が抜けるように痺れていた。
香織は無意識に体を拗った。
「 あッ! 」
腕にギシッと痛みが走って、思わず声を発した。
その後、乙女の頭脳は、自分が今此処に至る経過を思い起こして、痛む全身をグッと硬直させた。
“ 学校からの家路を急いでいたら、
急に眼の前が真っ暗になって、意識が消えて…………誘拐されたのだ!。
……一体此処は何処なのだろう?…… ”
昂ぶった頭脳がそれでも動物的な本能で四囲を確かめようとする。
だが、彼女の網膜は何も映じて来ない。 光を全く感じないのだ。
なんということだろうか。 焦りが湧き、幾度か瞼をまばたいてみて、
どうやら眼帯らしきもので視覚を完全に封じられていることが解った。
幾分、平静さを得てくると香織は自分の惨めな姿態をはっきりと認識し始めた。
腕は後へ廻って、壁に取り付けられた鉄環に留められているらしく、
脚は正座させられて、足首と膝がきっちりと揃えさせられている。
口中では金属製の猿轡が渋酸い味とともに舌を押さえ、
強制的に開かせれている口からは涎がだらだらと流れ出し唇と顎を濡らしていた。
首には首周りを繋ぎ目も感じさせず隙間なくぴたりと覆う重厚な首輪が嵌められており、
顎を伝ってきた涎が首輪をも濡らしている。
そして、すべすべと擦り合う膝頭と腿、二の腕を通って来る腋と背の感触・・・・・。
全裸なのだ!。 パンツ1枚さえも穿いていない。衣服はすっかり取り払われて、
乳房も、腰も、臍下に生い茂り、黒い光沢を放つ千じれ毛の茂みも露の儘、
一糸纏わぬ素っ裸のまま壁に括りつけられているのだ。
“ 暑い! ”
拘束された体をくねくねと身悶えさせながら、
香織は血が沸騰するかのような異常な暑さを繊身で耐えていた。
自分の姿を見る眼を持たぬせいか、全裸に対する羞恥心よりも、
底知れぬ恐怖と激しい暑さが溌剌としていた乙女心を真っ黒に蝕んだ。
“ これから何をされるのだろうか?…
辱かしめられるのだろうか?…
どんなことをされるのかしら?… ”
世間の悪心や汚れを知らぬ純真無垢な乙女には想像も及ばぬことであった。
ただ、おどおどと悪夢のように蔽いかぶさっているものに脅かされているだけだった。
激しい暑さが純白の肌を鮮やかな紅色に染め上げていき、
もがき苦しむ若い肉体はますます熱を帯びていく。
生れてからの18年間、暖かい絹布で愛しみ、
温湯で丁寧に洗い、クリームで毎日手入れをし、
美容のため食物まで気付かって育ててきた柔肌が今、
一糸纏わぬ素っ裸の痴態の元にその全てが曝され、
武骨な拘束具に嬲られ、わなわなと紫色におののき収縮する。
うら若い女子高生は、顎をそのふくよかな胸に着け、動かぬ背を丸め、
儘ならぬ白磁の膝を抱えこんで怯える。そして、見えぬ眼を眼帯の下でまばたき、
サヨサヨと不安に身悶えする・・・・。 すると、靴音が聴えて来た。
香織は驚きの為に、その豊かで黒く艶やか頭髪を揺らめかせた後、スクッと身を固めた。
靴音はゆっくりと彼女の真横で停まった。
膝が緩み、壁との緊縛が解かれた。
すると、その直後に冷徹な男の声が鋭く耳覚を打った。
「 シッコッ! 」
突如、たわわな双乳を棒状なものでこずかれた。
アッ! と前にのめりそうになったので、
痺れた足で片膝を立ててそれを堪えたところを、今度は後手の鎖をグイッと引き絞られ、
後方に出っ張った臀部を蹴り上げるように突き飛ばされる。
思わず前かがみによろけると、再びの棒が今度は柔らかな背肉をえぐるようにギリッと押す。
全裸の麗体は、たたらを踏んで歩き出した。
香織は息をつく暇もなかった。
意思を無視され、急所急所を巧みにつかれて、
まるで反抗する間も意思も与えない相手の見事な手際。
それは圧倒的な畏怖の念を、この全裸の虜囚に植え付け、抵抗心を殺いだ。
足枷に付いている鎖がジャラジャラと鳴り、ざらついた硬い床が柔かい踵に痛く感ずる。
まるで剣山の上を歩くが如き感触に、繊弱な白い素足は乱れながら歩んで行く。
「 マワレ ミギッ! 」
方向を命ずる過酷な声と共に、男は全裸に鎖を巻かれた囚女に思考の時を与えないように、
終始背をこずき鎖を引いた。
意思を完全に剥奪された囚心はただ、支配者の命令によろめきつつその裸体を支え、
ただ歩くことだけに専念する。
「 ウンコッ! 」
遮眼の全裸体に拘束という有様の為に、日頃の鼻息をすっかり霧散させられた女は力なく脆く。
「 イケッ! 」
上半身を棒で押さえ付けられ、踏み潰された蛙のような惨めな格好をとらされると
そのまま性器を丸出しにさせられながら、香織は命令されるがままに前へと這いずった。
固い鉄棒が脛の下に当った。
「 イソゲッ! 」
いきなり尻を蹴飛ばされた。
豊麗な全裸の肉体は、金属棒と板で構成された狭い檻の中に転がりこみ、
頭蓋骨が棒に当たり激痛をもたらした。
ガチャンッ!
金属の甲高い衝突音がした。 檻が施錠されたのだ。
靴音が遠のいていく。
・
・
・
薄暗い室内が、へばりつく様な沈黙に再び覆われた…
狭い檻の中で疼痛と恐怖に悶え慄く、全裸の乙女を、ただ一人残して………
第弐話
【 悪鬼の宣告 】
「 ビーーーーーーーッ!! 」
間もなくして低い警報音がした。
すると、部屋の天井の一部がぽっかりと割れて開いた。
そして、そこから一条のクレーンが天井を降りてきて、
開いた空間から香織のいる室内へと延びてきたのである。
クレーンの連結部分が香織の入れられている檻の天井部分に連結された。
すると 鈍い駆動音とともに、索鎖がぴいんと張って動き始めた。
それに伴い香織が入れられた檻は、空中へと引き上げられ、
先ほど開いた空間から見える上の部屋へと運ばれていった。
香織を入れた黒い金属の檻が索鎖に曳かれて上の室内へ移動して来た。
香織は見えるわけもないのに、目隠しをされた顔を左右に振り状況を知ろうともがいている。
ここにも檻がある。
しかし1つや2つではない、今香織が入れられているような、
上下四方を金属格子で組んだ犬をいれるような小さな檻が10段ほど積み重ねられ、
その「檻の柱」が室内の右側と左側それぞれの端から端まで隙間無くビッシリと並べられているのだ。
内部に白い物体が見える…… その物体は、僅かに動いている………
女だ!
素裸に剥かれた女である。
それも極度に狭い檻の為に背を倒し、脚をきっちりと折り曲げさせられ、
窮屈を通り越した圧迫の為、苦しそうに何とか呼吸をしている数百人の若い全裸の女たち である。
女たちは、香織と同じく首輪を嵌められ、繊細な手首は背で重なり、胴を巻いたベルトで留められてある。
白く細い足首からは、だらんと鎖が下っているが、装着された左右の枷は直接噛み合って、身動きを禁じている。
歩かせる時は枷と枷の錠を脱し、鎖の長さだけの歩幅で運動させるのだろう。
香織を入れた檻は、左側の奥の方に積まれた檻の頭上へ来ると停止し、
再び鈍い駆動音をさせると檻は徐々に下に積まれた檻に近づき、その上に乗せられた。
香織の、桃色の爪をつけた愛らしい足指は格子からはみ出し、
豊かに充ち張ったなめらかな尻の肉が格子によって割られている。
ふっくらとした掌は苦しさに耐えようとして、しっかりと握り締められていた。
陶器のような二の腕、附け根を絞られて盛り上がったムッチリとした肩、
波打っている細く緊った脇腹、すらりと張り伸びている脚……
それらが黒い鉄棒と対照的に皆、純白なのだ。
そして青春の血潮を弾んで流している柔肌なのだ。
これが、セーターに隠れていた乳房、これがスカートを揺らめかしていた臀部……
ほん此の間まで高嶺の大輪の花のように周囲の男たちを熱狂させていた、女のからだ………
その美麗なる肉体のすべてが露出されて其処にある。
この肩、この乳房、この腰、この尻、この腿、どれもが未知層を含んだ咲き香る女体なのだ。
他の檻でもこの狭い檻の中に閉じ込められた何百という柔らかな肉の塊たちが
窮屈そうにうめき声を上げながら蠢いていた。
そんな女たちの髪の脇から覗かれる頬から二筋、轡を締める紐と眼を覆う
サングラス型の器具が耳から後頭部へと廻っている。
サングラス型と書いたが、レンズ入りの眼鏡でなはく、
冬山などで使われる風防を兼ねた長い一枚の色板で両眼を覆う方式の眼鏡である。
その眼鏡が黒色に塗り潰してあるのだ。
檻内の動物たちは、自身では見ることの出来ない、折り畳まれた骨の疼きを感じながら荒々しく息を吐き、
黒髪を振り乱し、戻らない視覚の怯えに身悶えている。
シューーーッ………シューーーッ
ドアの開閉音のような音がした。
女たちの呻き声の中から、人がこちらに近ずいてくる音がする。
常軌を逸した状況に動転していた香織の頭脳が、新たな事態に対し再び稼動し始めた。
“ 誰か来る…
檻の中へ監禁されてしまった。
一体誰が?… どうしてわたしが?…
もう此処から逃げることは出来ないの?…
これからどうなるの?…
誰か…… だれかたすけてッ!!! ”
取り留めのないことが脳裏を駆け巡っていくうちにも、
足音は着実に香織のもとへと近つずいて来る。
そして、香織の閉じ込められている檻の前で足音は止まった。
香織は緊張のために乾ききった咽喉へゴクリと唾を送りこんだ。
折り曲げられた全裸の肉体が恐怖に縮む。
パシッ!!
いきなり右の乳房を衝かれた。
突然の刺撃に香織の体はビクンと震えたが
恐怖に支配されている香織には痛みを感じる余裕さえも無かった。
男の話し声がする。
知らない言葉が飛び交い、何かの会話をしているようだった。
一体何をしゃべっているのか?
声の主は二人の黒人だった。
一人がもう一人に話しかけている。 英語のようだ。 しかし訛りがひどい。
「 コレナンカドウダ? ワカイシ ニクズキモイイ
コイツワ イイ メス ニナルゼ 」
そう言うとその黒人は、香織の入っている檻に手をかけ、格子の上部を横に引いた。
すると格子の中央の一部に、ぽっかりと丸いくぐり穴があけられた。
黒人は手を檻の中に差し入れて香織の整った髪を掴むと、そのままグイッと引っ張り上げた。
「 うッ! 」
猿轡の下から放たれた美少女の悲鳴にもかまうことなく顔全体を格子の外へ出してしまうと扉を閉める。
円が乙女のほっそりとした首に嵌ったところで留め金をかけた。
18歳の美少女は、晒首のように檻の上に顔を載せて静止した。
「 センセイサマノ カオヲ オガマセテヤロウ 」
黒人は、サングラスの上のつまみを挟んですっと引き開けた。
黒いガラスは引戸になっていて、その下に素透しのガラスが嵌っているのだ。
ガラスは細いフレームで縁取られているだけなので美貌は損われずに表出する。
主人の都合に依って、犠牲者の視界を開けたり閉じたり出来るように作った器具なのだ。
香織は突然、射しこんで来た強い光りに眼が眩んだ。ぱちぱちと二、三度まばたいてから
「 あッ!! 」
と驚嘆の声を挙げる。
耳に入ってきた粗暴な口ぶりの会話から少しは予期していたことではあったが
乙女はやはり声を発っせずにいられなかった。
二人の黒人の大男が檻の正面に仁王立ちし、無遠慮な凝視の視線を自分の乳白色の全身へ注いでいたからだ。
カッと羞恥がのぼり、穴をみつけたい屈辱が全身を駆け巡った。
俯向きがちになった黒髪を掴まれて、ぐいと正視させられる。
黒人たちは、二人とも白い半袖のツナギを着ていて、胸元にはそれぞれ違うアラビア数字が印刷されている。
腕を組んだ黒人のほうの右手には、握り柄の先に、
何やら萎んだペニスのような皺々の物体が取り付けられた奇妙な道具が握られていた。
これが一体何で出来ていて、そして何に対して、どのように使われるかなど、
純真無垢な18歳の乙女には想像すら及ばぬであろう。
檻の前で薄ら笑いを浮かべている黒人たちは、そのテカテカと脂ぎった顔でじっくりと自分を見下している。
香織は、ぎりりと唇を噛むと瞼を床に落とした。
まるで動物園の獣のように檻に入れられている自分。
それも全身素っ裸というあられもない姿で、秘していた胸の膨らみも腰の姿も臍下の茂みもすっかり曝け出して・・・。
黒人たちのまるで獲物を愛でるかのような物狂わしそうなあの眼、垂涎せんばかりに舐めずっている部厚いあの唇、
それらすべてが香織にとっては身慄いが出る程嫌悪すべきものであった。
それなのに、まざまざと顔前に置かれて外らす術もない。
自分の無垢な全身の隅々まで貫通しているあの眼から一寸たりとも隠れる術はないのだ。
“ ああ駄目、もう私は逃れられない。
あっ、私の愛しんで来た肌は、この純潔は
こんな薄汚い檻で動物並に処分されるのか………ああ……… ”
香織の心に茫漠たる絶望が吹き通った。
美囚は首が伸びて、折り曲った筋骨の痛みが多少緩んだ気持だったが、
首で動きを停められてみると、かえって中腰になっている筋肉が強く腰部で疼き始めた。
形よい脚を擦り合せ、臀部をずらし背をのばそうとする。
そうして身じろぎする豊麗な肉体は、檻内で奇妙な曲線を描いて芸をする【動物】として観覧者を楽しませている。
室内ではヒーターが稼動していた。
しかし、それは黒人たちが、半袖の薄いツナギ1枚という衣服を纏って、
諸々の仕事をするのに適当な温度程度のものであって、
決して生命の危機を感じさせるほどの異常な温度ではなかった、
では、先程から香織の全身を苦しめている血の湧き立つ様なこの灼熱地獄は一体何なのか?
なぜ目の前の黒人たちは平然としていられるのか?
開けた視界から辺りを見渡すと、すぐ両隣の檻の中でも自分同様素っ裸に剥かれたうら若い美女たちが
窮屈そうに身悶え、猿轡に遮られながらもその下から途切れ途切れ微かに
「 …ァ…ッ…ィ… 」
と漏らしているのが聞こえた。
しかし、暑がる割りにはその全裸の肉体からは体のどこからも汗の雫一つ見受けられないのであった。
それを見て香織はハッと気付いた。
自分も汗をかいていない。 こんなに暑いのにどうして汗が出てこないのか?
乙女はくねりと身をくねらせながら、自身を襲っている不可思議な現象に新たな恐怖を覚えた。
“ いったい なにをされたの? ”
全裸の美少女が自身の肉体の変化に驚き、不安と恐怖に駆られていると
その様子を見ていた黒人の一人が、その謎の暑さの正体の一端を香織にカタコトの日本語で教えだした。
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