【ヤプー】〜限り無く絶望に近い幸福〜【外伝】
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沼 正三氏の著作「家畜人ヤプー」の世界観を基に、
自分好みの場面を書いてみました。
沼正二さん、すばらしい筆力ですね。そのうち♂の靴具畜やあまり日の当たらない
足裏蒲団でこってりとした仕上がりの作品を書いてください。女主人の履く靴との
結婚式や隷属式のようなものを入れてくれると嬉しいです。消耗品としての
ヤプーに憧れる者です。
>>84
新年明けまして、おめでとう御座います。
>>85
靴具畜は、当初から書く対象の一つです。
足裏蒲団につきましては、対象外ですが考慮します。 沼さま
85です。ありがとうございます。正座してお待ち申しております。
駅の階段で、勝ち誇るようにブーツの底を打ちつけて歩いている
女性や、夏場けたたましくミュールの音を響かせている若い娘、
何気なく足を組んで靴をゆらゆらさせている娘を見ると、足裏蒲団
になってみたいと思ってしまうんです。
女性の所有物である履物よりはるかに価値の低い卑小な消耗品として
精一杯自分の主人である靴のために悩み、生きる姿を自分に重ねたいと
願います。
いままでの香織の絶望と、空間の描き方のディテールのすばらしさに
感激しています。香織以上の絶望と恥辱(裏返せば至福)を与えてく
ださい。
どうぞよろしくお願いします! >>86
あの〜。
ヤプムも出て来るんでしょうか? 足裏蒲団、沼さまの興を殺がないよう、あれこれと差し出がましい注文は控
えたいと思います。
ただ…、それまで生きた矮人ヤプーの生の重みや経験などより、その日女主人
の靴底にできた一筋の瑕や汚れの方がはるかに重大な事実であるような、また、
流麗なラインを誇るヒールにわずかの瑕が生じるのを避けるためなら自らの
顔面に鉈を打ち込まれるのをさえ厭わず、ヒール底がささくれるのであれば
自らの頭部が石榴のように割れてもなお平安を得られるような世界観を実現
していただければと願います。崇拝するお方様の靴底の突起や凹凸、刻印さ
れた文字は、自分にとっては天界の文様で星座に匹敵するのです。足裏の
数秒間のそれも気まぐれな快楽の維持のためならば、悶絶死とて福音となるの
は間違いがありません。じっくりとその時を待たせてもらいますね。
毎夜、女主人に贈られた靴の付属品として共に従った十数人の矮人ヤプーの
一人として奔放な振る舞いを畏れながらも献身する悦びに浸っています。
「邪蛮」にあっては、香織様のような方に対しても同胞たちは同じような夢
を抱くでしょうね。 沼 正二 ◆AmWxoCKUfkへ希望書いてる人はヤプー願望スレの方が向いている気がしてきた・・・ 四肢を切断された生きた靴の中敷き。地面に靴が接触するときのショックを
やわらげたり足裏の汗や脂、臭いを吸い取ったりする。足裏に吸い付くよう
で踏み心地は最高。イース貴族の靴に入っている。寿命は1年。
でも、靴自体がダメになったら靴に合わせて採寸されている足裏蒲団たちも
一緒に廃棄されちゃうんだろな。 新作ができた様です
ttp://www1u.kagoya.net/~bobcat/DML/7S/7s1.htm >>96
本年の4月以降になると思われます。
>>97
大変、興味深い作品ですね。
私も、いつの日か自分の書いた文章を、
漫画かCGによって画像に変換してみたいものです。
作者タン、待ってます。
クリスさま萌えです。
というわけで100getです。 >>98
4月からなどとおっしゃらず、
少しでもいいので(できれば第7話のおわりまで)
早く投下してくらハイ。
お願いチマツ。
こんな萌えまくりな家畜小説は初めてデツ。 改めて、投下します。
第七話
【 媚肉の河 】
ゴォ――――――――――――――――――――――――――
鈍い駆動音が壁越しに聞こえてくる薄暗く窮屈な直方体の空間の中で、
美貌の乙女は今にも途切れそうな華細い呼吸を繰り返していた。
美しいその顔からは、生気が消え去り、露わとなった全裸の肉体は
呼吸による腹部の僅かな収膨を除いてはピクリとも動かない。
それはまさしく、生ける屍というべき有様であった。
香織は定まり難い意識のもとで、ただ呆然と漆黒の壁面をその瞳に映しつつ、
あの言語に絶する地獄のような肉体検査と
最後に大男が言い放った捨て台詞の事を思い返していた。
漆黒の大男達によって口内に注入管をねじ込まれ、
そこから、白い液体と粘着質の固体を流し込まれ、胃袋の容量と形状、
及び咽頭の嚥下力を強制的に計測された香織は、
最後に黒人の鉄拳を打ち込まれて胃の内容物を全て吐き出させられた後、
ようやく拘束台から開放された。
疲労困憊の香織は、自ら動く事も間々ならず台の上でグッタリとしていたが
男達はそんな衰弱しきった美少女に休む間も与えず、
香織の両手・両足を乱暴に掴み上げ、そのまま部屋の壁面にまで運んだ。
そこで黒人は、壁面のボタンを操作して壁面を開口させ、
その奥に設けられていた犬小屋程度の大きさの四角い空間を出現させると、
その中に、まるでゴミ捨て場にガラクタでも捨てるかのように
無抵抗な香織の全裸体を強引に押し込んだのだ。
そして、黒人達が皮肉に満ち満ちた薄ら笑いを浮かべながら
「 オイ ヤプー
オメーノ セイノウ テストモ イマノデ シマイダ
アトワ ヤプーナリー ニ ツクマデ オリノ ナカデ オネンネシテナ 」
「 へへッ イヨイヨ ジャバン トモ オサラバダナ グフフフフッ 」
と言った後、壁にあったボタンを操作した。
すると、香織が押し込められたその空間は、ゆっくりと扉を閉じ、
そのままエレベーターのようにゆっくりと下層へと潜って行ったのだ。
「 ・‥… じゃ・・ばん…・・
いったい… 何のこと・…・?
あたしは・・… どこへ連れて行かれるの・・…・? 」
香織が答えの見えぬ疑問に苛まれていると、突如エレベーターが下降を停止した。
そして、その直後、エレベーターの扉が開かれ、
扉の向こうから強烈な光の線が香織の網膜に照射された。
直前まで薄暗い部屋の中に置かれていた為、急な光に一時視界を奪われた香織であったが、
やがて瞳が絞られ、外界の環境に適応してくるのとともに、
乙女は、その眼前に広がる世界を、徐々に認識し始めた。 「 サッサト ススメッ! 」
「 グズグズ スルナッ! ハヤク ハイレッ! 」
視界に入って来たのは行進であった。 全身を拘束具で戒められた全裸に首輪の人間達。
それらが、屈強な黒人の大男達に、あの奇怪な肉の棒で小突かれながら
複数の列に分けられながら行進させられている。
その列の殆どは、香織と同じ若い女性達の全裸体によって構成されていたが、
若干だが若い全裸の男性達による行進も見られる。 彼等が行進させられている空間は、全面が灰褐色で、
床から天井までの高さが50〜60メートル。
香織の出てきた壁面から反対側の壁面までの距離が
500〜600メートルを裕に超えるような広大な空間で、
その空間内を、長大な支柱が無数に通っており、
左右の両端は遠すぎて見通すことさえも出来なかった。
未だかつて眼にした事の無い巨大な構造物と、
その中で行われている超然とした光景に圧倒され、
香織が、心身の疲労を忘れ、ハッと息を飲み込んだ時、
「 デロッ!!」
という大男の怒声が聴覚を打ち、
空かさず両腕を掴まれて強引にエレベーターか引き出された。
エレベーターの出口には、その出口と同じ幅で、
長さ5〜6メートル程の滑り台が連結されており、
小屋から引きずり出された香織は、
そのまま滑り台の上をスルスルと滑り落ちて行き、
幅約2メートル程の細い通路に到着した。 「 いたッ… 」
着地の際に頭を軽く打ってしまった香織は、
片手で後頭部を庇いながら、もう片方の手を床に付け、
仰向けに寝転んでいる上体を起こして無意識に辺りを見渡し、
それを、視た。
・
・
・
周囲に広がっている光景は、またも乙女の心を仰天させ、
新鮮なる肉体の隅々までをも、一瞬にして硬直せしめた。
「 ……なんなの…… …これ… 」
・
・
・
香織の眼に入ってきたもの……
それは、「列」であった。 果てしなく続いている細く長い黒色の通路。
その上に、香織同様、首輪一つ以外は皆無という
素っ裸の姿のままで、仰向け、横臥、うつ伏せ、四つん這い等、
様々な体勢で、ほぼ等間隔に置かれた、
何十、否、何百という数の全裸の人間達によって作り出されている
長大なる一本の肉の隊列であった。
その肉列の構成材料とされている人間達は、
一目するとその殆どが、香織と同じ十代後半から、
或いは二十代前半と見受けられる、うら若い女性達で、
その何れもが艶やかな肌と、健康的で均整のとれた肉体美を有しており、
もし街中で擦れ違ったとするならば、性の男女を問わずに、思わず
ハッ、と振り返らずにはいられないような粒揃いの美女達ばかりであった。
しかし、その乙女達の可憐な美顔のどれ一つとして笑顔の花が咲いているものは無く、
哀れにもその表情は、悲しみ、怒り、憎しみ、不安、といった暗黒の思念のそれであり、
さらには、深々たる絶望に飲み込まれてしまったために、
表情どころか感情そのものが消え失せたかの様に、
只、漫然と途方に暮れている者の姿も見られた。
そして、自分自身もまたこの肉列の一部とされてしまっている香織は、
この異常な光景に眼と心を奪われて気付くのがやや遅れたが、
よく見ればこの通路、 動いているのだ。
音も無く静かだが、小走り程度の速さで動いているのである。 眼を点にし、生唾をゴクリと一飲みした後、
香織は、改めて、また辺りを見回した。
進行方向から見て左側は、灰褐色で、
高さ約6メートル程の垂直な壁が途切れることなく延々と聳え建っていた。
そして、右側は、仰角約45度、長さ約5メートル程の、銀色に輝く斜面になっており、
その先に、先程、香織が通過してきた滑り台と同じものが約30メートル毎に設置されていて、
さらに、その先には、やはり香織が出てきたものと同様の四角く小さな搬出口が存在していた。
そして、その扉が開く度に、中から丸裸に剥かれた人間が出現し、
出口の両脇で待ち構えていた二人の黒人達が、
「それ」を乱暴に掴み取っては滑り台に引っ張り出し、
この無機質な渓谷の下を流れる「人肉の川」へと、次々と流し落とし、
滑り落とされた人体は、銀色の斜面を下って、この移動通路の上を流されていく……
そんな光景が、この長大な空間のなかで、
凡そ香織の眼の届き得る範囲の前方から後方までの総てにおいて、
延々と、無数に、果てし無く展開され続けているのだ。 何という異世界。
これが果たして現実のものなのか?
こんなことが現実に起こり得るのか?
これは夢か幻、空想の世界の産物ではないのか?
…これは幻。
きっと自分は今、悪い夢を見ているんだ。
こんなことが本当に起こる筈が無い。
いや、起こってはいけない。
そう、これは、夢……悪夢なんだ………
香織は、自分は、只、悪夢に魘されているだけなのだと、
これは、現実では無い、事実では無いのだと思った。
いや、そう思いたかったのだ。
きっとそうだと、信じたかったのだ。
これが、揺るぎようの無い現実であるこということを、
どうしても認めたくなかったのだ。 だが、しかし、
今、この通路の上を風を切って流され続けて得ているこの感触は、
間違うこと無き現実感覚のそれであり、
あの密室と檻の中で、
厳しく凶悪な黒人達から放たれた
あの嘲笑、罵声、怒声。
云われ無く骨身に受けた
あの電撃、疾走、屈曲、鉄拳。
そんな拷問によって味合わされた
あの苦悶、苦痛、苦渋といった、乙女の心を魂芯より悄然たらしめる巨大な悪感……
その何れもが、圧倒的な現実感と実体的重みを伴って、
無垢な乙女の心身に加えられたのであり、
それは、誰よりも香織自身が、はっきりと思い知らされ、
その意識に、深々と刻み込まされているのである。
故に今、彼女の眼前に広がっている、この光景も、
此れまでに彼女が受けてきた、あの経験も、
そして、彼女がこれからを過ごしていくことになる、その世界も、
まさしく、抗いようの無い、厳然たる 【現実】 そのものなのである。
“ ………どうして?………
どうしてなの?………
どうしてあたしがこんなめにあわなくちゃいけないの?………
どうして?………
……どうしてよ………… ”
清廉潔白にして流麗無比たる美貌の乙女は、
この世に生を受けてからの十八年余の歳月のなかで、
初めて己が身に降りかかった自身の運命を呪った。
悲愴なる美少女は、その白く柔らかな諸手で漆黒の硬地を掴み、
しなやかな背を丸めてガクリと肩を落とし、
黒光りする豊かな頭髪を床に垂らしながら美顔を俯かせ、
鮮やかな紅唇を、その白亜の麗歯でグッと噛み締めて、
無言のうちに、只、涙し、その魅面を悲哀と絶望に濡らした。
そして、そのままのうちに沈鬱な時間が暫しの間流れた頃……… シュウィ―――ンッ…キャ――ッ!…シュウィ―――ンッ
・
・
シュウィ―――ンッ……イヤ―ッ!!…シュウィ―――ンッ
悲運の乙女が顔を伏して悲しみに咽んでいると、
何やら機会の駆動音のような不可解な音に挟まれながら、
女達の泣き叫ぶ声が、香織の前後から聞こえだしてきた。
そして、それまで一様に疲労と絶望に打ちひしがれ、
沈み込んでいた香織の周囲が、にわかにざわつき始めたのだ。
何事か、と香織は顔を上げた。
前方を見ると、香織と同様に素っ裸の女性達が無数に流されていた。
悲しむべき光景ではあるが先程までと特に変化が無いので
香織が目線を他に移そうとしたその時。
乙女は目撃した。
そして、その事態に驚愕し、
涙に潤み、充血したその両眼を大きく見開いた。 進行方向の左側に聳え立ち続いている灰褐色の壁。
その壁面の、床からの高さが約1.5メートル、幅約2メートルの部分が、
突如壁面の奥に向かって引き上げられたのだ。
するとその開口部から、ポッカリと口を開けた真っ暗な空間が出現し、
その開口部の、最も近くを流されていた女性を、通路の端へとシュルシュルと引き寄せ、
そのままその暗闇の内部へと飲み込んでしまい、その直後、また瞬時に扉を閉じたのだ。
一体どういう事なのか?
その原理・構造は、香織達には全くの不明だったが、
とにかく、壁面の其処彼処が突如開口し、
辺りの人間を一人ずつ、次々と飲み込んでしまっているのだ。
香織は咄嗟に立ち上がった。
此れまでの肉体酷使の為に、両脚はピクピクと震え、
全身の筋肉細胞が悲鳴を上げていたが、
逃げなくては、という無意識の直感が働き、
香織は疲弊した体に鞭を打って横を向き、銀色に輝く斜面に向かって身を屈めた。
”あそこに飛び付ければ……”
香織は胸の内でそう思った。
しかし、それと同時に、「あの時」の映像が彼女の脳裏を駆け抜けた
その残像が頭から離れず、其処へ飛び移るのをどうしても躊躇してしまうのだった。
香織が自らの恐怖心と相対して時が過ぎていく間にも、
周りでは、通路の上を逃げ惑うか、
または、観念したようにジッとしたまま動かない他の女性達が、
一人、また一人と暗闇の奥へと浚われている。
それを横目で見ていると、ついに香織の目前で壁面が開口し、その暗部を現した。
すると、香織の足と接触している部分だけが、それ以外の場所とは異なる動きを開始し、
香織の体を開口部へと引き寄せ始めたのだ。 このままでは飲み込まれる。
香織は、ついに意を決し、最後の力を振り絞って勢い良く足を伸ばし、
銀色に輝く斜面に向かって大きく跳躍した。
全裸の麗体が美しい放物線を描きながら空を舞った。
そして、そのしなやかな曲線美が斜面に映し出され、
その肉体美の持ち主に、己が姿を認識させたとき、
また、「あの時」の情景が乙女の脳内を走駆し、直後に美体は着地した。 その途端。
「 アァーーーーーーーッ!!!!!! 」
麗しの魅肉は痛撃に縮み上がり、もんどりを打って斜面を転げ落ちた。
電流は、やはり此処にも流されていたのだ。
” さっきは…流れてなかったのに…… ”
と、哀れなる乙女は、激痛に悶えつつ、後悔と怨嗟の念を心中で澱ませながら
そのまま暗黒の内部に飲み込まれてゆき、無情にも扉は閉ざされたのだった……
つつ゛く
次回、第八話を【 昇天 神世界へ 】とさせて頂きます。 作者タン。
ありがとうございマツ。
次のお話待ってマツ。
あと、もう少し漢字を簡単にしてくれるともっと嬉しいでツ。
いや、これぐらいの文章とそれに伴う漢字は憶えよう。
雰囲気が損なわれる。
第八話
【 昇天
神世界へ 】
「 ……アッ!…ィッ…たい…… 」
未だ覚めやらぬ通電の疼痛に苦しみながら、
香織は真っ暗闇の狭い通路の中を流され続けていた。
通路内部は、開口部よりもさらに小さくなっており、
縦・横、共に1メートル程しかないため、立ち上がることは適わず、
香織は頭を進行方向に向けて仰向けになりながら、ぐったりとしていた。
もはや動く気にもなれない。
香織は、只、呆然と、見えない天井を眺めながら、
無機質な機械のなされるが儘にされ、真っ暗闇の中を、
時には右へ、或いは、左へ、と四角い通路内を、行き先も解らぬままに運ばれ続けていく。
そんな行程を何度か繰り返して数分が経過した時、
ドサッ!
香織は、又も頭部を地面に打ち付けられた。
その鈍痛によって、朦朧としていた香織の意識は呼び戻された。
香織は痛みに顔を顰め、後頭部を擦りながら上体を起こした。
ここも相変わらず完全な暗闇で、視覚は奪われている儘なのだが、
彼女の三半規管や触覚は、自身が今、静止している可能性を示唆していた。
どうやら、或る空間へと放り出されたようである。
現在の状況を知ろうと、香織は痛む腕を伸ばして辺りをまさぐった。
すると不意に、柔らかで、すべすべとした、心地良い肌触りの物体に彼女の指先が触れた。
その感触は、まさに人の肌。
それも、弾力と張りの有る、瑞々しく若々しい女肉だけが持ち得る感触のそれであった。
肌触りだけでは無い。
耳を澄ませば、暗闇の空間内の其処彼処から、
可憐な乙女たちの、深い悲哀が染み込んだような華細い啜り泣きの声が聞こえてくる。
此処は、やはり通路上ではなく、どこかの室内のようだ。
いや、室内というよりも倉庫の中というべきか。
音の反響や、泣いている女性達の数から類推するとかなりの広さのようだ。
何れにしても、相当な数の女性達がこの暗室の中に閉じ込められていることは確かである。
香織が、さらに状況を把握しようと四つん這いになり、手探りしながら進みだした時、
彼女の背後でドサッという音が鳴り、同時に香織の足元に他の誰かの足が当たった。
恐らく、香織が先程放り出されて来たのと同じ所から、同じように此処へ運ばれてきた来た人のものであろう。
香織は向きを変え、その顔も見えない相手に近付き、
「 大丈夫ですか?… 痛くないですか?… 」
と、地に伏せ、不安そうに咽び泣いているその人を優しく起こし、後ろからそっと抱きすくめた。
「 …あッ… うッ… あッ… …ありがッ… …とう… んッ… 」
その女性は、香織に対し、嗚咽に言葉を詰まらせながらも、
精一杯の感謝の言葉を述べ、廻された香織の両腕を、ギュッと握り締めていた。
香織はその女性に、胸の奥底がジンと疼く様な感覚を覚えていた。
自分よりも弱い物への憐憫というか、慈愛というべきか。
無論、香織自身もまた、この腕の中の女性や、
室内に閉じ込められている他の女性達と同じ境遇である事に変わりは無い。
しかし、それでも尚、このように不安に怯えている他者の存在を知ったからには、
手を差し伸べずには居られないのだ。
自分一人では、涙を流し、不安と絶望に押し潰される事があろうとも、
他者に対しては殆ど無意識的に、暖かく接し、我が身に変えても支えようとしてしまうのだ。
清らかなる美少女香織の美しさは、その類稀なる端麗な容姿や、洗練された品性もさることながら、
何より正しく、この純真無比にして博愛無尽なる、この美しき心によって成り立っているのである。
それを思えば、
かくの如く善良なるこの乙女が、何故あのように残酷な仕打ちばかりを受けねばならないのか?
現実とは、運命とは、神とは、どれほどにこの乙女に絶望の苦しみを味合わせ続けるつもりなであろうかのか?
それとも、この限り無く続くかのように思われる絶望の果てに、この乙女にとっての真の【幸福】が待っているのであろうか?
その答えは、未だ果て無く遠い。
香織は、己が胸の内で不安に震えるその女性を抱きしめながら後退りし、
部屋の四隅の一角と思われる場所まで移動した。
右肩に、また別の誰かの背中が当り、近くからは先程よりも大きな泣き声がより多く聞こえてくる。
暗黒の中、皆で寄り集まり、互いの存在を確かめ合うことで、僅かでも心の安定を得ようとしているのだろう。
そんな、華弱い乙女達が暗黒の中で恐怖と不安に慄き続けている間にも、
あの出口からは、間隔を置いて、一人、また一人と、時間の経過と共に、
新たな犠牲者たちが、次々と追加され続けている。
それを音で感じながら香織は、或る考えに思い至った。
” ……みんな、ここに集められているんだは……
……選別されて…… …仕分けされて……
……この……… ………商品倉庫に……… ”
極度の疲労があるにも拘らず、明晰なる才女香織の頭脳は、
此れ迄の一連の過程から、この暗室の正体が一体何なのかを、
そして、何故、此処に閉じ込められているのかを、謎めく漆黒の水底から見つけ出していた。
あの、地獄の拷問の様な数々の所業が、只、嗜虐を目的としたものでは無く、
寧ろ、其々の人間達の商品価値を見極める為の「選別」の作業であったことを、
且つ又、先程までの、移動通路から此処までの行程に於いては、
あの動く床は、選別された商品を運ぶためのベルトコンベアーのようなものであり、
その上を運ばれて、右へ、左へと動かされていった過程は、
貨物集配センターに於ける出荷商品の「仕分け」作業のそれであることを。
だとすれば、今自分達が閉じ込められている此の暗室は、
選別され、仕分けされた商品が目的地へと出荷されるまでの間、
商品を保管しておくための、「商品倉庫」なのだということを。
そして、才女は、その漲る知性を動員して、更なる展開を予測した。
” ……ここが、その為の倉庫なら
此処が一杯になるか、または、ある程度の時間が経ったら…… ”
香織の的確な推理が、この先の展開にまで至ろうとしていたまさにその時。
ガコンッ!!!
グゥォヲア――――――――――――――――――――――――――
香織達の閉じ込められている暗室が、突如、巨大な轟音を立て始めた。
そして、内臓を下へ引っ張られているかの様なこの感覚…
間違い無くこの暗室は動いていた。
部屋そのものが、轟音をたてつつ、上へと向かって上昇しているのだ。
女達は、突然の事態に動転し、或る者は悲鳴を上げ、また在る者は泣きじゃくり、
皆、恐れと不安に全身を震えさせながら身を寄せ合って苦しんでいた。
香織の腕の中で震えていた女性も、その震えを一層強め、
握っていた香織の腕を、さらに強く握り締めている。
香織もまた内心は恐怖に竦んでいた。
しかし、それを表に出すまいと気丈に振る舞い、
握り締められた両腕で、胸の内の女性を、より強く抱き寄せた…
暗室内で恐怖に震えていた彼女達にとっては、無限にも等しく感じられた十数秒が経過すると、
やがて部屋の上昇速度が徐々に低下してゆき、それと共に漆黒に満たされていた室内に、
強烈な光の線が、部屋の上方から入り込み始め、ついにその全てが光に包まれた。
囚われの女達は、突如浴びせられた強光に網膜を弄られ、
眩しさから逃れようと、皆一様に顔を両腕で覆い隠し、頭を下に向けて身を竦る。
やがて、部屋の上昇が完全に停止した。
女達は、徐々に、恐る恐る、新たな光景を、己が瞳に映していく。
香織もまた、ゆっくりと、その両眼を見開いた。
香織の予測は当たっていた。
香織達が運ばれてきた場所。
其処は、広大な平面の上であった。
見渡す限り続いていく灰褐色の床。
その床から、、前後・左右に約100メートル程の間隔で配列された、
一辺約15メートル、長さ約50〜60メートル程もある長大な直方体の柱が
何十本、何百本と天井に向かって伸びており、
広大な構造体の左右両壁では、壁面に設置された滑り台の上を、
全裸の人間達が流し落とされるという光景が、
相変わらず繰り返され続けている。
以前に見覚えの有る場景である。
そう、此処は、あの時、香織が壁面内の小屋から引っ張り出されるときに、
彼女の眼に飛び込んできていたあの場所だったのだ。
壮然と広がる世界を観察した後、香織は、間近を見回した。
暗闇に視界を奪われていた時から、泣き暮れる女性達の声や雰囲気から、
相当な人数が一緒に閉じ込められているのであろうと考えていた香織であったが、
光の下でその事態を確認してみると、その数の多さに乙女は、改めて驚かされた。
彼女達が入れられていた空間は、その周囲が、幅約10メートル、高さ約2メートル程の大きさの、
硝子の様な透明な素材で出来た四枚の透明版によって四方を囲われており、
その上に厚さ10センチ程度の真っ黒な金属板を天井として被ることで形作られていたのだが、
その100平米程の空間内に、裕に100人はいるだろかと思われる
沢山の女性達が詰め込まれ、精神的恐怖と、物理的圧迫に心身を苦しめられていたのだ。
“ 一体どれだけの人が捕まってしまっているの?……… ”
と、香織は、驚愕と悲哀の混濁した思いに、改めてその無垢な心を蝕まれた。
そして、新たに込み上げて来た不義への怒りと、
今後に待ち受けているやも知れぬ苦難への不安が頭を擡げた時、
突如、ブ―――ンッという小さな音とともに、香織が背を預けていた透明壁の一枚が、
ゆっくりと沈降を開始し、やがて床下に完全に収納された。
100余名の女達を閉じ込めていた空間の一面が、下げ払われたのだ。
そして、疑心暗鬼に捕らわれている乙女達が、次は一体何をされるのかと怯え震えていると、
下げ払われた一面の、丁度正面に位置していた長大な柱に設けられていた大きな扉が開き、
中から、十数人の黒い大男達が、香織達が寄り集まっている空間に向かって、駆け足で近付いて来たのだ。
全裸の女郡が、より深い沈鬱のなかへと沈んでいく。
しかし、もう誰も逃げ出そうとする者はいなかった。
それは、適わぬ事なのだと、既に、その心身を以って思い知らされてきた彼女達の思考は、
無駄な抵抗をして更なる苦痛を味合わされるよりも、されるが儘にされよう。
それしか無いのだという思いに支配されていたのだ。
やがて、乙女の集積地にやって来た黒人達は、囲いの中に進入し、
そのまま、近くで経たり込んでいた女性達の腕や足をを乱暴に掴み上げ、片っ端から引き摺り出して行った。
そして、取り押さえた女性達の全裸体を、付近に設置されていた床下収納庫から取り出した拘束具によって、
その肉体を次々と締め上げていったのだ。
「 ……あたしたち……どうなっちゃうの……?」
絶望に打ちひしがれている可憐な乙女達が、一人、また一人と、鎖と枷の餌食になっていくなか、
香織の腕の中で怯え続けていたその人が声を震わせながら、香織に問うた。
暗中では判らなかったが、その子は、18歳の香織よりも年下と思われる、あどけない美少女であった。
「 …大丈夫ですよ。
きっと助けが来ます。
ですから、今は大人しくしていましょう。ね。 」
香織は、そのいたいけな少女に優しく微笑みながらそう言った。
無論そんな確証は何処にも無かった。
しかし、彼女を僅かでも安心させる為に
また、自分自身にそう言い聞かせ、崩れ落ちそうな精神を何とか保とうと、
気丈なる乙女は諭し、微笑んだのだ。
そして、震える少女を今一度強く抱きしめ直そうとした時。
「 アッッ!… 」
大男の太黒い一本の豪腕が、香織の乳白色で華奢な右腕を掴み取り、
苦声を漏らす全裸の麗体を、そのまま囲いの外へと引っ張り出していった……
「 タテッ!!! 」
力無く、無抵抗に引き出されてきた受難の乙女の頭上から、邪悪な大男の怒声が撃ち付けられる。
「 …ウッ… …クッ…… 」
香織は、痛め尽くされた美体に鈍痛を波打たせながら、歯を食い縛りつつ、よろめきながら立ち上がる。
すると、空かさず背後に寄って来た黒人が、香織の両腕を強引に後方に回し上げ、
手に持っていた、厳しく黒光りする枷を、その繊細な両手首に嵌め込んだ。
「 イッ!… …ぃたい…… 」
香織は、弱々しく、そう漏らした。
しかし、そんな乙女の苦悶など意に返さぬまま、大男は手首に続いて足首にも枷を嵌め込み、
さらに、その巨大な手で香織の華奢な下顎を掴み取って乙女の可憐な口唇を強引に抉じ開けると、
その桃色の口腔内へ猿轡の金属球を無理矢理に押し込んで左右の鎖部を後頭で連結し、乙女の発語を封印した。
香織は、その間、自分の周りで、自分と同様に、
黒い大男達によって身体の自由を奪われていく受難の美女達の哀れな姿を、やり切れぬ悲痛な思いで見つめていた。
しかし、その捕らわれの女体郡の哀態を映していた香織の瞳も、
直ぐに被せられてきた眼帯によって暗黒の虜囚となり、乙女は、またも視覚を剥奪された……
「 コイッ!!」
と、大男が怒鳴り、香織の首輪に繋げられた鎖をギュッと引っ張った。
縛められた盲目の乙女は、大男に引っ張られる儘に、その美顔を前に突き出しながら、見えぬ前方を歩かされていく……
「 ナラベッ!!」
と、香織は再び怒鳴りつけられ、その場で静止させられた。
その時、後手に拘束された為に、不自然に突き出させられた香織の乳房の先端部が、柔らかな肉の塊に接触した。
直前からは女の咽び泣く声も聞こえている。
間も無くして、香織の直後で、また大男の怒鳴り声が響き、今度は拘束された香織の両手に、弾力に富んだ物体が接触した。
どうやら、囲いから引き出され、全身を拘束されて引っ立てられて来た女達が、順場に並べ立たされて列を作らされているようである。
「 あの時に見たものと同じだわ…… 」
香織は、この空間に放出される時に眼に入って来た光景を思い浮かべながら、この先の展開を安じていた…… と、その時。
「 マエエ――ッ ススメッ!!! 」
という黒人の大声が響き、直後、香織の臀部に太い棒の様な物が突き当てられた。
香織は尻を突かれて体勢を崩し、そのままヨロヨロと力無く歩かされ始めた。
香織の前後でも、同じく全裸虜囚に貶められた美貌の乙女達が、
彼女達を周囲から監督している漆黒の巨人達の、手荒な指図の為されるが儘に小突かれ、怒鳴られながら、
若き美体に繋げられた鎖をジャラジャラと鳴らしつつ、絶望に澱みながら歩を進まされていく………
「 スワレ――――ッ!!! 」
美女達による数分間の全裸行進が行われた後、再び黒人の命令が飛び、乙女達は停止し、その場に腰を下ろした。
香織もまた、言われるが儘に止まり、無言の内に膝を折った。 すると。
「 ハイレッ!!! 」
という大男達の怒声が一斉に響き渡ったかと思うと、
香織は首輪に繋げられた鎖を勢い良く下方に引っ張られ、同時に、その臀部を再び小突かれた。
両手の自由を奪われている香織は、為す術無く上体を床に突っ伏し、そのままの格好で這いずる様に前進させらていく。
そして、前方にあった狭小な空間の中に押し込められ、直後にガチャンという扉が閉まるような音が香織の背後で鳴った。
「 あの時の檻だわ…… 」
閉じ込められた香織は、直ぐに思い出した。
この体勢、この空間、そして、この猛烈な圧迫感。
忘れようと思っても忘れられるものでは無い。
此れは、正しく、この乙女の光り輝く運命が、一転して暗黒に飲み込まれたことを乙女に思い知らせたあの場面と同じではないか。
乙女は、己が人生の悪しき転換点となった、あの忌まわしい情景を思い返し、その心を悲しみに疼かせる。
そして、もう戻らぬやも知れぬあの日常にまで思いが至った時。
ビ―――――――――――――ッ
・
・
・
グゥォヲア――――――――――――――――――――――――――
鈍く、けたたましい警報が鳴り響いた。
そして、間も無く、悪しき運命に翻弄される香織達100余人の全裸虜囚を押し込めた檻が、
ゆっくりと天に向かって運動をを開始したのであった………
・
・
・
それから数分が経過した頃であろうか。 檻の上昇は止まった。
すると今度は、不安に慄き、折り曲げられた美体を震え蠢かす乙女達を封印しているその檻が、
ウィ―――ンという駆動音を鳴らしながら上方から降下して来たクレーンによる移動作業に依って、
あの時と同様に、次々と積み上げられていったのだ。
香織が入れられている檻もまた、同様にクレーンで吊り上げられて宙に浮き、他の檻の上に重ねられた。
やがて、全ての檻の移動が終わった。
クレーンの駆動音が鳴り止んだ空間内を、捕らわれの美囚達から漏れ出す苦しげな息使いと、
暗澹たる悲怨を内包する澱んだ嗚咽が満たしている。
「 また檻に入れられてしまったわ……
それでまたクレーンで積み上げられて……
ということは、また何処かに連れていかれるのかしら?……
彼等、確か“やぷーなりー” とか言っていたわ…
やっぱり外国の何処かなのかしら?…… ……一体……何処へ?…… 」
香織は、黒人達の奇怪な言葉を再び思い出し、我が身に待ち受ける事態について考えを巡らせていた。
他の女性達が、狭い檻の中で身を蹲まらせながら、
只、不安と恐怖に翻弄されるが儘に咽び泣き、その心身を悶えさせている状況のなかにあって、
只、一人、彼女だけが、此れからの経過ついて思考し得えているとい事実は、
正しく、この乙女の内に宿る強靭な精神と、研磨された意志の力の程を示すものと言えよう。
そして、そんな他に類例有り難き玉心玉体の清女が、沈思黙考を続けていたその時。
ドゴンッ!!!
ゴッ ゴッ ゴ ゴ ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
ドグヲォ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
此れ迄のエレベーター等での其れとは、比較に成らぬ程の地響きの様な凄まじい轟音と振動が発生した。
激しく揺れ動く空間の中で、捕らわれの乙女達は、最大限に驚愕して全身を縮みあがらせ、
爆音の中からは、恐怖に泣き喚く女達の悲鳴が、更に一層強く発せられている。
何事か?と、香織は湧き上がる恐怖心を懸命に抑えながら、視覚を奪われた顔を動かし、
使用可能な聴覚に全神経を集中して、事態の把握に努めた。
が、その状況は長くは続かず、その後、間も無くして轟音と振動は沈静に回帰していった。
しかし、それは、彼女達の状況が以前に戻る事を意味してはいなかった。
嵐の様な轟音と激震が過ぎ去った後、彼女達の置かれた空間は、全く異なる新たな状態に移行していた。
当初、香織は、其れを信じる事が出来なかった。
いや、と言うよりも理解する事が出来なかったと言う方がより適切であろう。
「 …なんなの?… …この感覚……
…体が…宙に…浮く感じ…………
いえ、違うわ! 感じがしてるんじゃない…
本当に… ……ほんとに浮いてるんだわ!…
…からだが… …こ、これって… …まさか… ………無重力?!… 」
香織は、未だかつて体験した事の無い無重力の感覚に戸惑いながら、この事態の原因を理解しようとしていた。
が、しかし、
「 ……何?…… …頭が……
……これ… …また… …あの時と… …お…な…じ……… 」
突如、乙女の意識が朦朧とし、身体の感覚が薄れ、そのまま香織は意識を失ってしまったのだった。
・
・
・
香織の直感は間違ってはいなかった。
何故なら香織達が存在している場所、其処は本物の無重力空間。
紺碧の青い地球の遥か上空、高度300キロメートルの宇宙空間を航行する、
漆黒の巨鯨の様な大型宇宙船の格納庫の内部だったのである。
また、宇宙船の後方では、そんな巨船を遥かに上回る途轍も無く巨大な一大構造物が、
その巨体から圧倒的な存在感と威圧感を放ちながら軌道上に浮かんでいる。
一体此れは何なのか?
何れにせよ、香織たち悲運の美囚を収容した黒金の箱舟は、その巨体を陽光に黒光りさせながら、
無限に拡がる漆黒の闇の彼方へと消えて行く。
うら若く美しい乙女達の、夢と希望と光り輝く幸福な前途、その全てを邪悪な闇の内に飲み込みながら……………
つつ゛く
空…
青い空…
一片の白雲も浮かべず、
只、果てし無く続く蒼空の世界…
砂…
茫漠たる砂の海…
天界より放たれた陽光を浴び、
熱波を吹き上げて大気を揺らめかす無尽の熱砂…
風…
乾いた風…
砂塵を巻き上げ、
揺らめく陽炎を吹き抜けていく熱気流の群れ…
此処は何処なのか?…
畏ろしい程に澄み切った天空と、
見渡す限りに延々と広がり続ける大砂漠。
凡そ、生命の息使いなどというものは感じられず、
只、照り付ける熱線と、吹き抜ける熱風のみが存在するだけの場所…
即ち、此処は…死界…
生の輝きも、命の躍動も無く、
只、大気と砂粒と陽光によって構成された死の世界…【無】の極地……
されど…美しい…いや、だからこそ、美しい。
生、在るが故の混沌も、命、在るが故の汚濁もない。
誠の【純粋】に依ってのみ造形された美の世界である。
其の、混じり気の無さ……其の、澱みの無さ……何と美しいことか……
だが、不図して視線を向けた先、
即ち、天頂の彼方依り、強烈な陽光を以って大地を照らす巨大な太陽に眼を凝らすと、
其の、燦然と輝く光の世界の只中に、陽光を受けて輪郭を顕にした、一つの黒い点が発見できる。
あれは雲だろうか?……… ………否、雲に非ず。
背景の無い空中という位置条件と、
強烈な陽光のために正確な大きさの把握は困難だったが、
其の黒点が示す重量感、存在感は、空を漂う白雲の其れでは無い。
ならば一体何であるのか?
敢えて言うならば、其れは、【島】であった。
遥か天空の彼方に位置する、1つの巨大な空中島である。
そして、強光と黒点に眼を奪われて見落としていたが、
さらに気付けば、その空中島の上下に、
其々、一本の細い白線が在る事を確認出来るのである。
其の白線について特筆すべきは、其の長さであった。
黒点の上方に在る白線は、正しく、文字通り、
天の果てまで真っ直ぐに伸び続けており、
其の先端は、遥か壮空の彼方に消えて見通す事は適わず、
もう一方の白線は下方へと伸び続け、無限砂漠の地平線と交わっている。
一体あれは何なのか?……
空に浮かぶ天空の島。
其の空中島の上下から伸びる、長大至極な一筋の白線。
何故、あのような奇怪な構造物が、
何故、この茫漠の世界に存在しているのか?……
何等かの存在理由が在るのだろうか?……
そして、もしも、そんな理由が在るのであれば、
あの内部で、一体何が行われているというのであろうか?………
「 オキロッ!!! 」
バシンッ!!!
雷鳴の様な怒声と鋭い痛みが耳と尻の神経を駆け抜け、香織は覚醒した。
しかし、目覚めて間も無い乙女の意識は、未だ朦朧としている。
「 タテッ!!! 」
そこへ間髪を入れず再び罵声が浴びせられ、
さらに、首輪に繋げられた鎖をグイと引っ張られて無理矢理に起立させられた。
「 ススメッ!!! 」
再度鎖を引っ張られ、乙女は命令の儘に歩かされる。
“ ……ここは…どこ?……
…どのくらい眠らされていたのかしら?…… ”
歩かされながら、
香織は、ぼんやりとした意識で自身の状況を解析し始めた。
突如、意識が薄れてっ其の儘眠ってしまった時には、狭い檻の中に入れられていたが、
今、目覚めると、既に檻からは出され、こうして歩かされている。
そして、もう一つ、視覚も回復していた。
あの時に装着させられていた眼帯は除去されており、
起きて直ぐの為に依然おぼろげだが、
鎖を手に持ち、自分を乱暴に引っ張っている黒人の大男の姿や、
香織同様、高さ・幅、共に約5メートル程の、四角く薄暗い通路の上を、
まるで牛や馬の如く連れ回され、粗雑に取り扱われている
周囲の女性達の無残な光景も眼に入ってくる。
しかしながら、全身素っ裸というあられもない痴態と、
その全裸体を捕捉する鎖と枷の拘束具の呪縛は、相変わらず継続されており、
香織や、其の他の全裸美女達は、背後に回されて固定された両腕の苦痛に耐えつつ、
足に繋げられた鎖を床に擦り付けてジャラジャラと音を立てながら、狭く、重い足取りで、前へと歩かされていく。
「 ナラベッ! 」
少し進むと黒人は、そう命令し、
香織の前方で、隊列を組んで並ばされている女性達の群れに香織を加え、並ばせた。
香織は、目算して約100名程になると思われる他の女性達の様子を伺った。
どうやら彼女達も睡眠から起こされたばかりらしく、身体の反応は芳しく無さそうだった。
さらに、此れ迄に蓄積されてきた肉体的・精神的疲労に依り、彼女達の表情は皆一様に重く、暗い。
乙女達の心と身体と、其の周囲全体は、どす黒い虚脱感と悲壮感に蝕まれ、
最早、泣き声や呻き声の一つさえも聞こえては来なかった。
ガッ ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ ガ ガ ガ ガ ガ ガ ガ ガッ
捕らわれの乙女達が、澱んだ沈黙に飲み込まれていると、
彼女達の前方を塞いでいた真っ黒な壁が、
突然、不気味な駆動音を轟かせながら、ゆっくりと上方へと引き上げられ、
其の漆黒の壁の向こう側に隠されていた内部への道を開いたのであった。
「 ススメッ!!! 」
周りに居た黒人達が再び、そう怒鳴,り、
最前列で並ばされていた女性達を、鎖で引っ張って行く。
香織達は無言の儘、言われた通りに歩き始め、新たに出現した空間の内部へ、続々と入って行った。
・
・
・
ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ
ガチャンッ!!!
香織達全員が、部屋の内部に連れて来られると、
其の直後に、先程の壁が、上方から降りてきて、轟音と共に再び通路を封鎖した。
「 ナラベッ!!! 」
薄暗い部屋の内部で、黒人達の単調な命令が、
脱力した全裸虜囚に対して再び浴びせれ、
女性達は、数人の大男達によって部屋中に分散させられて行った。
そして、香織達100余人の全裸女郡は、
其々が、其の美麗なる肉体を後手に錠された儘の姿で、
横一列10人毎に、膝を折って並ばされた。
さらに、 大男達は、香織達の首輪から繋がっている鎖を、
正座させらされている彼女達の前方の床面に設置された金属環に巻き付け、
腰と膝を折り曲げ、蹲まらされた全裸の乙女達を固定した。
香織は、床を向かされた顔を上げ、周囲を見回す。
床と壁際の間からは、間接照明が灯されおり、
其処から放たれる薄紅色の僅かな明かりに依って照らされるだけの淡く、ほの暗い空間。
故に、視界は悪く、部屋全体の大きさを把握する事は難しい。
床・壁・天井は、全て滑らかで無機質な材質で構成されており、
床と接している膝からは、ヒンヤリとした冷気が伝わって来ている。
そして、正面は香織達が座らされている床よりも、約5〜6メートル程高くなっており、
其処から、さらに数メートル程の奥行きが設けられている事が確認出来た。
“ ここは……一体何のための場所なの?……
ここも倉庫かエレベーターの中なのかしら?……
でも、それにしては雰囲気が………少し……… ”
香織は、この空間に、今迄の場所には無かった「何か」を感じ取っていた。
だが、其の正体が一体何なのか?
そして、何故そのような感覚に囚われるのかと言う事までは解明ができず、
其の言い知れぬ直感を、胸中で持て余していた。 すると。
突如、照明の明かりが一斉に消え、
薄暗かった室内が、完全な暗闇に覆われたのである。 そして、さらに…
「 クロテンシサマッ ゴコウリンッ!!! 」
グヲワァ―――ンッ!!! グヲワァ―――ンッ!!! グヲワァ―――ンッ!!!
グヲワァ―――ンッ!!! グヲワァ―――ンッ!!! グヲワァ―――ンッ!!!
香織達の背後の壁際で整列していた黒人達が、
突如、声を揃えて、大声で、一斉に、そう叫び、
さらに、其の直後から、まるで銅鑼の音の様に鈍く重い、
凄まじくけたたましい鐘の轟音が、部屋中から響き渡り始めたのである。
香織は驚いて、体をビクッと跳ねさせた。
そして、何事かと、鎖に繋がれた首を、
可能な限り左右や天井や背後に振り向けた。
一体何が始まるのか?と、香織は漆黒の中で警戒した。
恐怖と不安に対する本能が、香織の全身に力を加えさせ、
折り曲げられた裸体が、さらに小さく丸まっていく………
………やがて、鐘の音が鳴り止んだ。
漆黒の空間内を、乙女達の恐怖心が醸成した、へばり付く様な静寂が支配している。
しかし、其の静寂は、唐突に破られた。
「 雌畜供よ!!! 」
太く、低い声…
其の声を以って発せられた、滑らかで、且つ、威厳に満ちた日本語…
そして、男と思われる声の主は、漆黒の闇の中から、さらに言葉を続けた。
「 汝等は、選畜である。
即ち、不浄な下界たる畜人界から、
聖なる天界への昇天を許された、
選ばれし畜人なのである。
故に、我は、汝等を祝福する。
良くぞ参った。
この、YAPLANET。
畜人惑星へ!!! 」
其の言葉に続き、室内の明かりが再び灯された。
香織は、恐怖に震えながら、ゆっくりと其の顔げる。
そして、香織は見たのである。
あの「何か」の正体を…………
つつ゛く
いつもいいところで続きますね。期待してお待ちしています。
個人的に雄畜側の運命も知りたかったり。(ほぼ同じですかね) 第壱拾話
【 儀式 】
室内に再び光が灯り、視界が戻った後…
香織達100余人の全裸虜囚は、皆一様に天を仰いで硬直し、
只、頭上の一点のみを見詰めていた…
彼女達の視線の先…
其処に在ったのは、人の姿であった。
音も無く空中を浮遊し、
其処から憮然とした表情で乙女達を見下ろす、
一人の黒人の男の姿である。
其の男は、白ツナギ一枚という格好であった此れ迄の黒人とは異なり、
全身を漆黒のマントで覆っていた。
さらに、其の両肩と首周りにかけては、
とぐろを巻いた蛇の金細工が飾られており、
薄暗い室内でも、眩いばかりに其の金色の輝きを、怪しく放っている。
顔に刻まれた皴の深さからすると、かなりの年齢なのだろうか?
頭部は短い宿毛の白髪で、伸びた眉毛も同じく白く、
顎から口周りにかけては、雄々しい白髭が覆っている。
しかし、その老年の男が有する眼の奥からは、
一片の老いや、弱さも感じられず、
それどころか、まるで獲物を見定める肉食獣の如く鋭い、
恐るべき威圧感を放っているのである。
身に着けている物の質。
発せられる言葉の重み。
そして、其の男自体から感じられる、
圧倒的な威圧感…存在感…重厚間……
其れ等の事実全てが、この捕らわれの全裸虜囚達に対し、
今、乙女達の頭上から、彼女達を見下ろす其の黒人は、
香織達に幾多の苦悶を味合わせてきた此れ迄の黒人達とは、
其の総てが、明らかに異質の、
全くの別次元的存在であると言う事を、明確に宣告しているのであった。
そして、其の黒き怪人は、
地に伏したまま、天を見上げて自分を見詰める眼下の女達に対し、
其の、流麗且つ荘厳な日本語で、再び語り始める。
「 我が名は、黒天使。
聖なる白き神々の御命を受け、
汝等、畜人供の前へ降臨せし天界よりの使徒。
神の御遣いである。
我が、今、汝等の前に降り立った意、之れ即ち、
この神界への昇天を許された、幸運な選畜たる汝等に、
己が身の上の真実と、歩むべき誠の道、
即ち、畜生道を、
神に代わって啓示せんが為でる。
此れ依り汝等に、白き神々の御心を伝える。
勿体無くも、下賜された神の御言葉である。
一同畏まり、心して拝聴せよ。 」
そう言うと男は、
否、黒天使は言葉を止めた…
…そして、一呼吸を置いた後、
黒き天使は、眼下の囚女等に、
【神の御心】を告げ始めた……
「 白き御神は、以下の如く宣い給うた………
“ 我が仔等よ
我は此の世の創り主
万物を総べる全能の創造主なり
遥か古の彼方
我は畜人の種を作り
此れを地に蒔きて畜界を定めり
其れ依り数えて幾千年
我 此の神界依り畜界を守護し
数多の厄災を祓いて恵みを与え
いと 一大なる畜群の世を育みけり
因って今 即ち此れ 収穫の時に至れり
我が仔等よ
汝等は良畜ぞ
幾億千たる畜群の中に生まれ出で
健やかなる儘に育ちて成畜となり
良き畜体と良き畜心を備えたる
いと 好ましき稀類の良畜なり
故にこそ 我 汝等を選び獲り
此の神界へと昇天せる幸福を与えたり
我が仔等よ
我 汝等に【畜洗礼】を許す
我と神畜の契りを交わし
畜界にて憑き纏いし魂体の穢れを清めよ
然らば 我 汝等を飼養し
我の庇護の元に永久の安寧を与えん
我が仔等よ
我に仕える誇り高き奉畜となれ
其れ即ち 汝等畜人 無上の幸福なり
我が仔等よ
我の飼畜とされる至極の喜びを受くる為
悔い改めよ 励み努めよ ”
…以上が、神の御心であらされらる。
即ち、幸運なる汝等に、
神が御示しになられた畜生の道。
畜生道である。 」
香織達100余人の女達は、皆呆然としていた。
其の表情からは、恐れや怒りの様な感情は見受けられない。
言葉の内容が理解出来ずに思考停止の状態に在るのだろう。
いや、其れ以前に、先程の言説が、
自分達に対して発せられているのだ、
と言う事さえも解かっていない者も、幾人か見受けられる。
しかし、天上に浮かぶ漆黒の天使は、
そんな乙女達の理解の程などは、
何等も意に介さず、といった態度で、
さらに、言葉を続ける。
「 喜ぶが良い、雌畜等よ。
先の御言葉の通り、
聖なる御神は、汝等への畜洗礼を御許し給うた。
即ち、聖なる白き神々に、
其の心体を以って御仕え奉るという、
無上の幸運に預かる事が叶うのである。
全能なる神の寵愛を受ける、
神の飼畜への道が開かれたのである。 」
そう言うと、黒天使は後方に振り返り、
壁に向かって深々と頭を下げて一礼した。
そして、その後………
「 御神体………御開帳ッ! 」
黒天使の、太く低い大声が、室内に響き渡った………すると、
ゴ――――――――――――――――――――――――――
という轟音をあげつつ、
黒天使が一礼した前方の壁が、
其の中央部分から左右に向かってゆっくりと開き始め、
さらに、其れと供に出現してきた壁の内部から、
強烈な光が、薄暗い室内に差し込んできたのだ。
香織達は皆、其の強烈な閃光に目を眩まされ、
反射的に硬く両眼を閉じて顔面を床に下ろす……………………
其れから暫らくの後、壁の移動が終了し、室内に静寂が戻った。
其れに続き、香織達は、伏せていた顔を上げ、
瞼越しに強光に順応してきた、其の両眼を徐々に開いていく。
そして、開いた扉の奥から出現した、前方の様子を伺った………
光り輝く前方の空間…
其処には、幅約1メートル、長さ役10メートル程の
真紅の絨氈が、丁度、床の中央上に敷かれていた。
そして、其の絨毯の先は、直径約2メートル、
深さ約1メートル程の円筒形の縦穴に繋がっており、
其の先には、黒塗りの下地の上に金細工が施された
何やら教会の教壇の様な物が設置されているのであった。
そして、其の教壇の真下には、上記の縦穴から始まり、
教壇の先へと広がっている、深さ役50cm程の、扇形の窪みが通っていた。
そして、更に、其の先に、其れは、在った。
教壇から更に10メートル程進んだ先…
床は、其処から約3メートル程高くなり、
さらに、その上段の中央に、縦横約2メートル、高さ1メートル程の、
飾り気の無い、無地の白い立方体が在った。
そして、其の四角い台座の上に、
高さ約20メートル程の白い立像が立てられているのであった。
其の像は男性の像で、しかも裸像であった。
照射される強光を、其の純白の全体に浴び受けて、
全体を眩いばかりに光り輝かせている、
白亜の全裸男性の巨人像である。
香織達は皆、其の巨大な白人像に眼を奪われた。
其れは、先ず、其の像の巨大さに驚き、
又、男性の裸像という、意外性に因る注目でもあった。
しかし、其れと共に、
乙女達は、そんな表面的な、可視的な事象とは異なるもの。
言うなれば、彼女達の無意識に直接及んで来るかの様な、
何か神々しい、霊気の様なものを感じ取っていた。
そして、100余人の囚女達が、段上の巨像に心を侵食されているなか、
黒天使は、ゆっくりと空中を移動して巨象に近付き、再び一礼した。
すると今度は降下し、あの教壇の上にゆっくりと着地した。
そして、更に一礼した後に向き直り、其の壇上から乙女達を見下しつつ、
黒天使は高らかに言い始めた。
「 雌畜等よ!
今、汝等の眼前に在らせられる此の聖像こそ、
汝等に神畜の契りを御与えになる為、
勿体無くも汝等の前に御出座しになられた
聖なる白神の御魂社、
御神体に在らせられる。
畏まって拝謁せよ。 」
そう言うと黒天使は、言葉を止め、其の鋭い眼光を乙女達に向けた。
刺す様な視線に乙女達は硬直し、緊張に因る静寂が、部屋中を満たして行く……
そして、暫しの沈黙の後………
「 先導畜 参れ! 」
と、黒天使が荒々しく言い放った。
すると、その直後、
香織達の座らされている場所と、黒天使が立っている教壇の中間。
即ち、先に述べた、赤絨毯の敷かれている段上、其の両端から、
幾人かの人間が、駆け足で、ゾロゾロと入って来たかと思うと、
其の段上の縁に、素早く、横一列に整列したのである。
整列していたのは、女性達であった。
弾力と艶を兼ね備えた、血色の良い柔肌。
たわわに実った両乳房。
滑らかに括れた腹部。
豊かに張り満ちた腰部。
プリンとした肉付きの臀部。
光に照らされ、ギラリと黒光りする陰毛が生茂る股間の叢。
其れ等、肉体の一切が、全て露となってしまっている、
一糸纏わぬ素っ裸の、10人の若い女性達であった。
そして、やはりといか、
そんな10人の全裸女性達の首にもまた、
香織達の首に有る物と同一の、
鮮やかな真紅の首輪が嵌められているのであった。
全身を真っ裸に剥かれて、首輪を嵌められた、うら若い美女。
どうやら、この10人の女性達も、彼女達の眼下に座らされている、
香織達100余人の全裸虜囚と同じ境遇のようである。
だが、しかし、
今、段上にて、一糸も乱れる事無く綺麗に整列して顔を上げ、
其の儘、微動だにもせずに、直立不動の姿勢を維持し続けている、
此の10人の女性達の表情からは、
香織達100余人の乙女達の顔から表出している様な感情…
即ち、
丸裸にされ、其の全裸体を公衆の面前に晒されている事に対する羞恥心。
更に、首輪を嵌められ、牛馬の如く粗雑に取り扱われている事に対する屈辱感。
或いは、そんな境遇に落とされてしまった自身の今後の行く末に対する不安や恐怖の念。
といった、暗く、否定的で、後ろ向きな、負の悪感情などというものは、
凡そ、一切感じられず、
それどころか、寧ろ、そんな現在の自分の状態に対する確固たる自信と、
大いなる矜持の思いに満ち満ちている様にすら見受けられるのであり、
且つ又、其の生き生きとした美顔に宿る、凛然とした二十個の瞳は、
香織達の、絶望と苦悶に黒く濁り、どんよりと澱んだ其れとは、
実に全く対照的な、希望と幸福の壮光を灯し、溌剌とした輝きを放っているのである。
一体これは何とした事であろうか?
この10人の乙女達は、其の様な有様に於いて尚、
何故に、斯くの如く健やかな心身を保ち得ているのであろうか?
と言う様な疑問が、香織達の脳裏に浮上して来た頃、
其の謎に対する解答を、黒天使は、滔滔と開示し始めた。
「 雌畜等よ
今、汝等の前に立ち並んでおる、
此の、10匹の雌畜達が、
今回、汝等の畜洗礼の補助を行う、
先導畜達である。
汝等は、昇天から日が浅く、
未だ、畜人の心得も知らぬ、
全くの新畜である。
故に、如何にして洗礼に臨めば良いのか、
其の作法を心得ては居らぬであろう。
だが、案ずるには及ばぬぞ。
慈悲深き御神は、其の様に、無知な汝等の為に、
此の、先導畜達を、御遣わし下さったのである。
此の10匹は、
汝等とは異なり、
既に、己の正体、
即ち、畜人の本性を悟り、
神の御心の下に帰依しておる。
即ち、畜生道を心得る、正格の畜人達である。
因って、汝等は、只、
此れ等に、其の身を任せ、
此れ等の導く儘に、導かれるが良い。
然らば、汝等は、一片の滞りも無き儘、
神の御前へと至り、
神への不敬、不尊を犯す事無く、
新畜の契りを交わし終えるであろう。
汝等、至らぬ新畜ごときの為に
此れ程までの施しを御与え下さった、
聖なる御神の、大いなる慈愛に、深く感謝するがよい。 」
そう言い終えると、黒天使は閉口した。
すると、其の沈黙の中に、
黒天使の意思を感じ取ったかの様に、
10人の女性達は…否、
10匹の雌畜達は、2匹1組に分かれ、
其々別々の場所に、駆け足で分散し、
其処で再び直立姿勢を取ったのだった。
そして、10匹の先導畜達が、全て移動し終えた事を見止めると、
黒天使は、再び開口し、
徐に、こう宣言した。
「 …此れ拠り
畜洗礼の儀を執り行う
新畜よ 参れ! 」 黒天使が、高らかに、そう告げると、
其れに続いて、何処からとも無く、
まるで笙の様な、緩やかで、雅やかな音色が、室内に奏でられ始めた。
そして、さらに、ドォ―ン、と一回、太く、深い太鼓の音が、打ち鳴らされた。
すると、其れが合図だったらしく、
上段から、香織達が座らせている、
最下位の場所にまで下りて来ていた、2匹の先導畜達が、
100余人の虜囚達によって構成されていた正方形の中で、
黒天使から見て、最前列にあたる隊列。
其の、左端に配置されていた、
一人の乙女の所へと近付いて行ったのである。
そして、其の乙女の元に馳せ寄ると、
2匹は、乙女と床とを括り付けている鎖の、
首輪側の一端の連結を解除して乙女を立ち上がらせると、
続いて、両手首と両足首に嵌められていた、手枷・足枷を取り外し、
さらに、口腔を塞いでいた猿轡も除去して、乙女を拘束から解放した。
其の後、2匹は、乙女の両側に密着して其の両腕を掴むと、
其の儘、上段へと続く前方の階段へと連れて行ったのだ。
状況が理解出来ていない乙女は、戸惑いながらも、
只、2匹に牽引されるが儘に、一段一段ゆっくりと、其の階段を上って行く。
そして、乙女が上段に到着すると、2匹は再び階段を下りて行き、
今度は、其処で待機していた別の2匹が、此処まで乙女を連れて来た2匹に変わって、
乙女の両隣に付き、乙女の体を上段中央の方向に向けさせた。
すると、また一つ、ドォ―ン、という太鼓の音が鳴り響いた。
この2匹もまた、この音を合図に移動を開始し、乙女を赤絨毯の元へと歩かせていった。
“ アッ!? …あの子… …あの子だわ…… ”
其の様子を見ていた香織は、はたと気付いた。
今迄は、香織の座らされている場所からでは、後ろ姿しか見ることが出来なかったが、
上段で横を向き、且つ、強い照明の下を歩かされるところに至り、やっと分かったのである。
今、あの段上を歩かされている乙女は、
あの暗室の中で、終始香織の腕の内で怯え、震えていた、あの、美少女だったのである。
香織は、何とも言えぬ気持ちに覆われた。
誰一人知っている人間がいないと思っていた場所に、ほんの僅かではあるが、
互いに顔をしり、言葉を交わし、肌を寄せ合って苦悶を共有した相手が居たのだ、
という、ささやか安堵感と、其の唯一の知人が、
選りにも選って、この得体の知れない謎の儀式の、
最初の犠牲者になってしまう事への無念さ、
そして、そんな儀式を何れ自分も受けさせられるのだという絶望感が、
彼女の脳裏を順々に周回しているのである。
そんな思念が、香織の心を苦しめている間に、
其の美少女は、中央に敷かれた赤絨毯の元に到着し、
其処で、先程と同様に、新たな先導畜の2匹に引き渡され、
同じく、打ち鳴らされた太鼓の音の合図によって、
今度は、黒天使の待ち構える教壇の下へと、
少女の首に嵌められている首輪と同色の、真紅の道の上を進まされて行った。
不安と恐怖に占領され、激しく脈打っていた少女の小さな心臓が、
黒き怪人の待つ場所へと近付くにつれて、壊れんばかりに其の鼓動を高め、強めていく………
そして、其の異形の使徒を、直前にて仰ぎ見た時、乙女の脈動は、ついに、其の頂点に達した。
最早、何も考えられない、何も感じられない、
只、眼前に聳え立つ、漆黒の天使の眼から放たれる、
凄まじい覇気に飲み込まれ、心身を硬直させるのみだった。
そして、乙女の中で、時間と空間が停止していた、其の間に、
次の引継ぎ作業は行われ、例の合図と共に、
新たな二匹が、乙女の下に寄り立ち、其の両手で乙女の体を掴み、
頭部から足先に至るまで、未だ、あどけなさが残る美少女の全裸体を、
隈無く触診していったのである。
やがて、全裸の雌畜達による、乙女の裸体の診察が終わると、
2匹は黒天使に対して、その場に座り込んで土下座をし、
さらに、其の内の一匹が顔を上げ、黒天使に向かって発言した。
「 黒天使様に申し上げます。
此の雌畜、全身の如何なる処にも、
不具は、一切、御座いませぬ。
白き御神の飼畜として、
満足な働きを果たし得る、良畜に御座います。 」
実に滑らかな日本語での報告であった。
と言う事は、先程から、雌畜だの先導畜だのと呼ばれていた、
この人間?も、香織達と同じ日本人の女性なのだろうか?
或いは、かつては、そう“だった”のであろうか?
どうやら、其の答えは、この美少女が、知っている様である。
「 …………?…………!?…………!!!!!!?…
………おッ……… ……おっ… …おねいちゃん!!?… 」
これは、何と言う事であろうか!?
極点に達していた緊張の為に、全く認識出来ていなかったが、
其の聞き覚えのあった声を聞き、改めて其の声の主を確認してみると、
今迄、この美少女の全裸体を弄り続け、
そして、今、両手、両膝をしっかりと床に付け、
土下座の体勢を取りつつ、壇上の黒天使に上奏していた一匹の先導畜が、
実は、この美少女の、姉であったようなのである。
仰天動地の乙女は、混乱の濁流に言葉を詰まらせながらも、
奇妙な再開を果たす事となった肉親に、思い付く限りの言葉をぶつけた。
「 なんで…? なんで…? なんで… …おねいちゃんが…?
…あの時… 事故で… …生きてたの…? …よかった…
…でも なんで……
ここは… …おねいちゃん… どうして …あの…あ…… 」
事故死した筈の姉が生きていたという驚きと、喜び、
そして、何故、生きていたのか?
どうして、此処にいるのか?
そして、何故、自分も此処にいるのか?
等と言う様に、少女は噴出する疑問と感情を、其の姉に吐露した。
しかし、そんな妹からの、精一杯の言葉に対して、
其の姉が発した言葉は、実に冷静、且つ、厳然としたものであった。
「 美鈴
黒天子様の御前です。
無礼な私語は御止めなさい。
さあ、此れから黒天子様が、
あなたにも、畜洗礼を施して下さるわ。
余計なことは考えずに、
有り難い誓いの御言葉だけを良く御聴きなさい。 」
・
・
・
「 …え…? ……おねいちゃん……? なに言ってるの…?
……ねえ…? …おねいちゃん…?! …おねぇ… 」
「 黙りなさいッ!!! 」
「 !!!?…………………………………………………… 」
再会したばかりの姉の口から出た、冷徹な叱責に、少女は、絶句し、
其の思考回路は、再び機能を停止させられた。
乙女の瞳に、僅かに灯っていた希望の光は消失し、
再び、底知れぬ絶望の暗中へと引き込まれて行く。
そして、そんな茫然自失とした儘、
枯れ木の様に虚ろに立ち尽くしている少女に、
彼女の運命を決する、黒天使の言葉が投げ掛けられて来た。
「 汝に問う。
汝は、此れ迄、
汝が、下界に於いて犯した、
汝が、尊ぶべき畜生の道より外れた、
数多の罪を 今、此処に、 悔い改めるか? 」
・
・
・
・
暫くの間、少女は沈黙した。
だが、其れは、
乙女が、この問いへの回答に苦慮し、
考えあぐねている事から発生したものでは無い。
既に、この少女の思考は停止しており、黒天使の言葉も理解してはいないのである。
だが、しかし、
言葉は理解しては居らずとも、
黒天使の両眼、そして、其の全体から迸しっている、
言語を絶する其の【力】は、乙女の心身を完全に捕らえ、
其の中枢に、忘我と、服従の牙を、深々と突き立てていた。
・
・
・
・
そして、さらに、暫くの沈黙が続いた後、
乙女は、消え入りそうな声で、こう答えた………
「 ……悔い…… ……改めます…… 」
其の、微かな返答が壇上に届いた後、
黒天使は、無言の儘、ゆっくりと、深く頷き、
続いて、体をを半転させて巨像の方に向きを変え、
今度もまた、其の像に対して、深々と一礼して上体を戻した。
そして、その後。
「 御聖水………御下放ッ! 」
と、黒天使は声を轟かせた。
すると、其れからまも無くして、室内の最奥から、
荘厳とした雰囲気を醸し出していた白い巨像に、
大いなる変化が、起こったのであった。
ジャ――――――――――――――――――――――
という、大きな飛沫音を打ち鳴らしながら、
突如、大量の液体が、裸像より流れ出て来た。
其の水が流れ出てきた場所…
其処は、ペニスであった。
直立した白い裸像…
其の裸像に施された男性器の彫刻。
其処から、大量の液体が噴出して床に落ち、
其の儘、其の床に彫られた扇形の窪みの中を、
教壇の方向へと流れ落ちて行って其の下を通過し、
遂には、赤絨毯と教壇の間に空けられていた、あの縦穴の中に流れ込み、
見る見るうちに、其の縦穴を、液体で満たしていったのである。
そして、縦穴が、其の液体によって
完全に満たされると、裸像からの噴出は停止した。
そして、それを見届けると、黒天使は再度一礼し、
また、乙女の方に向きを戻したのであった。
さらに、其の後…
黒天使は、緩やかに、且つ、重厳とした口調で、
眼下の乙女に対し、こう諭した。
「 神は、汝を、御許し給うた。
因って、汝は、
汝の魂と肉体に巣くう、
其の悪しき俗界の穢れを
全能なる御神が御恵み下さった
此の、慈愛の聖水を以って浄化するが良い。
然して、汝は、
穢れ無き無垢の素体へと回帰し、
其の純正なる心身の基に神畜の契りを交わし、
神に飼われる奉畜として生きることを誓うが良い。 」
黒天使が、そう言い終えると、
今度は、其れ迄、土下座をして、
地にしっかりと平伏していた2匹が、
徐に立ち上がって、美鈴の背後に密着し、
其々が、美鈴の両手と両肩に其々の手を遣やると、
只、呆然と立ち尽くしているだけの美鈴の体を、其の儘、
前方の水瓶に蕩蕩と湛えられている其の【聖水】の中へと、押し進めていったのである。
縦穴には、赤絨毯の方向から、
穴の底部に至る、三段の階段が設けられており、
美鈴と、其れに続く2匹は、其の階段を、一段一段ゆっくりと下りていった。
足元から、脹脛、さらに、其処から、太腿へと、
乙女の裸体が、水底へと、其の歩を進める毎に、
黄金色の液体に沈み込む純白の表皮が、其の聖水の色と同化していく。
やがて、美鈴達の足が水底に到着した。
深さ1メートル程の水瓶の底部に立たされた美少女の肉体は、
既に、彼女の臍辺りまでが、聖水の中に浸かっていたのであるが、
どうやら、其れでは、未だ不十分な状態であったらしく、
同じく聖水に浸かっている2匹は、
美鈴の両肩に、下方に向かって力を加え、
乙女の裸体を、水底に正座させた。
そして、口元にまで聖水が及んだ少女の、
辛うじて水面から表出している後頭部に手を当て、
其の儘、頭を下方に向かって押し倒し、聖水の中にて土下座させたのである。
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