そんな女たちの髪の脇から覗かれる頬から二筋、轡を締める紐と眼を覆う
  サングラス型の器具が耳から後頭部へと廻っている。
  サングラス型と書いたが、レンズ入りの眼鏡でなはく、
  冬山などで使われる風防を兼ねた長い一枚の色板で両眼を覆う方式の眼鏡である。
  その眼鏡が黒色に塗り潰してあるのだ。
  檻内の動物たちは、自身では見ることの出来ない、折り畳まれた骨の疼きを感じながら荒々しく息を吐き、
  黒髪を振り乱し、戻らない視覚の怯えに身悶えている。

        シューーーッ………シューーーッ

  ドアの開閉音のような音がした。   
  女たちの呻き声の中から、人がこちらに近ずいてくる音がする。
  常軌を逸した状況に動転していた香織の頭脳が、新たな事態に対し再び稼動し始めた。

    “ 誰か来る…
      檻の中へ監禁されてしまった。
      一体誰が?…    どうしてわたしが?… 
      もう此処から逃げることは出来ないの?…
      これからどうなるの?…
      誰か……    だれかたすけてッ!!! ”