《7:体育の時間》
体育の時間。今日の体育は、自習。体育教師さえも5年A組の女子達には手を焼いていた。だから、
すぐにこうやって授業を自習にして逃げてしまうのだ。
そこで生徒達が始めたのはリレーだった。40人が5チームに分かれてのリレー。最初の3人は校庭半
周。アンカーは1周で順位を競う、ありがちなルールだった。……ある一点を除いては。
「うぅ……」「ぐぐ……」
スタートラインにつく5人の男子は、何故か皆、四つん這いになっている。そしてその上に座り子
でいる女子。そう、これは名付けて“お馬さんリレー”。男子が隣席の女子を背中に乗せて、まる
で“お馬さんごっこ”のように歩き、リレーをする。そんな凄惨な虐めだった。
このクラスの女子は皆、男子より良い発育をしており、体重も重い。そんな女子を背中に乗せてあ
るくなど、最高に苦しい。こうしてスタートラインで待っているだけでも辛い。
「頑張んなさいよ!」「ビリになったら許さないからね」「私軽いから大丈夫でしょ?ね?」
自分の奴隷男子――馬にそれぞれ声をかける女子。負けられない。自分のせいでチームがビリにな
ったりしたら…。そう思うと男子の頬に冷たい汗が流れる。
「位置について、よーい…ドン!」
合図とともに、男子が皆、フラフラと歩き始める。順番を待っている女子からは声援が飛ぶ。
「行けー!」「走れー!」「もっと速く!」「負けたら殺すからね!」
そんな声援が……。
一方、騎手の女子達も自分の馬を速く走らせようと躍起になっている。自分よりも遙かに小さな男
子の体を太腿で締め付け、速く走れと促す。
「透、さっさと進みなさい。お前、死にたくないでしょ? だったらもっと速く走るの」
背中の美貴に大きなお尻を揺らされ、潰れそうになりながら進む透。
「がんばって裕太くん! ほら!ほら!」
優しい声をかけながらも容赦なく裕太の頭を脚で蹴り、無理矢理でも前に進ませようという由香利。
男子達の命がけのレースがスタートした……