しかし、物事はそう単純には行かない。
凄い勢いで流れた水。それは本来の役割通り、便器に溜まったウンコを押し流そうとした。
……が、それはかなわなかった。と、言うよりも、不可能だったのだ。
「そ、そんな…」
そんな言葉が、太郎の口から漏れた。春香のウンコはあまりにも多く、重すぎたのだ。水流はそこ
にドカンと存在する富士山ウンコの一部を削っただけ。その本体は、水が流れ終えた後でもどっし
りと腰を据えてそこにあった。……あまりの量に、ウンコが流れなかったのである。
「あらら、残念。流せないみたいね〜」
ニヤッと春香は笑った。分かっていたのだ。自分のウンコが、ただのトイレの水流では流しきれな
いことを。もっともきちんと水によって流されたとしても、明らかに規格外のその量はトイレの配
水管を詰まらせてしまったかもしれない。
「やっぱり太郎に片付けてもらうしかないみたい!」
彼女は太郎の首の根っこに手を置き、猫を掴みあげるようにして持ち上げる。体重25kgの太郎は春
香の怪力によって片腕で持ち上げられてしまう。
「ひ、ひい!や、やめて!」
泣き叫ぶ太郎を、春香は便器の上でぱっと手を離し、ぽとっと落とす。
ベチャッ!彼は顔面から大便の山に着地してしまった。嫌な音がして顔がウンコにめり込む。その
彼の後頭部を、春香は上履きで踏んづける。
「んぐ!んぐんぐ!」
「ちゃーんと食べて」
こうなってしまえば、従うしかない。食べなければ、ウンコに埋もれて窒息してしまうのだ。
臭いし、苦い。量も膨大だ。それでも、食べるしかない。そうしなければ、春香は足をどけてはい
くれない。
「がぶ、がぶ……。がぶっ!」
無理矢理口に詰め込んでは、飲み込む。それだけで地獄のようなのに、ウンコはまだこんなに溜ま
っている。食べても食べても減らない。
太郎は泣きながら、噎びながら、……ウンコを腹に収めるしかなかった。女子トイレに這い蹲って
信じられない量のウンコに口をつける太郎。その滑稽な光景を、春香はニヤニヤと笑いながら見下
ろしていた……