それは何年ぶりのことなのか
「それだけはいやだ〜」
少女は泣きじゃくった。
彼女の名前は、沢渡千夏。保育園の年少組。
近頃「おもらし」が再発してしまい、母親におむつをあてられようとしているのだ。
千夏は力の限り反発する。
それもそうだ。
なにせ、数か月前まで彼女は中学生だったのだから(!)
20xx年。政府は思い切った政策を実施する。
徹底した競争主義のもと、飛び級・落第に制限をなくした。
つまりは小1からいきなり大学へ飛び級することもできるようになり
中1から保育園にまで落第することもありうるようになったのだ。
そして、発育不全・情緒未発達・学業不振が著しかった千夏は保育園へまで落第しまう。
ふつうの子よりもかなり幼い性格をしている千夏でも、毎日園児スモッグにポシェットを提げ、お花
の名札をつけて通園することは恥辱以外の何物でもない。
しかも、保育園では何らの特別扱いはなく、ごく普通の園児として、お遊戯をしたり積み木をしたり
、お昼寝をしたりするのだ。
そして極めつけが、おもらしの再発。
自業自得と言えばそうではあるが。