腕の痛みが消えた。喉を押さえ付けて来る痛みも消えた。
しかし肌と肌の一切の隙間の無い密着感は持続している。状況がまったく掴めない太一は混乱していた。
女は太一が尻を持ち上げ、下からの三角を押し潰そうとする行動を読み、一瞬脚の絡みを解き、背筋力を使い躍動し、
体勢を入れ替え、太一の頭を真横から太ももの付け根に挟み込み、腰で押さえ付けるように太一を逆に押し潰したのだ。
横三角の形に搦め捕り相手の動きを太ももで制御する。女は前三角からの移行を得意にしていた。
女はまたギュルリと余裕を持って脚を三角の形に巻き付けた。
太一はようやく状況が読めて好転したように錯覚した。先程自分がシュミレーションした形と同じ形に三角を崩すことに成功したと早合点していた。
しかしそれも女の術中であった。この場において寝技の膠着を止めてくれる審判はいない。そして女は膠着状態から相手を発狂寸前まで追い込む術に長けているのだった。
女はまずは太一の呼吸を停止させるために口と鼻を覆い込むことにし、両手で内股の付け根にある太一の頭を操作し、太ももでピッタリと口と鼻を覆った。
太一は頑なに顎を引き首を守るが、直接口と鼻を塞がれてしまう事を想定できずにまんまと女の手の平で弄ばれていた。