「空き時間と言っても掃除当番とか、昼休み全部使うなんて、もちろんダメよ」
「クラブ活動の時間は、拷問クラブが使ってるから、私たちは使えないわ」
「いつもは朝練と、消灯前の自由時間だけしか空き時間が無いけど、半日とかお休みの日は…」
「ごくんっ(唾を飲み込む早香)」「もっと長い時間、空き時間があるのよ〜〜」

恐怖でヒザがガクガクと震えて立っていられなくなったマゾ少年は、早香の腕を掴んだまま、
床に正座した。正座と言っても、脚を斜めに崩してるから、正座というより「女の子座り」だが…。

「さ、早香っっ、見学の時は、あの目隠しで連れて行かれた部屋、飾りだって言ってたのに…」
驚愕するマゾ少年を、早香は冷たい目線で見下ろす。
「あれがお飾りじゃないって知ってたらオマエ、転校なんてしなかったでしょう」

「私は体育館から凸凹マット(セラピー・マット)を持ってくるから、オマエは机とイスを寄せてなさいっ」
早香がそう言い残してパタパタと駆けて行った廊下…。それを眺めていたマゾ少年は、ある瞬間、
ハタと我に返り、(早香が戻って来る前に、2列は詰めておかないと!)と、
己のすべき事を思い出して、窓側の列の机やイスを一つずつ、左の前の隅の席へ寄せるように、
なおかつ床で机やイスの脚を擦って音を立てないよう持ち上げて動かす、
子どもの体では、けっこうキツい肉体労働に勤しみ始めるのだった。