中学を卒要した高1のとき。
 夕刻。中学校から下校生徒がどしどし通学路にあふれ出てきました。
 そこで見た不思議な光景

 たぶん中2か中3の男女の集団。
 大きな声で話しながら、歩いたり、自転車に乗ったりしている生徒が混在していた。

 自転車に乗っていたマセた男子が、歩いていた女子に追いかけられ、その男子は、捕まらないように逃げていた。
 女子は、数人。
 追いかけるが、両者の距離は縮まない。

 これだけならふつうの光景。しかし、次の瞬間驚いた。
 追いかけられていた男子が、いきなり自転車のカゴから、その生徒の通学の肩掛けカバンを道路に落とした。
 男子は、少し離れた場所にいた。
 当然、追いかけていた女子は、そのカバンに到達。

 女子もマセていた顔をしていたが、夕闇の中、表情はよく分からない。
 そして、その女子は、そのカバンを踏み始めた。

 男子は、うー とか あー とか騒いでいて、女子も喜びながら踏んでいた。
 決して嫌がっているようすはない。

 男子は絶対にわざとカバンを道路に落としたのだ。
 間もなく、男子は、カバンを奪還。
 しかし、再び女子に追いかけられて、少しすると、またカゴからカバンを道路に落とした。

 そして、女子は再びそのカバンを踏んだ。男子の反応を見ながら。
 男子のほうは、あいかわらず嫌がっていない。
 口では「やめてくれー」とか「踏むなー」とか言っていたけど、明らかに「もっと、踏んでくれー」と心の中で叫んでいるとしか思えなかった。