一

 元女性エリート警視、黒木怜香、33歳。
 ある兇悪犯罪事件での捜査の失敗の責任をとらされ、
今は新人女性警察官にさえ顎でこき使われる見習警官の身分である。
 警察組織からは暗に自主的な辞職を仄めかされたが、
凶悪事件の捜査の第一線に残りたいという怜香の願いは強かった。
 結局、秘密の特殊捜査部隊(SS)への配属という形で現場への復帰が認められたものの、
東大法学部出のエリート警視の身分から階級章すらなしの新人女性警察官以下の
「終身見習生」の身分に大降格させられて勤務することとなった。
「それにな。君への処分は、単なる大降格だけでは済まされないぞ。それでもいいのかね。
元東大法学部出のエリート警視の君が新人警官以下の身分で入隊すれば、
ただでさえノンキャリアが多いSSの隊員たちからどんな扱いを受けるか、
想像がつくだろう」
「か、覚悟は、で、できております」
「男子隊員からセクハラまがいの行為や女子隊員からイジメまがいの行為をされても、
君は一切抵抗することは許されない。それどころか、君は懲罰として、
SS部隊内では一切の人格も人間としての権利も認められない扱いを受ける。
そのことにも同意のうえで勤務してもらうことになるが……」
「一切の人格も人間としての権利も認められない、といいますと」
「文字通り、君は奴隷だということだ、自由平等の世の中だというのに。
しかも東大法学部出の君が、ノンキャリアも多い隊員たちに奴隷扱いされるわけだ。
もちろん勤務内容と大いに関係があるがね」
「といいますと?」