>>390

「みきちゃんおトイレ上手にできないのー?」

 子供の内で聡明そうな女の子が、美希の真っ赤になった顔を見て不思議そうに言う。

 恐らくは同じピンク色の園児服を着ているとはいえ、大人の美希がトイレが出来ないという言葉が

 俄かには信じられないのだろう。

 耳元で、小百合が園児の言葉を肯定するように促してくる。それも自ら恥をかくような言葉遣いで。

 美紀はもう耳まで真っ赤で、胸が熱くなる思いだった。

 それでも娘の為と言われれば、もはや拒むことができない。美希の凛と尖った唇が開いた。

「……はい。美希は皆よりずっと大きいけど、おねしょとおもらしが、治りません。今日は、美希におトイレ教えてください」

 恥辱の宣言にもほどがあった。日々キャリアウーマンとして働いている自分が、トイレが上手くで
 きないから教えて欲しいと園児に教えを請うなどあり得ないことだ。

 羞恥に身もだえしそうになる美希の心情を他所に、園児は囃し立てる様に笑った。

「おねしょ? アヤはもうおねしょなんて卒業したよ。じゃあアヤの方がお姉ちゃんだね。はっずかしー」